表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/108

第96話 毒使いのアコニット

Side:シナグル・シングルキー


 毒ナイフ刺殺魔の噂が広がった。

 俺の指名依頼がきた。

 Aランク冒険者がやられたためらしい。

 幸い俺が冒険者ギルドに寄付した解毒の魔道具が役立って一命は取り留めた。


 夜間、街のパトロールをする。

 怪しい人影を見つけた。

 フードを被っているし、黒い目立たない色だ。

 後をつける。

 そいつはナイフを手に男に襲い掛かった。


「兄の仇」


 敵討ちかよ。

 紛らわしい。

 なんと襲われた奴は毒使いのアコニットじゃないか。


「危ない」


 アコニットが黒い水滴の滴るナイフで応戦したので、俺は敵討ちの男を突き飛ばした。

 むにゅっとな。

 女か。


「アコニット、お前が刺殺魔だな」

「そうだ。お前が出てくるのを待ってたぞ。モールス、いやシナグル」


「お前の標的は初めから俺だったわけだ」

「毒の泉でお前は命を落とすはずだった。運のいい奴め。毒ガスで死なないとはな」

「あんなずさんな計画では俺は死なない」

「お前が死ななくても。多数の死人が出れば満足だったが、それも阻止しやがって」


「穀物を毒に侵したのも俺を狙ってか」

「あれはあわよくばだった。あれも阻止しやがって」


「晩さん会は完全に俺狙いか」

「わけの分からない術で阻止されたが、今回は絶対に死ぬ毒を塗ったナイフだ。遅効性なのが玉に瑕だが。お前の悪行もここまでだ」

 俺がなんの悪いことをしたんだ。

 思い当たるのはきっと俺が人助けしたから。

 こいつらは人を殺すのが邪神のためだと思っている。

 悪いことが善行だと思っている。

 善行は逆に悪なんだろうな。

 邪神は悪が善行だとは思ってないような感じだが、こいつらには関係ないのだろう。


 絶対に死ぬ毒も解毒の魔道具で阻止されているって。

 ああ、一般人に何人か被害者は出ているのか。

 敵討ちの女が起き上がった。


「大人しくしてろ。お前じゃこいつには敵わない」

「くっ」


 女はナイフを投げた。

 どこに投げたんだよ。

 ナイフは通りかかった馬車の馬の蹄で蹴られた。

 そして、アコニットに深々と突き刺さった。


「我の名を騙った愚か者、敵討ちの刃で死ぬが良い。因果応報だ。命を糧に害した者を生き返らせるから安心せい」


 邪神の声が聞こえた。


「そんな、がふっ……」


 あっけない終わり方だ。

 因果応報なんだろうけど。


「女、お前、もしかして邪神教団の改宗した奴か」

「ええそうよ。兄はこいつの計画の手先にされて、使い捨てにされた」

「そこまで」


 ソルが出て来て女を制止した。

 後を付けられてたか。

 もしもの時のためにそうしてくれたんだな。

 たしかに毒を広範囲にばら撒かれたら危なかったかもな。


 ソルは女を少し離れた場所に連れてった。


「【傾聴】」


 スキルで会話は丸聞こえだ。


「はいはい、シナグルにお近づきになりたくても駄目だからな。どうしてもなら同盟に加わることを勧めるぜ」


 同盟?

 ああ、客の集まりとして何かやっているのか。

 注文が殺到しないようにしてくれているのだな。


「そんなつもりはない。ただ命を救われたからお礼を言いたかっただけ」

「あたいが代わりに伝えてやるぜ」

「それと警告を。邪神教団はシナグルを怨敵に認定したわ。理由はダンジョンの存在を脅かすからよ」

「確かにシナグルだったら、ダンジョンコアを討伐しちまうかもな」

「違うの、邪神教団は、ダンジョンを邪神の領域だと考えているわ。そこで死んだ人たちの魂が邪神の糧になるのよ。核石を人工的に作り出されたら、ダンジョンを訪れる者がいなくなる。それを邪神教団は恐れているの」


 そんな事情だったのか。

 だが、これからも俺は歌を広めるつもりだ。

 対決は避けて通れないだろう。


 女が去って行く。


「礼と警告を伝えたかったらしいぜ」

「聞いてたよ」

「ちっ、スキルを使ったのか。こりゃ参ったね。同盟についてはどう思う?」

「仲間を作るのは悪いことじゃない」

「それ聞いて安心したぜ。聞いてたって言われてドキドキしたよ。強敵に会ってもドキドキしないのにな」


 邪神の意図を聞きたいような気がする。

 ダンジョンが邪神の領域で俺が邪神の邪魔をしているのなら、敵対もやむを得ないからな。


 答えを聞く魔道具を作るか。

 邪神の逆鱗に触れて死ぬならそれまでだ。


「教えてよ、もしもし♪もしもし、教えてよ♪教えてよ、教えてよ、教えてよ♪教えてよ、もしもし、もしもし♪教えてよ♪教えてよ、もしもし、教えてよ♪。もしもし♪教えてよ、教えてよ、教えてよ、教えてよ♪教えてよ♪。もしもし、もしもし、教えてよ、もしもし♪教えてよ、教えてよ、もしもし♪教えてよ♪教えてよ、教えてよ、教えてよ♪もしもし♪教えてよ、教えてよ♪もしもし、もしもし、もしもし♪もしもし、教えてよ♪。できた」


 さあ聞くぞ。


「ダンジョンと核石の関係を教えろ」


 今回も魔道具が壊れた。

 でも答えは得られた。

 ほう、そんなことになっているのか。

 確かにダンジョンは邪神の領域だった。

 だが、死んだ者の魂が糧になんてなってない。

 ダンジョンが何のためにあるのかと言えば、モンスターの駆除と試練だ。


 まず核石だが、昔は歌が知識として伝えられてた。

 だが途絶えた。

 歌の仕組みを作り出した神は悲しんで、仲の良かった邪神が手助けしたというわけだ。

 核石を広めたいが、無償で物を人間に与えるのは神の掟で禁止されている。

 そこで試練だ。

 モンスターを倒して核石を得るのだ。


 邪神としてはどんな形であれ核石が広まるのは嬉しいらしい。

 特に歌が広まるのは嬉しいようだ。


 じゃあ、俺って邪神に気に入られているのか。

 もしかして神のコインをくれたのは邪神。

 邪神って悪い神様なんだと思ってたけど。

 憎しみや妬み、そういう負の感情の神ってだけなんだよなぁ。

 きっと、直接人間に害を与えたりしてないと思う。


 憎しみや妬みの感情って良くないけど、人間の一部であることは否定できない。

 そいうものが世の中の役に立つことも少ないながらあるだろうな。


 邪神教団にこのことを伝えてもきっと信じないんだろうな。

 邪神教団は悪いことをして、人々に憎しみの感情を植え付けている。

 ある意味確かに邪神の糧になっている。


 だけど邪神は教団の人間が嫌そうだった。

 負の感情は嫌いなのかな。

 聞いても仕方ないから聞かないけど。

 もしそうなら、邪神教団は間違っている。

 邪神に嫌われてどうするんだと言いたい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ