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第20話 大事な事

Side:シナグル・シングルキー

 ピュアンナの依頼を受けることにした。

 面白そうだったからだ。


 清書の魔道具。

 ええと呪文は『printer』かな。

 歌は『ガコン、キュル、キュル、ガコン♪ガコン、キュル、ガコン♪ガコン、ガコン♪キュル、ガコン♪キュル♪ガコン♪ガコン、キュル、ガコン♪』。


 箱のがわを作って、核石と溜石を付けて導線で結んで完成だ。

 核石とは何だと思いますかとピュアンナに問われた。

 スキルを模倣して封じ込めたと俺は答えた。

 クラッシャーのイメージはたぶん、アカシックレコードみたいな所からスキルの情報を抜き出して魔石に植え付けるのだろう。


 作ってみるか。

 呪文は『Straight key』。

 歌は『トン、トン、トン♪ツー♪トン、ツー、トン♪トン、ツー♪トン、トン♪ツー、ツー、トン♪トン、トン、トン、トン♪ツー♪。ツー、トン、ツー♪トン♪ツー、トン、ツー、ツー♪』。

 クラッシャーのがわから核石を外して、俺が作った核石をはめ込む。

 試験的にやってみたが、問題ないようだ。

 これを最初に作った人は天才だな。

 アカシックレコードに辿り着くとは。


 そろそろ、ピュアンナが使えなくなって羽ペンを持って現れるはずだ。

 ピュアンナはめかし込んだ格好で現れた。

 純粋に可愛いなと思う。

 ただ、転生の話を信じてはくれなかった。

 初めて話したのに。

 裏切られたとは思うまい。

 俺だって自分が転生してなきゃ、転生なんてことは信じられない。

 それも異世界転生だぞ。


 思考を仕事に戻そう。

 羽ペンの魔道具は自己再生で決まりだ。


 道具を見れば、人となりが分かる、マイストの言葉だ。

 職人はそうらしい。

 俺もそれにならってみた。


 あんなに大事に羽ペンを保存しておくのも珍しい。

 羽ペンなんてのは、消耗品だからな。

 いくらグリフォンの羽とはいえ。

 この人なら秘密を見せられる。

 そう思って工房に招いた。


 羽ペンの修復は完了。

 ピュアンナが涙ぐんでいた。

 俺はあんなに消耗品に思い入れたことがあっただろうか。

 前世で運動会でもらった鉛筆とか、短くなったら容赦なく捨ててたな。

 会社でアイデアを表彰され貰った記念のボールペンも、すり減ったら捨てていた。

 恋人から貰ったプレゼントも壊れたら捨てていた。

 なんて物を大事にしない奴なんだ。

 前世に戻ったらぶん殴ってやりたい。

 修理して使えよ、鉛筆なんか継ぎ足して使えと思う。


 この世界で魔道具職人として生きて、いかに物を大事にしてなかったか知らされた気がする。

 俺なんかまだまだだな。

 ピュアンナが俺を良いなとか思う資格はない。


「おっ、なんか顔つきが変わったな」


 マイストにそう言われた。


「物を大切にするって気持ちを教わって、ああと気づかされたんだ」

「気づかない奴は多いさ。核石が壊れたら魔道具ごと捨てる奴もいる。壊れてもクラッシャーを使えば核石は復活するかもしれないし、復活しなかったとしても粉にして導線の材料に使える。がわだって再利用できる。新しい核石をはめ込めば使える」

「ええ、大事に使わないといけないなって思います」

「そういうのが仕事に現れれば一人前だ」

「精進します」


「だな、ランクは上がってもまだまだ半人前だ」

「そういえば師匠って奥さんは貰わないんですか?」

「それはあれだ。俺って魔道具馬鹿だからよ。愛想を尽かされちまう」

「それは女の方に見る目がないですね」

「だな。飲みに行くか」

「ええ」


 この日の酒は美味かった。

 一皮むけた気がしたからだ。


「師匠の一番の思い出の品ってなんですか?」

「そんなの決まっているだろ。初めて作った魔道具だ。売った人に壊れたら買い取るからと言って、戻ってきたのを大事に保管してる」

「それを見ると初心に戻るってやつですか」

「おうよ。最初に物を作った感動を忘れちゃならない。金儲けだけに走るようになるとそいつは腐っちまう」

「じゃあ、俺の一番の品はスイータリアの人形かな。スイータリアには捨てたくなったら持って来てくれと言っておかないと」

「あのお嬢ちゃん、人形は手放さないと思うぞ」

「それならそれで嬉しいですけど」

「そうだな。一生使われるような魔道具を作りたいよな」

「そうですね」


 工房に帰って、マイストに初めての作品を見せてもらう。

 火点けの魔道具だ。

 着火用ライターみたいな形をしている。

 がわが歪なのはご愛嬌だ。


「酷いだろ」

「ええ」

「このやろう、そういう時は良く出来ていますよとか言うもんだ」

「苦労の跡が見られます」

「まあそうだな。苦労した。不器用だったからな」

「ほっとした感じがします。師匠もそういう時代があったのかと」

「この作品は6歳の頃だぞ。お前の年齢にはもう1流になってた」

「俺は、遅咲きなんですよ」

「だが天才だ。いいか、失敗しても良い。曲がったりするなよ。もしお前が人の道を外れたら、俺が責任をもって対処する」

「肝に銘じおきますよ」


 俺はまだまだだ。

 これからたくさんの魔道具を作って成長していくんだろうな。

 人に誇れるような仕事をしよう。

 そう思った。


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