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第19話 復活の羽ペン

Side:ピュアンナ

 シナグルにケーキを奢ってもらってます。


「あなた何者?」

「うーん、前世の記憶があるって言ったらどうする?」

「ありえません。スキルでもそのようなものあり得ません」

「まあいいや」

「からかったの?!」

「秘密ということで」


 秘密が多い男ですね。


「核石とは何だと思いますか?」

「核石が何かだよね。たぶんだけど、スキルを模倣して封じ込めたかな」

「ええと、となるとですね、自分が持っているスキルの核石は作れると」

「うん、まあね。ただスキルをどうやって封じ込めるかは分からない」


 嘘を言っているようにも見えないですけど、正しいのかしら。


「あなたはどうやってます?」

「秘密」

「またそれですか。どうしたら話してくれます?」

「一番大事な物を見せて」


 ドキッとした。

 まさか私と、そんなことやあんなことをしたいとか。


「駄目!」

「ええと、何か勘違いしてない。一番大事な仕事道具を見せてと言ったんだ」


 なんよ。

 そうならそうと早く言いなさい。


「何でまたそんなことを?」

「仕事道具を見るとその人のことが分かる気がするんだ」

「そんなものかも知れないけど。そんなことで秘密を話してくれるの」

「まあね」


 お茶の時間が終わって私は窓口業務に着いた。


「私の一番大事な物はこのグリフォンの羽ペン」

「うん、大事に使ってたのが分かるよ。特別な人から貰ったの?」

「ええ、私を一人前に育ててくれた先輩からの贈り物」

「直してやろうか」

「魔道具じゃないのよ。何年も使った羽ペンよ」

「俺は、魔道具でどこまで人を笑顔にできるか挑戦中だ。世界中の人を笑顔にしたい」

「いい目的ね。私の目的は魔道具職人が増えることよ。そしてもっと世の中が便利になれば良いと思ってる」

「ほとんど同じだね。共通項が沢山ある」


 やだ、顔が真っ赤になった。

 恋に落ちたのかな。

 いいえ、同志を見つけて嬉しいだけよ。


「羽ペンの修復を任せてもいいわ。ただし目の前でやって」

「いいよ。じゃ、仕事が終わったら」


 時間外にデートはするなと先輩からきつく言われた。

 でもこれはデートじゃないわよね。

 ですよね。


 いや、デートだろという内なる声が。

 ああ、もう頷いてしまった。


 工房に修理してもらいに行くだけよ。

 仕事が終わるまでそわそわと仕事をこなした。

 幸いミスはなかったと思う。

 いったい私はどうしちゃったの。


 マイスト工房に入る。

 どこにでもある普通の工房だわ。

 1階の入り口がある部屋が店で、きっと奥が工房。

 2階が住居。

 3階は倉庫かしらね。


「いらっしゃい」


 シナグルが笑顔で迎えてくれた。


「お邪魔します」

「さあ、奥へ入って」


 工房の作業台には見慣れた物が載っていた。

 普段あまり使わない道具としてはクラッシャーね。

 これは核石を壊す時に使う。

 羽ペンの修復に何で必要なのかしら。


「まず、魔石をクトン、ッシャーに載せて。トン、トン、トン♪トン♪トン、カン、トン、トン♪トン、トン、カン、トン♪。トン、カン、トン♪トン♪トン、カン、カン、トン♪トン、カン、トン♪カン、カン、カン♪カン、トン、トン♪トン、トン、カン♪カン、トン、カン、トン♪カン♪トン、トン♪カン、カン、カン♪カン、トン♪」


 シナグルが歌いながら、クラッシャーを操作する。


「できた」


 核石らしき魔石をグリフォンの羽ペンに取り付ける。

 溜石も取り付けて、導線で繋ぐ。

 そして、クズの羽を羽ペンに括り付けた。


 魔道具を起動する。

 グリフォンの羽ペンが直った。

 いいえ、未使用の状態に戻ったというべきね。


 先輩との思い出がよみがえる。

 ゆっくりでいいのよ。

 確実に丁寧に仕事しなさい。

 誰だって始めは早くはできないの。

 焦る必要はないわ。

 分からないことがあったら人に聞きなさい。

 ただし2度同じことを聞かないように。

 一度言われたらメモをとりなさい……


 など色々と言われたわ。

 ちょっと涙ぐんでしまった。


「なんの効果の魔道具?」

「自己再生。だから、起動するにはグリフォンの羽がクズでも良いから必要」


「これ、人間に使ったら、欠損部位も治るのではなくって」

「うん、死体が必要だけどね。おぞましいから、そんなことはしないでよ。この魔道具は君だけへの特別製だよ」

「世界で私だけ」

「そうだね。二人だけの秘密だ」


 私のために危険を冒して作ってくれたの。

 この羽ペンの秘密は人には明かせない。

 私とシナグルだけの秘密。

 心地いいものを感じた。

 秘密の重みが少しも嫌でないの。

 それどころか、嬉しい。


「大事に使わせてもらうわ。あなたの秘術も分かったわ。クラッシャーで魔石から核石を作り出すのよね。肝は歌かしら。歌の意味は分からないけど」


「肯定も否定もしない」

「何で秘術を見せてくれたの?」

「あのグリフォンの羽ペンを見たら、凄く大事にしているんだって分かったよ。虫よけの薬も塗ってあったし、使えない羽ペンをあそこまで大事にするのは良い人だと思った」

「そう、とても大事な物なのよ。命の次に大事だわ。あれを見ると力が湧いてくるの」

「そこまで大事に使われたら、本望だろうね」


 シナグルは不思議な人。

 この人もきっと魔道具を大事にするんだろうなと思った。

 壊れた核石を復活させられるぐらいに。

 こんな素敵な考えの人に神様が秘術を授けたのね。

 世の中もまんざら悪くないと思った。


 明日からグリフォンの羽ペンでバリバリ仕事しましょう。

 そう心に誓って工房を後にした。

 くふふ、シナグルと秘密を共有した。

 笑みが零れてくる。

 明日は晴れね。

 きっと気持ちの良い日になるわ。


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