57話
放課後。教室。
チャイムが鳴って、クラスの空気が一気にゆるむ。
俺は鞄に教科書を入れていた。
後ろから秋山の声。
「東海林君、帰る?」
振り向く。
秋山はいつもの穏やかな顔で立っている。
「ああ」
その時、教室のドアが開く。
ガラッ。
何人かが振り向く。
白い髪。響だ。
いつものことだから、クラスの誰ももう驚かない。
響は教室を見渡すと。真っ直ぐ。
俺の席に向かってくる。
そして何も言わずに俺の膝に座る。
ぎゅっ。
抱きつく。
「……東海林さん」
「おう」
「……帰ろ」
「まだ」
響は俺の肩に顔を寄せる。
「……待つ」
秋山が横で笑う。
「本当に毎日だね」
響は少しだけ秋山を見る。
「……うん」
それからまた俺に寄りかかる。
クラスの男子が後ろで言う。
「東海林、もうそれ専用席じゃん」
俺は無視する。秋山が言う。
「そういえば」
「?」
「昨日の件」
響が少し顔を上げる。
「……?」
秋山はにこっと笑う。
「響君が部屋に物置き始めたやつ」
響は少し頷く。
「……うん」
「完全に自分の部屋にしてたね」
響は小さく言う。
「……私の場所」
秋山は少し黙る。それからぽつり。
「じゃあさ」
「?」
「僕も置こうかな」
響がすぐ反応する。
「……だめ」
秋山は笑う。
「なんで」
「……ここ」
俺の服を掴む。
「……私の」
秋山は肩をすくめる。
「東海林君の部屋だよ」
響は少し考える。
それから小さく言う。
「……でも」
「……私の場所」
秋山は笑った。
「じゃあ競争だね」
響が少し眉を寄せる。
「……?」
秋山は言う。
「僕も物置く」
響はすぐ言う。
「……だめ」
秋山
「だめじゃない」
響
「……だめ」
俺はため息をつく。
「好きにしろ」
二人とも少し黙る。
そして響と秋山が同時に言う。
「置く」
「置く」
俺は天井を見る。
「面倒くさい」
帰り道。
三人で歩く。
響は俺の腕にくっついている。
秋山が言う。
「今日寄り道していい?」
「どこ」
「ちょっとだけ」
響が聞く。
「……どこ」
秋山が笑う。
「店」
少し歩いて生活用品の店に入る。
響がすぐ気づく。
「……秋山さん」
「なに」
「……昨日」
「うん」
「……真似」
秋山は笑う。
「そう」
響は少しむっとする。
「……だめ」
秋山
「だめじゃない」
カゴを持つ。
そして歯ブラシタオルパジャマ。
ぽんぽん入れていく。
響が言う。
「……それ」
「僕の」
「……東海林さんの家」
秋山は普通に言う。
「うん」
響は少し黙る。
それから俺の袖を引く。
「……東海林さん」
「なに」
「……止めて」
「知らん」
響は少し考える。
それから自分も棚を見る。
「……私」
「?」
「……もっと置く」
秋山が笑う。
「対抗?」
響は小さく言う。
「……うん」
そのまま。さらにカゴに入れていく。
俺はため息をつく。
「何やってんだ」
家。
袋を持ってリビングへ。
秋山が言う。
「じゃあ」
「?」
「部屋借りるね」
「勝手にどうぞ」
俺の部屋に入る。秋山は袋を開ける。
歯ブラシ。
机の上。
タオル。
棚。
パジャマ。
俺の服の横。
響が見ている。
じっと秋山が言う。
「これで僕も住人」
響は少し考える。
それからぽつり。
「……ライバル」
秋山が笑う。
「そう」
響は俺を見る。
それからぎゅっと抱きつく。
「……でも」
「?」
「……ここ」
胸に顔を埋める。
「……私の」
秋山が言う。
「共有じゃなかった?」
響は少し黙る。それから言う。
「……東海林さん」
「なに」
「……半分」
秋山が笑う。
「残り半分僕」
俺はため息をつく。
「勝手に決めるな」
夜。
布団。
真ん中に俺。左に響。右に秋山。
二人とも抱きついている。
響が言う。
「……秋山さん」
「なに」
「……負けない」
秋山が笑う。
「僕も」
俺は天井を見る。
「何の勝負だよ」
二人同時に言う。
「東海林さん」
そしてそのまま三人で眠った。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




