表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男友達だと思ってたやつがなんかおかしい  作者: Саша


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/78

26話

かくことがないようです

数日が経った朝。


家を出るときから、もう距離はゼロだった。


「東海林さん、寒い」


そう言いながら、響は当然のように俺の腕に絡みついてくる。


「もう春だぞ」


「……まだ寒い」


実際全然寒くない。

ただ単に離れる理由がないだけだ。


後ろから秋山が静かに続く。


「今日もその状態で行くのかい?」


「いつも通りだろ」


「僕は別に構わないよ」


秋山は笑う。

けれど視線は、絡みついた響の手元に一瞬だけ落ちた。


三人並んで登校するのは、もはや日常になっていた。



学校に着くと俺の席の隣には東さんが座っていた。早いな。


黒髪をきちんと結んで、無駄な動きがない。

あの古い家で正座していた時と同じ、静かな空気を纏っている。


「おはよう」


俺が声をかけると、東は小さく頷いた。


「……おはよう」


それだけ。

必要以上は話さない、けれど無視もしない。


秋山の席は少し離れている。

振り向けば視線が合う距離。


「……今日も響さんは…来るんですか」


東が、ぽつりと言った。


「多分来るな」


「……そうですか」


感情は薄い。

でもほんの僅か、視線が揺れる。


従姉妹として、気になってはいるのだろう。



昼休みになると嫌な予感が当たる。教室のドアが開く音。

ざわ、と空気が変わる。


「……東海林さん」


響だ。


隣のクラスから、迷いなくまっすぐこちらへ来る。そして俺の前で立ち止まる。


「おい」


次の瞬間。

膝の上に、ぽすん。


「よし」


「よし、じゃない」


完全に座った。

教室がざわつく。

東が静かにこちらを見る。

秋山は机に肘をついて、面白そうに眺めている。


「自分のクラスで食いな」


「……嫌」


「なんで」


「…ここがいい」


理由になっていない。

だが響は当然のように弁当を開き、俺に寄りかかったまま箸を持つ。


「ほら」


「自分で食いな」


「……手、動かしづらい」


当たり前だ。俺の首に腕を回しているからだ。

ため息をつき、少しだけ体勢を直してやる。


「甘やかしすぎじゃないかい?」


秋山が笑う。


「今さらだろ」


俺は諦めている。

響が楽しそうなら、それでいい。

それが正しいかどうかは、あまり考えないようにしている。


東が、静かに口を開いた。


「……響」


「……なに」


「重くないですか」


俺を見る。


「別に」


「……そうですか」


それ以上は何も言わない。


だが東の指先が、わずかに強くペンを握ったのを俺は見逃さなかった。


食事が終わる頃には、響の動きが鈍くなる。


「……眠い」


「自分の教室戻りな」


「…やだ」


そして、そのまま俺の胸に頭を預ける。


「おい」


返事がない。完全に寝た。

教室のざわめきが一段階上がる。


「大胆だね」


秋山が笑う。


「東海林君、慣れてるのが怖いよ」


「もう何回目だと思ってる」


俺は響の背を軽く支える。

落ちないように。


東が立ち上がった。


「先生、来ます」


「マジか」


「隠しますか」


「どうやって」


東は少し考え、机を少しだけ前にずらした。

視界を遮る形になる。


「……ありがとう」


「従姉妹ですから」


淡々とした声。

でも目は、ほんの少し柔らかい。



午後の授業。


響は結局、チャイム直前に起きて自分のクラスへ戻った。


去り際、耳元で囁く。


「…放課後も……一緒」


「帰る家、同じだろ」


「……うん」


満足そうに笑う。

東がそれを見ていた。


「……響、楽しそうですね」


「最近ずっとあんな感じだ」




放課後。


三人で校門を出る。


響は当然のように俺の隣。

秋山は少し後ろ。


「…今日も…昼寝できた」


「ここは保健室じゃない」


「東海林さん…の上、…落ち着く」


後ろから秋山が言う。


「僕の上はどうだい?」


「……東海林さんじゃないと……やだ」


即答。

秋山は笑う。


「だろうね」


傷ついていない顔。

でも、完全に平気でもない。


俺は知っている。


秋山も依存している。

ただ表に出さないだけだ。


家に着くと、響は真っ先に靴を脱ぎ、俺の袖を掴む。


「…今日も一緒に…いる」


「どこ行く気だ」


「…離れない」


宣言か。

秋山が鞄を置きながら言う。


「共有ってことでいいよね」


「勝手に決めるな」


「でも実際そうだろう?」


響は俺の腕に顔を埋めたまま言う。


「……秋山も、いていいよ」


「許可ありがとう」


奇妙な均衡。奪い合わない。排除しない。

三人で、真ん中を共有する。


その中心が俺だ。

重い。でも嫌じゃない。


夜。


ソファに座れば響が膝に乗る。

少し遅れて秋山が隣に座る。


「東海林君」


「なんだ」


「逃げないでね」


「逃げる理由あるか」


「あるかもしれないよ?」


響の腕が強くなる。


「……逃げたら、追いかける」


「怖いな」


でも、そんだけ必要とされてるって事なのかな。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ