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おいしいアイスクリーム2(終)


 広場までの道案内をヒバリはコノメに任せた。

「登に何の用事ですか?」

 コノメが道すがら聞く。

「なんとなく」

 鐘霞はそう言うしかなかった。

「そうですか。なんか緊張してるように見えたから、悪い事かと思って」

 図星をさされた気がした鐘霞は、動揺した。動揺されたコノメはえっと驚き返す。鐘霞は気まずさに口を開く。

「喧嘩をしたわけじゃないが、なんとなく関係が悪くなる事があるんだ。顔を合わせるのがなぜか気まずい」

「ああ、よくあるよね。そういうこと」

 あっさりとコノメは共感した。鐘霞は不器用に微笑む。

 オレンジ色のワゴンが見えると、コノメは引き返した。

「大丈夫だよ。登は優しいから」

 コノメが励まし、手を振る。鐘霞は礼を言いながら、手を振り返した。何度か振り返るコノメが、振り返らなくなったのを見送って、鐘霞は歩き出す。

「キャラメルアイス、ふたつ」

 注文すると日永は目を見開き、言葉を失う。鐘霞はぎこちなくメニュー表を見る。カップとコーンが選べる。

「どっちもカップで」

 値段はひとつ四百円だった。鐘霞は財布を出す。小銭をひっくり返すと二百円しかなかった。戻し、札をだす。

「二百円でいいです」

 日永が言った。こんな声だったか、と鐘霞は思った。

「お釣りはいらないから」

 日永は首を横に振った。

「テーブルで待っていてください」

 日永は背を向けて、準備をする。鐘霞は二百円をトレーに置いて、オレンジ色のパラソルの下に座った。パラソルは柔らかい日差しを透かし、秋風にかすかにはためく。ぱたぱたと鳴る音に鐘霞は耳を澄ませる。日永がキャラメルアイスを持ってきた。

「一緒に食べよう」

 鐘霞が言った。日永はテーブルにアイスを置いて、鐘霞の正面に張りつめながら座った。キャラメルアイスに目を落とす。日永は頭がよく働かなかった。迷い、消え、迷う。

「溶けるぞ」

 鐘霞は先にキャラメルアイスを掬うと、スプーンを舐めるよう食べた。話をしよう。なんでもいいから、長い話を何度もしよう。あいにく、時間は沢山ある。鐘霞は伝えたい事がいくつもあった。それなのに鐘霞はキャラメルアイスをゆっくりと舌で転がした。日永は踏ん切りをつけて、顔を上げる。鐘霞の片目から真っ直ぐの涙が流れていた。日永はその涙から目が離せなかった。

「溶けるぞ」

 鐘霞は自分が泣いているのに気がついてないような素振りだった。日永はキャラメルアイスを食べる。ゆっくりと溶けていくのを貪るように口に運ぶが、日永は苛まれたままだった。それでも、キャラメルアイスはひたすらに甘く、ずっとおいしかった。








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