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第九州 話「石塚、ざまぁ回」

「か、か、怪物か!?」


 桜木ぃぃ!!

 どうしてこんなに使える駒抱えてやがんだよ……


 怪物という名に相応しく、燃え盛る程の赤い肉体、額にはいかにも「王」に相応しい立派なツノが生えていた。

 おまけにその鋭い眼光にはとてつもない覇気があり、一目で別格だと分かる。

 

 間違いない

 こいつは


「酒呑童子……」


 四文字の騒々しい名前から、封印しておきたい記憶が想起された。


 どうやら石塚はこの怪物に、敗北したことがあるようだ。


 だが、それも二年前の話。

 

 

「俺も侍の一匹や二匹は瞬殺できるくれぇ強くなってるぜ?」


 石塚は勝機を見出し、愛用の2本のナイフを逆手に構える。

 愚直にも接近戦で勝てると思い込んでいるのだろう。

 

「ぶっ殺すぞぉぉぉぉぉ」


 空気を蹴り、ミサイルのように飛び込んだ。

 2本のナイフが火花を散らし、ぶつかり合っている。

 やがてその火花は大炎となり、怒りに燃えた石塚を包み込む。

 

 

 

 対して頼政は口の端を引き上げて微動だにしない。

 

 頼政はいつだって余裕だ。

 彼に敗北の二文字など存在しないのだ。


「貴様など、あやつには勿体ない!!」


 左に構えて

 左から右へと


――ブンッッ


 

 

 次の瞬間、()()()()()である俺も目を疑った。

 酒呑童子の強さもそうだが、何より傲慢で無礼極まりない石塚が自らナイフを落とし、戦意喪失を表すかのように両手を頭の上にあげていたのだ。


「ヒィ……っく」


 そして石塚の乾いた眼は潤っていた。

 何か変な気でも起こすんじゃないかと頼政を一瞥してみると、首を小さく横に振る。

 

 当然であろう。

 鬼の王「酒呑童子」が金棒を持ち、それを振って見せたのだから。


 頼政にしてみればまさに切望していた光景であり、石塚にしてみれば絶望の二文字が掲げられる。

 

 金棒と鬼の相性はすこぶる良く、鬼版の魔力である「鬼力」を著しく上昇させた。

 

 あの超鈍感な馬鹿男が気付く程に。



「よくやったな」

「お褒めに預かり光栄です、ボス」

「……」


 さっきも言ってたな「ボス」だとか。

 いい加減辞めてくれないかな?と言いたいが、支配者である以上建前もあるし……


「……どうしましたか? ボス」

「お前は特別だ」

「? ……と言いますと?」

「お前は俺の親友(とも)だ。だから、()()()()()そう固い言葉を俺に使うな」


 頼政は後頭部を摩り、照れくさそうな表情をして首を縦に振る。

 

 どうやら満更でもないようだ。

 俺の本当の目的も知らずに。


「おい、その男どうするんだ?」


 酒呑童子は下顎を摩りながら値踏みをする様な目で俺を見た。

 

「当然、駒として使う」

「さすが極道だ」


 なぜこいつがそれを……?

 俺は酒呑童子に言った覚えはないが……


 酒呑童子は首を手でポキポキと鳴らすと、雷を浴びたような衝撃が頭に響いた。


 


「貴様、我の契約者である頼政を洗脳してないか?」




 




 


 



 

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