7
ナップは、自分の寝台に転がると、何やら懐から紙切れを取り出してじっと見つめた。
「やっぱ変わってないか」
彼は、そうつぶやくと思わず苦笑をもらした。紙切れには、いくつかの枠と数字が並んでおり、どうやらそれは給与明細であるらしかった。
先月、彼はその身を張って闇魔術師との戦いに参加したのだが、悲しいかな公務員である彼の給与には、その功績は反映されていなかったようだ。
冒険者のように、依頼によっては莫大な報酬が得られる代わりに、ひとたび怪我を負い身動きできなくなると無収入になってしまうような職種と、高くはないが、安定した収入を得られ、病気や怪我への補償もしっかりしている公務員、果たしてどちらを自分が望んでいるのかは、ナップとしても迷う所であった。
コン、コン…
扉にノックの音がしたので、ナップは再び寝台の上に身を起こす。
「おじゃまします」
丁寧な挨拶で入って来たのは、予想通りボッシュであった。
「まあ座れよ」
ナップにすすめられ、ボッシュは寝台の近くにあった木製の椅子に腰かける。彼の重みに椅子がキシキシと悲鳴をあげる。
「やっぱ、豪邸からいきなり騎士団宿舎だと狭く感じたりすんの?」
「まあね、でもこれはこれで新鮮だから」
フィンの騎士は、入団して最初の三年は騎士団宿舎に住まなければならないと、法令によって決められている。
宿舎に入れば家賃がかからず、朝晩の食事が提供されるという、新人騎士たちにとっては非常にありがたい制度ではあったが、さすがに居室は二人部屋であった。
各室には、寝台と棚と椅子がそれぞれ二つずつおかれ、それ以外は各々が用意しなくてはならなかった。
新人騎士達の中には、部屋にほとんど物をおかず殺風景なままにしている者もいたが、逆に、狭いながらもなんとか自分の個性を出そうと色々と飾りたてる者もいたりして、その居室から各々の性格が見てとることができ、ナップとラルスの部屋はどちらかといえば前者のそれであった。
唯一の目立つものといえば、ナップの寝台脇の壁に飾られた一枚の絵であり、そこには四人の子どもが描かれていた。




