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ボッシュの家というのは、ヨルムに代々続く豪商のカトレナ家である。その主力商品は「布オムツ」であり、その生産・販売においては世界シェアの六割を占めている。
さらに、ボッシュの父というのが商才に長けた人物で、ヨルム市内の保育園や老人ケア施設と専属契約を結び、自分達のオムツを採用する代わりに、汚れたオムツをすべて「カトレナ商会」が安価な料金で回収→洗浄→返却するというシステムを確立し、これが国立・民間を問わず多くの施設に歓迎されたため、今やカトレナ家は、ツールース家、ラミス家などと並び、フィン福祉産業の中核を担うようになっていた。
「あ〜あ、俺も一度あんな豪邸に行ってみたいな」
「ほんと?じゃあ今度遊びに来るかい??」
ボッシュがうれしそうに微笑む。ヨルム西区にそびえ立つ、カトレナ家の巨大な邸宅は、近所から「オムツ御殿」と呼ばれ、ヨルムの観光名所のひとつとなっているほどである。
「おう、よろしくな」
ナップの顔にも笑みが浮かぶ。
ボッシュは、その容姿や豪商の息子という立場から、まわりからは「愚鈍なお坊ちゃま」という扱いを受けていたが、ナップは決してそのようになとらえ方はしていなかった。彼の小さな瞳からは確かに聡明さが感じとれたし、場の空気が悪くなった時など、さりげなく愛嬌のある発言をして皆を和ませるところなど、どちらかと言えば自分に近いところがあるように感じていたくらいであった。
「あと、それからさ…」
そのような事を考えた矢先、ボッシュの様子が急におどおどとしたものに変わり、不安を隠しきれない、といった口調で話しかけて来たので、ナップはいささか面食らってしまった。




