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「あたしはね、実はぁ……」


明らかにメイシンは、相手の驚きの反応が楽しみで仕方ないといった表情になっている。

ナップも本意ではなかったが、興味深そうな顔をなんとか作る。


「アリッサちゃんと同い年なのよ」





「ええぇぇぇぇぇ!?」


ナップはなかなかに機転のきく男だが、さすがにプロの役者ではない。彼のあげた驚きの声にはいささかのわざとらしさがともなっていた。


「ふふっ、びっくりしたでしょ!!」


さいわいメイシンは、若い護民騎士の演技には気づかず、満足そうな表情を浮かべる。ナップの隣に座るアリッサは、また彼女とは違った意味で、楽しくて仕方ないといった風にニヤニヤとしていた。


「いや、びっくりです。どういうことなんすか?」


発する言葉にいささかの棒読み感はあったが、すぐに状況に適応したナップは、この際だから楽しんでしまうことを腹に決めた。


「それはね、あたしが開発した美容魔法を使っているからなの。見てよこの肌、とても一世紀近く生きてきたとは思えないでしょ?」


「確かに」


これは演技ではなくナップの素直な感想であった。差し出された彼女の腕の表面は、見事なまでの潤いをたたえていた。


「まあ、せっかくの魔力を肌に流しこんで、三流魔女に転落しちまったんだがね」


アリッサの言葉にメイシンは、頬をふくらませる。


「転落じゃないわよ!!これは好きでやったんだも〜ん」


「やれやれ、何が悲しくてそんな魔力の無駄遣いをするんだか」


アリッサはため息をつくと、紅茶を一口すすった。


「まあいいわ、話をあの子のことに戻すわね」


アリッサとやりあっても、それこそ時間の無駄とばかり、メイシンが話を元に戻す。


「ぶっちゃけて言っちゃえば、あの子…リューンは、あたしの妹の孫なの」


つまり、メイシンとリューンは「大伯母」と「また甥」の関係にあるのだった。


「あの子の家族は、あたしの妹も含めてなんだけど、ある魔族に皆殺しにされちゃってね。それでまあ……色々あってあたしが引き取ったわけ」


その話を聞くと、ナップのおもては驚くほど険しくなった。


「皆殺し…」


「今、魔術師を目指しているあの子にとって、あたしはうら若い美貌の伯母であり、尊敬すべき師匠でもあるってわけ。間違っても本当は大伯母だなんて言わないでよ」


しかし、話しかけた当のナップが、なにやら真面目な顔で黙り込んでしまったため、メイシンは仕方なく話題を本来あるべき方向に変えることにした。


「さてと……護民騎士君!!」


「おっ!!」


急に大声で名前を呼ばれ、ナップは深い物思いから我に返ったように顔をあげる。


「なんすか?」


「なんすかも何も、私に何か頼みがあって来たんでしょ?一体どんな用件なの??」


「ああ、それは―」


かくして護民騎士ナップは、ようやく同僚の切なる思いについて、当のメイシンに語る機会にたどり着いたのであった。


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