↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/93

28話 伯爵のオリーブ畑(ユイの謝罪)

 デュラ様のメイドアルバイトに精を出していた私だが、デュラ様が忘れ物をしたそうでそれを届けてほしいと他のメイドから頼まれた。

どうやらデュラ様はいま、オリーブ農園にいるそうで、今のところ仕事を抜けても問題ないのが、本職ではなくアルバイトな私なので、早速歩いて向かったのだけど――。


「ユイ?!」

 農園の方に荷物を預けるかデュラ様のいる場所を教えてもらおうと話していると、突然私の名前が呼ばれた。何だ?と思いそちらへ顔を向ければ、超絶可愛らしいお姿に目がロックオンする。

 黒髪に琥珀の瞳の可愛い少年。頭にあるヤギのような角も最近プリティーに見えるその姿はっ?!

「へ?魔王様?」

 魔王様が可愛いのはいつもどおりなのだが、どうやら服装が外出用らしく、乗馬をするような服装だ。もしかしたら王様だし本当に乗馬をするのかもしれない。でもまるで子供のコスプレを見ているようで、可愛すぎて顔がにやけそうになる。

 駄目だ。魔王様の乗馬妄想が脳みそを支配しそう。きっと魔王様の乗馬は何でもこなせる頼れるお兄さんなルーンが教えて下さったんですよね。それこそ手取り足取り、麗しい姿で――いやいや、それこそ駄目、駄目。魔王様とお兄さん位置的側近のBL妄想は封印しなければ。今度こそ冗談抜きでクビになる。

 脳内妄想を必死に誤魔化しながらも、驚きだけは隠せずに私はマジマジと魔王様を見た。

 確かに魔王様が偶然にも私の旅行中ににここへ視察へ来るとは聞いていたけれど、まさかドンピシャで出くわすとは。こういう偶然ってあるんだなぁ。


「ユイ。魔王様の前だぞ」

「あ、すみません」

 私はデュラ様に言われて、慌ててルーンに学んだ配下の礼をとる。あまり公式的な場で魔王様に会うことはないので、やったことはなかったが、ここでやっておかなかったら、ルーンに文句を言われてしまう。

 ルーンは、くどくどと魔王様の株を下げないように、礼節をわきまえた行動をしなさいと私に伝えた。ルーンと魔王様しかいない場合、および魔王様がお忍びでいる場合はいいが、そうでなければ私が魔王様を侮るような行動をとれば、その他の人の中にも魔王様のことを侮る者が現れるからという理由で。魔王様は幼いため、気を抜けば周りの貴族たちに軽んじられてしまうような状態だ。近くにいるものほど、分をわきまえて動かなければいけない。

 魔王様を大切に思うならば。

「……顔を上げろ」

 魔王様に許しを得て、私は顔を上げた。

 よし、これで大丈夫だよねと思って魔王様を見れば、ものすごく微妙な表情をしていた。悲しんでいるような怒っているような表情に、はて、私は何か礼の取り方を間違えたかと内心首をひねる。


「ユイ、どうしてここにいる?」

「休暇を頂きましたので、こちらへ里帰りをしていました。出身ではありませんが、以前住んでいた場所ですので」

 あ、そっか。

 外泊の申請は出したけど、私のような下っ端の行動なんて魔王様が知るはずもないか。そりゃ魔王城にいるはずの私がデュラ様の所に遊びに来ていたらびっくりするよね。

 ……えっともしかして魔王様は、私が魔王様のストーカーしているとかそんな風に思っていないよね。確かにショタ萌えの残念お姉さんへの道に足を踏み込んでしまったけれど、そこまで変態じゃないから!

 必死に魔王様に念を送るが、私にはテレパシー能力なんててないので、伝わってはいないだろう。うぅ。ここにいるのが魔王様だけだったら、誤解を解くために色々話せたのに。

「それは聞いている。ユイは俺の家庭教師だからな。俺が聞いているのは、どうしてここにいて、ハン伯爵の元で働いているんだ」

「あー……もしかしてアルバイトって禁止でした?」

 そうか。さっきの、悲しんでいるような怒っているような顔は、友人である私が規律違反をしているから、罰則をしなければいけない事に対してか。

 確かに日本でも、就職をすると、アルバイトを禁止する企業とかあった気がする。業務に支障が出なければいいじゃんと思うが、そのさじ加減は難しいので、一律に禁止してしまうのだろう。確かに魔王様の家庭教師ならば、その業務に集中しなければいけないので、外部アルバイトなんてもっての外なのかもしれない。

「すみません。あの。以前、デュラ様にお世話になっていた時に一緒に働いていた友人から、人手が足りないと急遽ヘルプを頼まれて。そんな禁止になっている事は知らなくて……。駄目なら給料はもらわずにボランティアにします。本当にごめんなさい」

 だから、クビだけは止めて下さい。

 

 びくびくっと魔王様を見れば、魔王様は困惑したような顔をしていた。うーん。やっぱり見逃すのは難しいのだろうか。

 そうだよね。責任者だもんね。友人だから見逃すとか、公私混同したら後々困るだろう。ただでさえ難しい立ち位置なのに、これ以上迷惑もかけられない。

「いや。別にアルバイトは禁止というわけではないが……ハン伯爵の所で働く為に帰ったわけではないんだな?」

「はい。以前お世話になったので、挨拶と現状を報告しようと思ってここまできたんです。今メイドをしているのは偶々です。実は友人に頼まれてしまいまして」

 もしかして2重に働くのがマズイという事だろうか。

 2つの場所で常勤なんて不可能だと思うが、まあ、嘘をつけばあり得ない話でもない。

「そうか、今の仕事はたまたまで、ユイは俺の家庭教師なんだな」

「はい。そうです。私は魔王様の家庭教師です。魔王様が望まれる限り、頑張らせていただきます」

 良かった。

 一応、おとがめはなしにはなりそうだ。その事にほっと私は息を吐く。今度からアルバイトを引き受ける時は、問題ないか事前に確認をしておこう。

 

「なら、ユイ。俺がここに滞在する間は、俺の隣で色々教えろ」

「は?」

 何ですと?

 確かに魔王様が望まれる限りは家庭教師をすると言ったが、まさか魔王様について回るなんて。しかも公式の場で。無理、絶対無理。何かポカをやってしまうに違いない。

 礼儀作法は、今必死に名手ルーンから叩き込まれている最中なのだ。完璧からは程遠い。

「あ、あの。実はまだ、仕事が残っていまして――」

「オリーブに関して、ユイが深くかかわっているとハン伯爵から聞かせてもらった。ならば、良く知っている者も交えて色々話を聞けた方がいいと思わないか?なあ、ハン伯爵」

「たしかに、魔王様の仰るとおりです。ユイ。魔王様について差し上げてくれないだろうか?」

 うぅ。

 デュラ様にまでお願いされると中々に断りにくい。礼儀作法に関してはいいとしても、残してきてしまった仕事は大丈夫だろうか。一応私は臨時だったので抜けても大丈夫かもしれないが、地獄のように忙しそうにしていたので、色々気が引ける。

「あの。残してきてしまった仕事があるのですが……」

「メイドの方へは、伝言を伝えておこう。折角の休みなのに、すまなかったな。ユイのような優秀な者がいると、ついつい皆頼ってしまうのだよ」

「そんな。私が優秀なんてことありません。いつも皆に教えてもらって、迷惑をかけていたので、恩返しがしたかっただけですから。分かりました。終わり次第仕事に戻ると伝えていただいてもいいですか?」

 何て勿体ないお言葉。

 デュラ様の優しい言葉に涙が出そうになる。やはりデュラ様はすごくいい人だ。一介のメイドに過ぎない私にまで気を使われるなんて。

 これは是非恩返しをしなければ。


「ユイ、まだハン伯爵の所で働くのか?」

「はい。例え頼まれただけの仕事でも、中途半端にはできません。中途半端では、逆に迷惑をかけてしまいますから」

 やると決めたのなら、手抜きなんてしたら失礼だ。

 あ、でも。魔王様はもしかして家庭教師の仕事がおろそかになる事を心配しているのだろうか。

「でも、もちろん家庭教師の仕事を優先します。こちらが今の本職ですから。休みが終わり次第、魔王城に戻り、また頑張らせていただきます」

 そこは間違えないつもりだ。

 私の仕事での優先事項はもちろん魔王様の家庭教師なのだから。

「ではそろそろ別の場所へ移動しましょうか」

「そうさせてもらおう」

 デュラ様の言葉に、魔王様はそう言い頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。