第127話 謎トンネル
意味不明でしかないこの謎トンネル(仮名)だが、調査を重ねていけば、幾つかは判明する事柄もあるものだ。まずはこのトンネルの壁や天井について。これらの材質は複数のもので構成されており、それでいて破壊不可オブジェクトではなかった。やろうと思えば穴を掘る事ができるし、今のステータスであれば素手でも剥がす事が可能だった。
「で、その裏から出て来たのが、これな訳だけど」
ほんの数センチほど壁を破壊すると、今度は新たに金属質な壁が出現。そして、これら金属は先ほどとは打って変わって破壊不可オブジェクトのようで、何をしても突破できず。まあアレだ、色や材質からして巨大ワームの装甲と同じものっぽい。
「どの種類の壁を破壊してみても、同じように裏から金属の壁が顔を出す、か……つまりこのトンネル、表層だけは異なる材質で構成されているけど、その骨格はあのワームゴーレムの装甲と同様なんだろう」
「ふぅむ、彼奴の腹の中だと言う真実味が一応は増したかの?」
「何でそんな構造なのか、その意味は全然分からないけどな」
次、この場所の地面について。トンネルの壁と同じく、こっちも種類は相当に豊富。試しにホワイトに穴掘りをしてもらって、壁のように金属とかち合うかを確認したんだが……思ったよりも掘れる。壁の方は直ぐに金属と接触したってのに、もうホワイトの巣が何個も出来上がるくらいに掘れてる。ま、まだ下に行けるのか……?
「ゴオォ!」
「お、やっと底に行き着いたか」
結局、その後も暫く掘り作業は続いたんだが、地面の底にも金属の境界がある事が判明。掘った深さを計測するに、大体地表から天上部に届く高さと同じくらいだった。
「ここ、やっぱあの黒霊の中かもな。一見半円状のトンネルだけど、実態は円型の金属外郭になってるわ。サイズ感からしても、黒霊のそれと合致していると思う」
「しかし、なぜこんな奇妙な状態になっておるのだ?」
「……ワームゴーレムは最初、寂寞放牧地の南方から現れた。前にも言ったと思うが、そちらには無限砂漠や飛竜の山と言うエリアが存在している。ここにある様々なオブジェクト、それらエリアを構成する物質と似ているな」
「む、どういう事じゃ?」
「例えばこの砂、綺麗な黄金色で砂粒が驚くほどに均一だ。無限砂漠に存在する砂は全てこれで構成されているんだ。針に毒性のあるサボテン、水場で見かける毒ヤシの木、透明感があるのに猛毒で満ちているオアシスの水、それらも無限砂漠の特徴に当て嵌まる」
「毒ばっかじゃん……」
名前からして暑そうなエリアだけど、安易な水分補給が死を招く感じなんだろうか? 殺意が高いなぁ……
「それじゃ、あそこにある毒沼も?」
「いや、アレは飛竜の山のものだな。飛竜の山はエリア全体が険しい火山地帯で、地表は溶岩が絶えず流れているんだが、場所によっては毒ガスが充満していたり、それが液化して毒沼になったりと、無限砂漠に負けず劣らずの猛毒フルコースなんだ」
「そっちも毒かよ!?」
「フフッ、かと言って足下ばかりを注意する訳にもいかなくてな。空には小型のドラゴンが餌を探し回っているし、活火山が噴火でもしたら、空から溶岩が降り注ぐぞ」
「何で楽しそうに語るかなぁ……」
どんなにオルカが楽しそうにしていようと、そこには絶対に行かないからな、俺! 今そう決めた!
「ベクト、そんな顔をするな。危険ではあるがトリプルとなった今のベクトなら、十二分に攻略可能なエリアだぞ」
「そう言う問題じゃ――って、いかんいかん! 話が脱線し始めてる! それで結局のところ、ここにあるものが砂漠や火山を構成するものと似ているって事か?」
「そういう事になる。あれだけの巨大な口なんだ。移動中にも様々なものが体内に入ってしまい、結果、ここに蓄積する事になったのではないか?」
「それは……そうかも?」
仮に超巨大ワームがそれらの場所からやって来たとすれば、普通にあり得そうな話だ。移動中、意図してか意図せずしてか、奴は黒檻のオブジェクトを口の中に入れ続けた。そして流入した諸々が体内の半分を埋め、俺らが地面と勘違いしてしまうほどになった、と。まあそうだったとしても、壁の表層までもがそれら材質で構成されていた意味は分からないんだが。
「んー、そうなると寂寞放牧地のオブジェクトも対象になると思うんだが……街の周囲とかはあまり特徴的なものがないから、ここに含まれていても目立たないのか? 言うて草原だし」
「彼奴は今、街を食らう事に集中しておる。少なくともその間は、新たな何かが追加投入される事はなさそうじゃの」
「逆に言えば休眠の為に移動を再開して、口の中にオブジェクトが入り始めたら……フッ、この場所が賑やかになりそうでもある」
「オブジェクトだけじゃなくてさ、道中で現地の黒霊とかも産地直送していそうじゃないか? 要はこの奥、色んなエリアの黒霊で溢れていそうなんだが……」
三人で様々な意見を出し合い、最終的な結論が導き出される。……先に進まなきゃ、結局何も分からなくね?
「よし、探索を開始しようか」
「だな!」
「じゃな!」
とりあえず新たなオブジェクトが入って来る前に、入り口(推定)から離れたい俺であった。
◇ ◇ ◇
「で、初っ端から発見した黒霊が、アレな訳だけど」
ホワイトを収納し物陰に潜み、進路上にたむろしている黒霊達を注視する。そこには金棒や大斧を手にしたミノタウロス、計三体が居た。あの黒霊は寂寞放牧地の西方面にも居た種族で、以前に倒した経験がある。恐らく、巨大ワームが休眠する前後に飲み込まれてしまい、ここに迷い込んでしまったんだろう。単純な強さはフリジアンとほど同格で、そこそこの強敵――である筈なのだが、どうも様子がおかしい。
「姿形はミノタウロスっぽくはあるんだけど……何かさ、やたらとメタリックになってない?」
「明らかに生物でなくなっとるのう」
「完全にゴーレムと化しているな」
そう、連中の全身はゴーレムとなっていたのだ。しかも肉体だけでなく、手に持つ得物までもが以前と異なっている。でかく無骨な武器から様変わりして、でかく機械的な武器になったっつうの? 時たま武器に備え付けられた排気口からブシューと煙が噴き出しているし、本人達のボディからも煙が噴き出しているし……もう、世界観がスチームパンクのそれでしかない。
「何でゴーレムになってんだ? つか、あいつらまで破壊不可オブジェクトになっていたりしないよな? なっていたら泣くぞ、流石に」
「いや、ゴーレムではあるが、あのワームゴーレムとは装甲の材質が異なる。戦ってみないと強さは分からないが、倒す事自体は不可能でない筈だ。ただ、ゴーレム系統に感染は効かない。仲間にする選択肢はないだろうな」
「機械はゾンビにならないもんなぁ。あったとしても融合対象、ノーマルハゼちゃんと適合できそうな奴が居れば良いんだけど……」
「で、どうする? ワシで行くか? それともオルカか?」
「んー……奇襲したいし最初は隠密持ちのオルカ、その後は臨機応変に行こう」
早速の戦闘開始。隠密状態を維持したまま敵に間合いに入り込み、挨拶代わりとなる攻撃を放つ。狙いは無難に装甲の繋ぎ目、関節部分だ。




