94 もつれあう黒いローブ
瞬間、チョットマは横っ飛びし、壁に激突した。
一瞬目が眩み、相手を見失った。
スバッ。
銃口から発せられたエネルギー弾は、チョットマのブーツをかすめ、岩壁を撃った。
石が緑色の炎を上げ、見る間に溶けていく。
第一撃は何とかかわした。
瞬時に攻撃態勢に入る。
所持しているのは小さなレーザー銃とナイフのみ。
奴がいる方に銃を向けたが、引き金を引くことができなかった。
ぐっ!
目の前でもつれあう黒いローブが二つ。
カランと銃が転がった。
くそ!
チョットマは自分を撃った方に照準を合わせようとしたが、
「下がっていなさい」
と、落ち着いた声がした。
えっ、誰が、と思ったのも束の間、ローブが血を噴き出した。
がっくりと倒れていく。
血の飛沫が、チョットマのヘッダーを汚した。
「あっ」
あの手!
倒れていく腕を掴んでいる手!
もう一方の手には、血糊の付いた短剣。
どうっ、と男が倒れ、血飛沫がまた散った。
同時に、もう一方の男の姿が消えた。
数秒ほど、チョットマは立ちすくんでいただろう。
門番さんが助けてくれた……。
プリブの部屋、そしてホトキンの間に至る通路の門番さん。
違いない。
あの鍵爪のような指。
通路に飛び散ったおびただしい血。
天井からも滴り落ちている。
男の胸の辺り、胴体の半分ほども、ざっくりと切り裂かれている。
チョットマの目は、視界から消えた門番の行方を追いはしなかった。
倒れた男に釘付けになった目は、瞬きも忘れたかのように見開かれていた。
危険はないか。
やがてチョットマは、ゆっくりと息を吐き出した。
すでに男に息がないことは明白だった。
助かった……。
汗が噴き出した。




