9 囮の可能性あり!
「重火器はない模様!」
「ゲートに集中! 迎え撃つ!」
「視認! 敵数、三!」
「ゲートから出るな! 確実にものにする!」
「ひきつけろ!」
わずか三名!
これまでにも急襲を受けたが、これほど少ない数は初めてだった。
いやな予感がする。
「他のゲート! 警戒を怠るな! 相手は少数! 囮の可能性あり!」
わずか三名でも、敵が接近しつつあるときは緊張で気分が悪くなる。
スキャンを飛ばした隊員から、重火器を保持していない模様と報告されてはいる。
しかし、万一小型のエネルギー弾でも保持しておれば、バリケードや建物の外壁は吹き飛んでしまい、ゲートは大口を開けることになるだろう。
瓦礫に埋もれ、土埃と炎が舞う中で、広がった入口を数名で守るのは難しい。
隣接のゲートから隊員を急行させるOポジションに移行するタイミングが難しい。
イコマはンドペキの意識として、急接近しつつある敵の部隊を凝視した。
後、二秒ほどで双方射程距離内に入る。
これまでの経験で、アンドロ軍は遠距離攻撃は仕掛けてこないことが分かっていた。
必ず、一般的な近接戦の効率的射程といわれる三百メートル前後から攻撃を仕掛けてきている。
街の破壊や市民の犠牲を最小限にするためか、他の理由があるのか分からなかったが、今回もその例に漏れないようだ。
「迎撃用意!」
ホトキンの間からエリアREFに侵攻したとき、まだアンドロ軍の姿は少なかった。
住民らの抵抗があったからだろう。
いくつかの戦闘はあったものの、あっけなく勝利し、エリアを掌握したといえる。
その後、七度の攻撃を受けたが、いずれも散発的なものだった。
エリア内に踏み込まれることなく、蹴散らしている。
彼我ともに死傷者はない。
しかしいずれ、大規模な侵攻作戦が実施されるはずだ。これまでの攻撃は、そのときのための偵察行為とも取れた。
今回がそのときではないか、と常に考えていた。
コリネルスが、撃て!と号令を発するそのときだった。
敵がその場にぴたりと立ち止まった。
ん!
と、メッセージが流れた。
「我々は使者である!」
「油断するな!」
「我々はタールツー配下である!」
敵は銃口を下に向け、戦意がないことを示している。
装甲、装備共に統一され、最新鋭と思われるそれらが街灯の光にきらめいている。
どことなく、騎士を思わせる気品を醸し出していた。
「用件を聞こう!」
コリネルスがメッセージを返す。
「タールツーが直々に話す! ンドペキ隊長ないし代理の方が、タールツー居住区までお出向き願いたい!」
「なに!」
「期限は二十四時間以内。お越しになられたら、衛兵に声を掛けられよ!」
「行かぬといえば!」
「知らぬ! タールツーが決めること!」
そう告げると、三人は踵を返し、走り去っていった。
「ふざけたことを!」
暗い街路には、かすかな砂煙が舞い、静寂だけが残った。