8 助けてあげようか?
制空管制で、政府運営の定期便は使えない。
すでに夜九時を回っている。
「今晩中に出立は無理だな。泊まるしかないか」
明日になれば、闇商売の飛空艇さえ飛べなくなるかもしれないが。
「念のためにホテルを探そう」
ふたりは闇雲に通りを歩いていった。
「どれがホテル?」
看板やサインといったものが極端に少ない。
装甲を身につけているので、寒くはない。食料もたんまり持っている。
「しかし、まさか野宿ってのも、まずいだろ」
「旅人に優しくない街だな」
「人通りがあるうちに探さないと」
「ああ。それにしてもここの人はどうしてこうも、空ばかり見てるんだ?」
「知るか。満月だからだろ」
「あるいはパリサイドの来襲を気にしているのかも」
んっ。
目の前に、さっき追い越していった少年が立っていた。
微笑んでいる。
目が合うなり、少年は親指を立てて見せ、クルリと背を向けた。
「あっ、おい」
しっ。
黙ってついて来い。
「おっ」
と、あるシリンダーに、少年の姿が消えた。
ここか。
「なるほど」
何の看板もないが、扉が開いている。
閉じていれば壁と同化して見つけられなかっただろう。
「信じて入るしかないか」
中には黄色い光が満ちていた。
スジーウォンが先に踏み込み、スミソが続く。
誰もいない。
と、後ろで扉が閉まる音がした。
「兵隊さんたち、なんだか無防備だね」
むっ。
いつの間に。
少年が真後ろに立っていた。
十歳そこそこ。
短く刈り上げた髪に切れ長の目。
色白だがしっかりした顔つきをしている。
足元まで隠れるだぼだぼのコートを羽織っている。
返答に窮していると、少年は胸元を広げて見せた。
バトルスーツを身に付け、小型の銃器が覗いていた。
「どういうつもりだ?」
「助けてあげようか?」
と、子供らしい笑顔を見せた。




