89 ちょっと待って! 外が騒がしい!
話を戻した。
四本の煙突は盛大な炎を上げていた。百年以上前は。
今日、クシの死体を五寸釘で打ちつけたステージは、燃え盛る炎の中の、さながら生贄を捧げる台。
それを喰らう大蛇。
レイチェルのシェルタの位置を示すあの言葉……。
「調べないわけにはいかないだろ」
既に事態は切迫している。
今こそ、あの横穴の先にあるだろう扉を開くべきときではないか。
「うーん。でも、確かめてみるって、どうするつもり?」
スゥが心配そうに眼をしばたかせた。
あの横穴を調べるには、スゥかライラの協力が必要だ。
でなければ、まず、あの階段室に入れない。
まさか年老いた兵たちに、開けてくれと頼むわけにはいかない。
「二週間後……」
クシの死体を回収に行くとき。
「フライングアイで飛び込めば、その先どうなるか、わかるだろ」
万一、妙なトラップにかかって身動きが取れなくなれば、放置してくればいい。
「待てる?」
あと二週間。
ますますスゥが心配そうな顔をした。
「待てるか待てないか、じゃない。待つしかないんだ」
「ふう!」
スゥがこれ見よがしの溜息をついた。
「恋人にも頼まないんだ」
「頼まない。巻き込みたくない」
ルール破りは、スゥに街を裏切れというようなもの。
扉を開くことができたとしても、その見返りにスゥの身に何かあれば、取り返しがつかない。
現に、あの階段室で、スゥはあれほど念入りに近づくなと繰り返していたのだ。
聞かれていることを前提としたポーズであったとしても。
「ねえ、ンドペキ。それってさ」
納得がいかないらしく、難しい顔をして睨んでいる。
「なあ、スゥ……」
「もういい。結局、ンドペキはそういう人」
そうだ。
その通り。
スゥが、心からひとつになっていない、と感じてもいい。
自分には、二人で乗り切っていく覚悟がないのかもしれない。
それでいい。
スゥだけは守りたい。その思いが何にも勝る。
それがすべて。
「ゴミ焼却場の下の横穴が空振りだったら、そのときは……」
だが、ゴミ焼却場の方は望み薄。
「さて、そろそろ様子を見に行ってくる。コリネルスも苦戦してるだろ」
スゥは返事もしなかったが、二人は短いキスを交わした。
しかし直後、スゥが顔色を変えた。
「ちょっと待って! 外が騒がしい!」




