8 総員Nポジション!
イコマはGPTにいた。
アヤとともにいるために。
さすがにンドペキは、隊員でもないアヤを戦場に出すつもりはなかったが、アヤが少しでも役に立ちたいといって聞かなかったからである。
「ゲート内で迎え撃つ! 敵の数は少ない!」
「バリケードを閉じろ!」
「まもなく視認可能!」
ニューキーツの街は夜。
ほのかな明かりが灯る街路。人通りはない。
ゲートを守っていたのは、コリネルス他数名の隊員とアヤである。
GPTは政府建物に最も近い倉庫群にある。
ゲート白金。
比較的小さな出入り口であり、守りやすい反面、大型火器による破壊にはもろい。
「相手の武装を確認しろ!」
義足姿のアヤは、行動に遜色はないが、どうしても下半身の装甲防御力に見劣りがする。
「アヤ! 後ろに下がってろ! 市民を避難させろ!」
コリネルスの指示が飛ぶ。
「ハイ!」
ンドペキからも発信。
「総員Nポジション!」
イコマはチョットマも自分の持ち場に向かっているだろうと思った。
チョットマの持ち場は、プリブの部屋の先に設けられた前線基地である。
Nポジションは、全員があらかじめ決められたゲートに集結し、各々そこを守るという隊形である。
いくつかのフォーメーションが設定されているが、Nポジションは最もノーマルなものだ。
戦闘初期の隊形であるといえる。
従って、急襲されたGPTに隊員が続々と集結するものではない。
フォーメーションはNからSまであり、Sとなれば最終局面。
全隊員が他のゲートを放棄してでも、戦闘中のゲートに集結することになる。
隊はすでに、ホトキンの間を放棄していた。
最前線として監視カメラやセンサーなどは設置してあるが、百名余りでこのエリアREFからスゥの洞窟まですべてをカバーすることはできなかった。
物資や人材はすべて、すでにエリアREFに集結してある。
チョットマは、あのコウモリ男の前を過ぎ、細い鉄橋を渡り、俊足を飛ばしていることだろう。
エリア内で、敵の攻撃から最も安全と考えられているのが、プリブの部屋の先にある前線基地、通称GFE。鉄のゲート。
ホトキンが仕掛けていた謎かけに由来した名。
スゥの洞窟あるいはホトキンの間から襲来する敵を事前に把握しやすい点で、安全だとはいえるが、守りに弱点がある。
防御基地としての足がかりに弱いのだ。
しかも、撤退時にあの細い鉄橋を渡ることになる。