56 飛空艇乗り
飛空艇乗りの店はすぐ近くだった。
というより、スジーウォンら三人は、その周りを歩き回っていたのだった。
看板も上がっていない陰気なドアを開けるなり、アビタットが大声で言った。
「さあ、今度こそ、了解をもらうよ。ほら!」
大人を二人も連れてきた!というわけだ。
飛空艇乗りはいかにもそれらしい人物で、盛大に髭を蓄えたいかつい造りの男だった。
入ってきた兵士を眼光鋭く睨みつけたが、すぐに目を落とし、己の作業に戻っていく。
飴色の光を湛えた狭い部屋に、埃が舞っていた。
「帰んな!」
男はそう言ったきり、手元の年代もののタブレットから立ち昇る映像を弄んでいる。
「そりゃないぜ、おやっさん!」
アビタットが食って掛かる。
飛空艇乗りは、映像をいじくる手を休めようとしない。
新型の艇だろうか。
男の指が触れるたび、全体像になったり、一瞬のうちに微細な部品になったりする。
複雑なレイヤーを一枚ずつ確認していき、立ち昇る飛空艇の像はそのたびに姿を変えていく。
「出ていけ! 邪魔するな!」
男がタブレットに何かを打ち込み、がなりたてた。
声は、通りにも響きそうだ。
「どうしてさ! 大人を連れてきたじゃないか!」
飛空艇乗りは、カーキ色の古びたツナギから、紙巻タバコを取り出した。もうめったにお目にかかれない代物。
ふと、油の臭いがした。
どことなく懐かしい臭いだった。
「気にくわねえ」
目を向けるでもなく、手を休める様子もない。
「だからなぜ! 誰か大人がいればって約束だったじゃないか!」
「約束? 勝手に吼えてろ!」
「くそう!」
男は、かなりな高齢に見えた。
薄暗い部屋の中でもはっきり分かるほど、顔は皺だらけで、頭も髭も白かった。
筋肉質かと見えた身体も、それは骨格だけで、よく見れば骨と皮。
指には美しい指輪が盛大にはめられているが、それらが痛々しいほど、どの指も痩せていた。




