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55 カギ縄を撫でても

 目に異様なものが映った。

「おい!」

「あっ」


 真っ二つに切り裂かれた黒い肉塊。


「まさか!」

 パリサイドが数体、草地に転がっていた。

 流れ出た血が生々しい。

「あんなふうになるのか……」


 カットラインで人が切断された様子を見るのは初めてだった。

 いや、見たことはあるかもしれない。ただ、もう記憶になかった。


 無敵かと思わせるパリサイドでも……。


「これじゃ、やつら、地球人類を憎むだろうな」

 こんな野蛮で卑劣な武器を未だに使用している地球人類。

「いくら前時代の遺物だからって、未だに放置し、利用してるんだから」



 自然の大地の中に、カットラインが張り巡らされている。

 ここでは鳥も動物も生きてはいけない。

 マシンさえも活動できない。

 この罠が仕掛けられてから何百年経とうが、死の地であり続けるのだ。



 アビタットのアジトは、奥行きの無い小さな洞窟に床を貼っただけのものだった。

 エネルギーパットを持てるだけ持ち、二人は腰を落ち着けた。

 目の前には美しい景色が広がっていた。

 のどかで、静かだ。

 昆虫の羽音が聞こえた。


 地球上には、かつての文明が残した地下施設が無数にある。

 戦時に使われた地下基地は数多あるし、鉱物の採掘跡や実験施設など。

 さまざまなパイプラインや坑道、実際に人が住んだ地下の街の跡もある。

 アビタットのアジトはそのいずれでもなく、自然にできた洞窟だった。


「ここしか適当な洞穴がなかったんだ」

 草原地帯が森林地帯に変わろうかというところ。

「できるだけロア・サントノーレに近いところに、と思ってたんだけど」

 カイラルーシから数百キロは離れている。

 こんなに遠くまで、アビタットは物資を運んできていたのだ。



「ねえスジー、これからどうする?」

 あの刃を手に入れ、スミソの行方を探す。

 これしかないのだが、泉の水に邪魔されずに手に入れる方法が思い浮かばない。


「あの水、サブリナが浮き上がらせているときは、小波を立ててただけだ」

「うん」

 安直な考えだとは思ったが、それしか手は無いように思った。

「上空に吊り上げることができたら」

「うん」


 しかし、その後、どうする。

 水の上空を離れた途端に、襲ってくる。先ほどと同じことだ。



「さっき使った道具は?」

 空中の剣をアビタットが手元に引き寄せた道具。

「僕の先祖は、日本の忍びっていう特殊部隊なんだ」

 カギ縄というものらしい。


「こいつも進化しててね。自分が何をすべきかわかっていて、投げさえすれば自動で行動する。失敗はしない」

「そういうものか。見せてくれ」



 いつの間にか、アビタットにスジーと呼ばれていた。

 道具を弄んでみたところで、妙案が浮かぶものでもない。

 それでも、心が落ち着くような気がして、スジーウォンは道具を撫で続けた。

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