498 でも、私は自分勝手
「不謹慎よね」
当時、太陽フレアの不穏な動きは目立ったものになっていました。
いよいよだっていう。
世界がこんなになることを頭では分かっていたけど、私、自分の使命を果たすことしか考えていなかった。
「使命って言ったけど、そのときはそう思っていた。今はもう、それが独りよがりだったって、わかる……」
レイチェルがまた顔を伏せた。
フェアリーカラーの長い髪が小さく震えている。
「そうやって、私はタールツーに成りすまし、治安省で執務を始めたんです」
私は、表向きはタールツー。誰にも知られず、入れ替わった。
それは上手くいった。
タールツーの信奉者。
彼らは悪党でも何でもない。
人に奉仕するという出生を否定するのではなく、人として、当たり前にある深い感情を持ちたいと願っている善良な人々。
「でも、私は自分勝手でした」
元々、タールツーの要求は真っ当なことだと思っていましたが、今は時期が悪い。
世界中のホメムがそれを許さない。
そして……。
それが今一度問題化すれば、私の計画に支障が生じるかもしれない。
タールツーの思想が拡大することを、押し留めておきたかった。
ところが、思っていた以上にタールツーの信奉者は多かった。
省全体に、さらに言うと、アンドロの社会にタールツーの思想はかなり浸透していたんです。
放置するには、すでに彼らの組織は大きくなりすぎていました。
組織、というより信奉者の群れ、というべきでしょう。
ゲリラ的な軍事行動を受け持つ部隊まで存在していたのです。
私は、私の計画のために、罪もない彼らを粛正する決断をしました。
しかし、私自身がタールツーを演じることが、足枷でもありました。
彼らをあぶりだそうにも、情報も入ってこない、そんな状態が続きました。
なかなか粛清は進まない。




