41 決めなくちゃいけない?
「どうしようかな……。決めなくちゃいけない?」
アヤは、困った顔をして、ボトルをもてあそんでいる。
アヤにしてみれば、ユウを見つけたことの喜びを、もっとストレートに表したかっただろう。
素直に喜んでいいのだが、そこに少々悩ましい尾ひれがついてきてしまったようなもの。
どこに向かって喜びを向ければいいのか、微妙なことになってしまったのだ。
イコマはユウと、ンドペキはスゥと、それぞれにいわばペアを組んでいる。
イコマとユウは、アギとパリサイド。
異色の組み合わせ。
しかも、いまだにパリサイドは地球人類として認められていない。
ンドペキとスゥは、元はといえば二人ともクローンだが、立派なマトということになっている。
全員がマト同士の家族という意味ではンドペキとスゥを選ぶのが順当かもしれないが……。
はたして。
アヤは、自分の家族としてどちらのペアと人生を共にするのか、という選択に迫られているのだ。
彼女が選択しようとしているのでは全くない。
イコマは、考えに考えた挙句、どちらを家族とするか、よく考えなさいと促したのだった。
ンドペキの意識としても、これからはアヤと一緒に暮らしたいという気持ちが抑えきれないでいる。
きっと、明確にしておいた方がいい、と考えたのだった。
だがそれは、無責任な態度かもしれない。
どちらかをメインの家族とする、なんて易々と決められるものではない。
しかも、決める必要があるかどうかも怪しい。
元はクローンだからと言って、ンドペキやスゥを受け入れられないなんて気持ち、これぽっちもない。
アヤがそう言ってくれたおかげで、ユウは気持ちが楽になったのか、この話題に積極的に入ってこようとしない。
「もちろん、うれしい気持ちが溢れてる」
ただ、もう少し時間が欲しいのだ。
「いいんだよ。今は非常時だし、そのうちに何か思うことがあれば、その時に」
ユウがその言葉を待っていたかのように、口を開いた。
「ノブ、聞いて欲しいことがあるのよ」
と、話を切り上げた。
いつになく、神妙な面持ちである。
「単刀直入に聞くけど、ノブ、体が欲しくない?」
「は?」
「実はね」
と、そのときだった。
ンドペキの意識が急を告げていた。
「無事か! どうした!」
チョットマから連絡が入っていた。
「今、どこにいる!」
私、油断してたんだ、とチョットマは泣きじゃくっていた。
「すぐ行く!」
イコマも、アヤの部屋を飛び出した。