36 相手に対してはもちろん、夜のしじまにさえ
「スジーから、連絡はないか?」
今朝、出立したばかり。
あろうはずがない。
「俺には、どうも信じられないんだがな。地球の破滅なんて」
パキトポークが呟いたが、それはンドペキ自身とて同じこと。
昨夜、ンドペキは、前のめりになるスジーウォンに折れる形で、ロア・サントノーレ行きを指示したのだった。
ハクシュウとの合流が意図されている。
それがスジーウォンを突き動かしたのだろう。
今、コリネルスやロクモンは表情を消している。
パキトポークは天井を睨んで考え込んでいた。
その瞳には、明らかに苛立ちの色がある。
そして、口から漏れた言葉は、くそう。
ふわりと忍び寄ってくるさまざまな記憶。
小さな小さな出来事や些細な言葉の数々。
ンドペキは、心の中に小波が立つのを感じた。
もしや。
スジーウォンはハクシュウに、パキトポークはスジーウォンに……。
それぞれの想いを……。
これまでの平凡な日常では、そんな想いが煮詰まることはなかった。
己の気持ちを投げかけることもなかっただろう。
相手に対してはもちろん、夜のしじまにさえ。
マトやメルキトにとって、人を愛することなど、もうとうの昔に忘れてしまった感情……。
しかし今、死ぬかもしれない、再生されない死が目の前にある、そんな状況になって、どんな感情が頭をもたげてきたとしても不思議はない。
そして、ンドペキ自身がスゥに出会って感じたように、人を愛することの切なさと心地よさを思い出したとしても。
しかも、まさに今、ンドペキとスゥは、誰はばかることなく、愛する者同士として隊員達の前にいる。
そしてレイチェルがサリやチョットマに求めたこと……。
それらが、スジーウォンやパキトポークに何の影響も与えていないはずがなかった。




