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35 よそ者には優しくないらしい

 スジーウォンは、ロア・サントノーレの街の構造を聞いた。


「そうだなあ」

 アビタットは、ハムを頬張りながら、話してくれる。

 特別な形ではないという。

「普通に城壁があって」


 カイラルーシの飛び地だが、地下都市ではない。

「わかりやすいと思うよ。道も建物も整然としてるから。市民も、見た目は普通だしね」

 ただ、連帯感が非常に強くて、よそ者には優しくないらしい。

「なにしろ、田舎だから」

 それなりの武力は保持しているが、もっぱら殺傷兵器から街を守っているだけのものらしい。

「でも、僕も初めて行くんだ!」




 話題が途切れた。

 スミソが口を開いた。

「ジュリエットとセカセッカスキ、どんな関係がある」


 答えは返ってくるまい。

 案の定、サブリナは一言だけ。

「長官付きの飛空艇乗り」

 と、肩をすくめた。

 だったのよ、という言葉を添えて。


 まあ、いい。

 あの一言で、セカセッカスキはオーケーを出したのだから。



 しかし、アビタットが反応した。

「サブリナ、なんでもよく知ってるね!」


 そんなふうに言いながら、目は笑っていない。

 警戒心からではない。

 単に興味から?

 サブリナも首をすくめただけで、話題を繋いでいこうとはしない。

「街の噂」

 そうしておきたいのかもしれない。



 サブリナは特殊な能力を持っているかも。

 スジーウォンは、アビタットがそう言ったことを思い出した。


「いずれにしろ、私は飛空艇に乗りたいだけ」

 飛びさえすればね、と笑う。

「彼の飛空艇なら、ニューキーツであろうが地球の反対側であろうが、雑作ないのよ」


 もう今、サブリナは惰性で喋っているような雰囲気だ。

 それとも、何かを待っているのか、仕掛けようとしているのか。

 彼女の黒い瞳の奥を覗いているだけでは、なにもわからない。

 

「それにしても、驚いた」

 そんな言葉さえ、なんとなく、空々しい。

 場繋ぎの話題が続く。


「というより、やっぱり、と言う方がいいかな」

「なにが?」

「あなた方も、セカセッカスキに頼みに行くんじゃないかなって、予想してたんだけど」


 ならば、自分で頼み行けばよかったのでは。

 今となっては、もうどうでもいいが。


「でも、よかった。あなた方がいてくれて、彼もやっとその気になってくれた」

 反応のしようもなかった。


「なにしろニューキーツは、内戦中でしょ」

 そのため、ニューキーツ行きの定期フライトは、数週間前から運休になっているという。

 到着便は受け入れるが、出発はできない。

 そんな規制がかかっていたらしい。


「そんなところに飛んでくれるのは、彼だけだから。ねえ」

 と、サブリナが身を乗り出した。

「ニューキーツ、どんな様子?」



 話すことはいくらでもあった。

 腹の探り合いのような、それでいて何の意味もないような、気詰まりな空気から解放されて、スジーウォンはつい饒舌になった。

 特に、ンドペキ隊がいかに街の正当な軍であるか、説明に困ることがなかった。

 スミソの視線が、時に少し痛かった。

 スジーウォンは、自分がなぜこうも東部方面攻撃隊のことを話したいのか、その理由はわかっていた。


「ニューキーツか。僕も仕事が済んだら、行ってみようかな」

 アビタットが呟いた。

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