33 私のこと、知ってる?
ヘルシードのひとつ目のお姉さんに、いつから歌を習いに行こうか。
でも、まだ早い。無理無理。
レイチェル騎士団との合流もできていなければ、街を奪還する手立ても見えていない。
小規模な戦闘が続くばかりで、緊張も徐々に緩んできているように思う。
やばいかも。もっとしっかりしなくちゃ。
数日が経った。
セオジュンのことは何ら進展なし。
ニニと会う約束があった。
二人きりで。
どんなふうに切り出せばいいだろう。
以前の私なら、そんなことを前もって考えておくことはなかった。
その場の雰囲気で、あるいは自分の気分で話を進めようとしただろう。
少しは私も成長したのかな、とチョットマはひとり微笑んだ。
「私、チョットマ。覚えてるよね」
こんな言葉で、ニニと話を始めた。
「私のこと、知ってる? 私さ」
レイチェルのクローンであることを告げた。
自分に重みを付けようとしたわけではない。
レイチェルから託された使命も話した。
アンジェリナと同じような立場なんだ、と伝えるために。
アンジェリナがレイチェルから期待されていた任務。
ニニはそれを知っていたのだろうか。
まず、そこから聞いてみたいと思った。
「ふうん、そう……」
ニニはそう言ったきり、口をつぐんだ。
笑えば、きっと誰もが惹き付けられる口元。素直な目鼻立ち。
華奢な身体からは若さがほとばしり、柔らかい、美しい声をしていた。
ただ今日もニニは、どことなくそわそわして、瞳を合わそうとしない。
ニニの部屋はエリアREFの比較的浅い階にあった。
思っていたより広く清潔で、近代的とさえ言えた。
REFでは珍しく綺麗な長方形で、壁も天井もきちんと塗装され、床は板張りで、調度品も整っていた。
チョットマとニニはダイニングテーブルを挟んで、向き合って座っている。
凝った装飾のあるランプが二人を照らしていた。




