ナイア編
ふぇひゅん、ふぇひゅん、
飛んでいく
ふぇひゅん、ふぇひゅん、
回転しながら飛んでいく
種を中心に、細長い翼葉を伸ばして
ふぇひゅん、ふぇひゅん、
馬鹿みたいな音を立てて、
風上に向かって飛んでいく
「これをさ、どーにかして人が乗れるようにしたいんだよなぁ」
樹の枝に座ってナイアが言う。
「乗ってどうすんのよ」
上から声が降って落ちてくる。
「飛ぶんだよ」
「飛べるじゃん」
コノハの足と羽がパタパタ揺れる。
「ちがうんだよー!もっと上に飛ぶんだよ!」
ナイアの足もパタパタ揺れる。
上ってどこに、と聞かれて、星に、と答える。
「無理でしょ」
「なんでさ」
「私にも一個よこせそれを」
コノハが種を勢いよく上に投げる。
ふえひゅん、ふぇひゅん
と登っていく。
ふぇふぇふぇふぇ
と落ちてくる。
目を見開いたナイアの頭を通り過ぎ、ふぇふぇふぇと情けなくと落ちていく。
「この天才発明家が上に飛ぶようにもするんだよ。」
ナイアの言葉も情けなく落ちる
言葉を拾ってコノハが言う。
「あんたが何作ったのよ」
「…昨日は魚料理メシ作ったよ」
ナイアが思い出しながら上を向く。
「天才料理人になるの?」
拗ねたナイアの文句が垂れた。
「天才料理人でもあるんだよ」
「今日はかぜよびの日だよ」
「知ってるよ」
風上に行かないと、とコノハは言う
一人で行ったらいい、とナイアは返す
コノハの姿が水面に映り、
それから音が遠ざかった。
ナイアは背中を丸めたまま、種を投げる。
ふぇひゅん、ふぇひゅん
と飛んでいく
ナイアは後を追いかける。
ふぇひゅん、ふぇひゅん
と飛んでいく
ナイアも一緒に飛んでいく。
広い海の上を飛んでいく、たくさんの樹を飛び越して、種を捕まえながら飛んでいく。
世界の端っこの樹につくと、たくさんの枝にみんなが集まっていた。
ナイアはコノハの背中を見つけて隣に座る。
「この樹はおじいちゃん達が投げたんだって」
コノハは霧の向こうを見ながらナイアに言う。
コノハの腕にも種が沢山捕まっていた。
ごめん、とナイアの口から溢れ出た
いいよ、とコノハは受け取った。
風が通り抜けていく
樹が投げた種が飛んでいく
みんなが投げた種も飛んでいく
二人が投げた種も飛んでいく
ふぇひゅん、ふぇひゅん、
飛んでいく
回転しながら飛んでいく
馬鹿みたいな音を立てて
霧の向こうに飛んでいく




