均される側
白い廊下。
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音がない。
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足音だけが、やけに響く。
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神崎は、何も言わない。
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後ろにいる。
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ついてきている。
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それだけで、十分だった。
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前。
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開けた空間。
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広い。
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天井が高い。
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中央に、椅子が一つ。
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その周りに。
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“見る側”がいる。
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数人。
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全員、同じ顔。
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同じ目。
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無駄がない。
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「被検体C、着席」
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声。
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従う。
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座る。
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抵抗する理由はない。
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今は。
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「観測開始」
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光が、少し強くなる。
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視界が白くなる。
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でも。
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見える。
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分岐が。
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戻っている。
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ここでは。
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見える。
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全部。
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過去も。
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今も。
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少し先も。
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全部。
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「……そういうことか」
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小さく呟く。
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「何が分かった」
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正面の男が聞く。
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あの男じゃない。
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でも。
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同じ側。
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「ここは“外”じゃない」
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視線を上げる。
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「“外に見せてるだけの中”だ」
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沈黙。
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数秒。
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そして。
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「続けろ」
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否定しない。
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それが答え。
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「分岐が見えない場所があった」
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「うん」
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「でもここでは見える」
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「うん」
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「つまり」
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少しだけ、笑う。
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「“見せていい範囲”を変えてるだけだ」
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空気が、少しだけ動く。
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反応。
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正解。
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「お前たちは」
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ゆっくり言う。
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「世界を均してるんじゃない」
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視線を一人一人に向ける。
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「“均されてるように見せてる”」
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沈黙。
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誰も否定しない。
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それで十分。
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「天才が消えるんじゃない」
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続ける。
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「“消えたように見せてる”」
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神崎が、後ろで小さく息を吐く。
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理解した。
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全部。
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「で」
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男が言う。
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「それが分かって、どうする」
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単純な問い。
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でも。
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答えは、もう決まっている。
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「何もしない」
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静かに言う。
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神崎が顔を上げる。
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でも。
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何も言わない。
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「ほう」
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男が、わずかに興味を示す。
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「理由は」
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「無理だから」
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即答。
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感情はない。
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事実だけ。
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「この構造は壊せない」
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分岐を見ている。
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全部。
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壊そうとした未来。
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全部。
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同じ結末。
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排除。
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失敗。
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消去。
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繰り返し。
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例外はない。
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「……なるほど」
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男が小さく頷く。
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「理解しているな」
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「してる」
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短く返す。
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それだけでいい。
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その時。
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分岐が、一つだけ揺れる。
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微かに。
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ほとんど見えない。
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でも。
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確かにある。
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他と違う。
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完全じゃない。
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でも。
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ゼロじゃない。
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「……一つだけあるな」
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小さく呟く。
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男の視線が変わる。
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「何だ」
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答える。
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迷いなく。
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「“中に入る”」
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沈黙。
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数秒。
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それから。
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「どういう意味だ」
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「そのまま」
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視線を合わせる。
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「外から壊せないなら」
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一拍。
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「内側になる」
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静かな声。
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でも。
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確実に。
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届く。
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空気が変わる。
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全員の視線が、集まる。
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評価。
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計算。
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選別。
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全部。
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その中で。
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待つ。
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結果を。
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「……いいだろう」
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男が言う。
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「条件付きで、採用する」
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決まった。
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それでいい。
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それが。
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唯一の分岐。
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「ただし」
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男が続ける。
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「お前はもう、“外”には戻れない」
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「知ってる」
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即答。
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問題ない。
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最初から。
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そのつもりだ。
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「記録を開始する」
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声。
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光が、少し強くなる。
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視界が白くなる。
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でも。
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最後に。
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一つだけ。
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見る。
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神崎。
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目が合う。
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何も言わない。
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でも。
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分かる。
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こいつは。
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ついてくる。
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理由なんてない。
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でも。
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それでいい。
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その瞬間。
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分岐が、完全に消えた。
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何も見えない。
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未来が、ない。
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でも。
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不思議と。
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不安はなかった。
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初めて。
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“選んだ”から。
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全部、自分で。
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「——観測開始」
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その声で。
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全てが、白に塗りつぶされる。
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そして。
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何も分からなくなる。
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ただ一つ。
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分かることがある。
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自分はもう。
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“均される側”じゃない。
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“均す側”に入った。
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それだけ。
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それだけで。
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十分だった。




