閑話カメ馬車の中では……
……あぁ、じっくり時は熟したよ。隙を突かれて不死身の僕が神獣や神竜に致命傷を負わされた事は想定外だったけどね。
君は現実世界でも、見失わず光輝いていた。非常に目障りな光は消さないと僕が輝けない。
だから自ら僕の手で消してあげた。
「……む、ニケ兄が……トゥーリと過去の話をして居る」
耳が良いツバサオオカミビトの魔獣王子が気付いた。
カメは速度を緩めて慎重に進み始める。
「……あっ、本当ですね。……しかもレナ姫の最期の事を……」
次に耳が良いツバサオオカミビトの側近も気付いて落ち込む。
「……レナ姫の最期……」
キツネビトのメイドは、己の主である姫を最後まで守り切る事が出来なかった事を思い出して悲しそうな顔をする。
「我が妹リージュの次に転生した神獣の姫か……」
同行して馬車に乗るジャリュウビトの邪竜王子も目を伏せてしまう。
「……時代は違っても、レナ姫とリージュ姫は同じような運命を辿られた。……何者かの仕業としてしか思えませんね」
同じく同行するジャリュウビトの側近も、悔しそうに拳を握り締める。
「大聖女サイラス、神竜姫リージュ、神獣姫レナ、女帝マテリシア、そして異世界の娘カイミ。……長い期間、我々は大いなる悪意に捕まっていた。もし、全てを仕組んだと言うなら、我々を捕らえていたアイツしか居ない」
邪竜王子は断定して腕を組む。
「あの子が再びアイツに殺されてこの世界に戻ると予言したのも聖王様だ。そんな聖王、魔王、神竜王、神獣王を狂わせて捕らえていた。アイツは一体……」
冷や汗を掻いて魔獣王子は邪竜王子を見詰める。
「……神に等しい我々も歯が立たず敵わなかった化け物だ。その正体はまだ分からん。だが、少なくとも……神に等しき存在だろう」
青ざめた表情のまま、邪竜王子は苦々しく答えた。
「ふふ……」
赤黒い荘厳な教会の中で、一人の美しい青年は赤い蝶に囲まれながら静かに微笑む。
「……あぁ、どうやらローザストはしくじったようだね?……せっかく此処までお膳立てしてやったのに……」
配下である赤い蝶から報告を受け、青年は窓辺に立つとつまらなさそうに目を細めた。
……ふふ、元の世界に帰って僕は再び自分の身体に戻れた。待っていてね?シェレスティアナ、君に最高の絶望をプレゼントしてあげるよ。
赤いワインを片手に、美しい青年は微笑む。




