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剣杖の女帝は転生したらやりたいことをやりたい  作者: 玉白美琴
剣杖の姫の帰還
22/23

エピローグ明かされる一人の姫の最期

「……胸糞悪い話ですわ。まるで……この最期は……」


「あの子にも似ている最期か」


マリアナとセシリアの真ん中には、いつも病弱な優しい姫が居た。

正面に現れたのは、巨大なカメで手足が筋骨粒々で長い。


そんなカメが馬車を引いており、御者をしているのはツバサを持つウサビト。


馬車は黒い木で作られているが、その木材に使われているのはXランクのブラックデーモントレント。


ブラックデーモントレントは、数千年を生きたエンシェントトレントが闇魔法に目覚めた事により、物理は勿論、魔法にも強い耐性を持つ事で知られている。


馬車に施された装飾も高級感があり、見た目は勿論、乗り心地にも問題なさそう。


「……カメ馬車はその昔、神獣王国で広く王族や高位貴族に重宝されていたニャ。……つまり、カメ馬車はステータスでもあり、それだけ王国と密接な関わりを持つニャよ」


ニケは近付いてくる馬車の前に出ると説明する。


「ニケ?いくら同じ時代でも、神獣王国に詳し過ぎじゃないのかキシ?」


「いくら俺達でも、神獣王国の事なんて知らないケビ?」


クラノスとエリスが目を丸くする。


「……神獣王国って?」


気になってラーティスがトゥーリに聞く。


「我が魔獣王国の昔の名です。罪を重ねた事で我々は天から魔へと落ちました」


トゥーリはさらりと笑って答えた。


「僕は……神獣……いや、今は魔獣王国押印継承権一位だった王族の者ニャよ」


キリッとした顔をして、ニケは答えると胸を張る。


「「「……はぁ!?」」」


トゥーリを除いて全員から驚きの声が上がった。


「そっそんなこと今も昔も初めて聞くキシ!!」


「そうだケビ!!何で黙っていたケビ!?」


プンスカとクラノスとエリスが顔を真っ赤にして怒る。


「「「「「うきゃー!!」」」」」


「「「「うきょおー!!」」」」


他のチビエマ士族も怒り心頭で怒る。


「ニャ……ずっと黙っていたのは……」


ニケは言い掛けてトゥーリを見詰めた。


「私があの日、ニケ様に身分を隠すように言ったんです。我を見失い暴れ出した神獣達の間を、自我を失くしつつもギリギリで保っていた私は、幼いニケ様や、傷付いた各国の王子や姫達を神獣王国から逃がすのに必死でした」


トゥーリは当時を思い出して悲しそうな表情になる。


「各国の国王達を殺害した神獣王国は、必ず大きな憎しみを生んで国々と戦争になる。トゥーリは……僕や父上達が作ったケモ商業中立国を火種に巻き込みたくなかった。翼を持たないケモビトがやっと手に入れた自由の国だから……絶対に神獣王国との関わりを知られては行けないと……そう言われたニャ」


ニケも辛そうな顔をして答えた。


「……じゃあ……僕達が……幼い頃に逃がしてくれたのは……」


「……貴方が……?」


クラノスとエリスはトゥーリを見詰め、他のチビエマ士族も困惑する。


思い出せるのは、年に一度開かれる神獣王国建国祭。


各国の王族や貴族が集まり盛大に祝われるべき祭りは……最初に狂った神獣国王が目の前で旧知の仲であるクラノスとエリスの父達を殺害した瞬間から阿鼻叫喚の地獄へと変わった。


神獣達が各国の国王達に牙を剥く中、一匹の美しい白銀の翼犬が左目を同僚の翼熊に爪で抉られ傷を負っても、ニケやクラノス達幼い子達を背に乗せて逃がしてくれた事。


「あの日、姫が自ら暴れる神獣達を結界で閉じ込めて下さったので私は何とかニケ様や貴方達を狂う前に逃すことが出来たのです」


「今でもあの日のレナの声が残ってるニャ」


トゥーリとニケは悲しそうに微笑む。


……レナ姫……。


クラノスとエリスもあの日の事を思い出す。


『トゥーリ!!貴方は此処から彼等を連れて逃げなさい!!他の皆をこのまま私が閉じ込めて置くわ!!』


『しかし……レナ姫様っ!!貴女様の御身が!!』


『私は最後まで王族としての責務を果たします!!ニケ兄様と皆をお願い!!』


『嫌だ!!逃げるならレナも一緒に!!』


ニケは焔に包まれた王城の中、トゥーリの背中から手を伸ばす。


『君も逃げないと喰い殺されてしまうよ!!』


『早く私達と共に!!』


トゥーリの背中からクラノスとエリスも手を伸ばすが……。


『クラノス王子、エリス王子、それにニケ兄様。私一人が生き残ったとして、貴方達十二ヶ国が私を許さないでしょう。この狂った神獣王国最後の王族として、せめて貴方達が逃げるまでの時間を稼ぎます』


自分達より年下で、まだ七歳のレナは堂々とし、王族として誇りを持って居た。


『行って!!』


結界に閉じ込められた黄金の毛並みを持つ翼狐の神獣が激しく暴れまわり、遂に結界に亀裂が走る。


レナは切羽詰まった表情で力強く叫んだ。


『っ!!』


トゥーリは悔しそうに顔を歪ませると、四肢に身体強化魔法を掛け、レナに背を向けると、崩れた王城の中を走り出した。


『レナぁっ!!』


『嫌だっ!!』


『戻ってくれ!!』


ニケ、クラノス、エリスは必死に叫ぶ。


遠ざかる三人の目の前で、結界を破壊した翼狐がその牙でレナの身体を貫く光景が映る。


『レナ……嫌だ……うわぁあぁあぁ!!』


ニケの絶叫が響き渡り、後の事は覚えていない。


「気付いたらケモ商業中立国のネコビト村に皆と一緒に倒れていたニャ」


ニケは下に俯いて言うと、トゥーリに視線を再び向ける。


「あとはクラノスとエリス達の知っている通り、神獣王国は狂ったまま十二ヶ国と長きに渡る戦争を起こし、その結果……神獣王国と十二ヶ国は滅びました」


トゥーリは淡々と、紛れもない事実を話す。


「……一つ聞きたい。君や君達魔獣王国は今でも狂って居るのか?」


ロイスは真剣な表情でトゥーリに問い掛ける。


「今は狂気化から解放されています。今現在は自分の意志で動けていますよ」


苦笑してトゥーリはロイスに答えた。


「……待てよ。ニケも王族で……シェレスティアナの空間に干渉したって事は……トゥーリがニケ達を逃がした時に犠牲になったレナ姫がシェレスティアナの前世って事か?」


気付いてカインは表情を強張らせる。


「……えぇ、そうです。シェレスティアナ姫は……レナ姫の転生体ですよ」


トゥーリの声が静かに響き渡り、皆はそれぞれ真実を受け止める。


「……姫……」


ハルヒは穏やかに眠って居るシェレスティアナをそっと抱き締める。


ゆっくりと近付いてきたカメ馬車は皆の前に立ち止まると、そのカメの顔も何故か強張って緊張していた。


「……カメ馬車来ましたわね」


「そうだな」


二人は目を細め異空間から見ていた。

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