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剣杖の女帝は転生したらやりたいことをやりたい  作者: 玉白美琴
剣杖の姫の帰還
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チビエマじゃんけんと、それぞれの想い

「良いな。僕達も早く出たいね」


「チビエマばかりしかいなくなりますわ」


「おや、なんか出てきたぞ?」


三人は異空間から様子を見る。

「それでは……魔力領域を解除しますね」


「せーので行くぜ!!」


トゥーリとラーティスは顔を見合わせると、同時に魔力領域を解除した。


ぽぽぽんっと、ロイスやカイン達もチビエマ士族へと戻る。


シェレスティアナは、ノヴァと慌て駆け付けたハルヒによって支えられ無事だった。


「おい、ニケ……それに紅華。どういう事か聞かせて貰えるか?」


「……場合によっては……許さんエンジェ!!」


ずずいっとカインとロイスは詰め寄る。


「私は知らないギャル!!初代様がやっていたから真似しただけですギャル!!」


紅華は目を涙でうるうるにさせ、必死に首を振って答える。


「……すみませんニャ!!今は……まだ何も言えないニャ!!」


ニケはスライディング土下座をして謝った。


「紅華は良いとして、ニケは何なんだよ!?」


「言えないってどゆこと!?」


更にカインとロイスはニケに詰め寄り、チビエマなのに凶悪な顔をして凄む。


「ニャ~!?おっ御許しを!!」


ニケは怯えて尻尾を丸める。


「カイン様、ロイス様。ニケ様に聞かれ無くても道中私が御説明しますよ。一気には無理ですが少しずつね」


苦笑してトゥーリがニケに助け船を出して二人に話を振る。


「……君が話すなら仕方無いね」


「……ちっ!!」


ロイスは肩を竦め、カインは悔しそうに舌打ちした。


「トゥーリ……良いのか?」


「えぇ、構いませんよ。どうせ話すしか無かったのですから……」


不安になってラーティスが聞くと、トゥーリは苦笑して答えた。


「……それはそうと、もうすぐ迎えの亀馬車が来ます。……此処に一つ、魔力補充魔道具があります。誰か一人、チビエマの姿から人間の姿に戻ることが出来ますが、一人にしか無理ですので仲良くじゃんけんして交換してくださいね」


ニッコリ笑ってトゥーリは異空間から一人用の指輪型魔道具を取り出すと、チビエマ士族達を見回して言う。


その瞬間、二十四匹のチビエマ士族の目が光った。


「……此処は唯一の女性……私に譲れブビ!!」


小さなヌンチャクを構えると、ブビトのアーシャが叫ぶ。


「……ふざけんな!!俺も人間になりたいチカ!!」


チカビトのレオも、サングラスを掛けてビシッと指差す。


「……人間になりたいのは同じカゲ」


カゲビトのトワは目を細めた。


「僕も譲れないね?チビエマだと小さいし?」


ウタビトのカンナも力強く頷く。


「……海に帰りたいシー」


人魚のようなシー族のラナーシャも目に力を入れる。


「……皆、凄い気合いキシ……だが、僕も!!」


気圧されそうになるが、キシビトのクラノスも負けじと諦めない。


「……私も人間に戻りたいケビ!!」


杖を構えてケビトのエリスも叫ぶ。


「こっちも同じニャン!!チビエマでは目標が低くて不便ニャ!!」


眼鏡を掛け、ネコミミと尻尾を逆立てたニケも文句を言った。


「私も!!やっぱドラゴンは大きく無いと格好付かないし!!」


翼を拡げてリュウビトの紅華も割り込む。


「えー、僕?まぁ、元の姿じゃないと虫を消せないし?」


メツビトのリーゼロッテがきょるんと笑って言った。


「くふふ、流石に人間の姿が欲しいですヴァビ」


ヴァビトのシュナイゼルはピエロのような仮面を付ける。


「ツバサビトは自由を求めるツバ!!だから私も人間の姿欲しいツバよ!!」


ツバサビトのミヤネも、扇を構えるとキリッとした顔をした。


「ふっ!!小僧に小娘が!!調子に乗るなエンジェ!!」


ふんぞり返って腕を組むのはディーヴァ。


「いや、別に一時的に戻れたから拘り無いエンジェ」


そんなディーヴァを宥めるフレイ。


「作り方さえ分かれば作れるエーンジェ」


ミルフィーユはピョンピョン跳ねる。


「姫様を御守りする為に人間の姿は必要エンジェ!!」


ノヴァと一緒にシェレスティアナを結界に包むと、ハルヒは力強く言う。


「姫の騎士なら人間の姿で守りたいダテン!!」


ノヴァも力説して拳を握る。


「ズルいエンジェ!!私も姫の騎士エンジェ!!同じエンジェ!!」


地団駄を踏んで拳を何度も振り降ろすマノ。


「ふふふ、人間の姿になるのは僕に決まっているエンジェ!!」


悪役顔負けの顔で笑っているのはロイス。


「ふざけんじゃねぇ!!チビエマの姿で居られるかよダテン!!」


凄まじい形相で叫ぶのはカイン。


「……じゃんけんは運ですダテン」


呆れた顔をするルエド。


「一か八か、運に全ての力を賭けてやるヴァビ!!そして姫の御世話をするヴァビ!!」


血走った目でジェラルドは両手に力を込める。


「……物理で反則は許さんダテン!!」


キラリと目を光らせるクロード。


「……えー、平和的じゃ駄目ダテン?」


周りを見て慌てるのはラキ。


「では、お願いします」


「チビエマじゃんけん……」


「じゃんけんぽん!!」


トゥーリの合図に、十二匹ずつに別れてじゃんけんするチビエマ士族。


その結果……。


クラノス&レオ。


ロイス&ハルヒ。


カイン&ルエド。


リーゼロッテ&エリス。


八匹のチビエマ士族は、闘気を拳に込めて全集中する。


「チビエマじゃんけん……」


「じゃんけんぽん!!」


ロイスはパー。


カインもパー。


ルエドもパー。


リーゼロッテもパー。


クラノスもパー。


エリスもパー。


ハルヒはチョキ。


レオもチョキ。


「のぉ~!?」


「くそっ!!」


「僕が負けるなんて……」


「運ですしね……」


「人間のチャンスが!!」


「くっ……無念……」


負けた六匹は絶望に打ちひしがれる。


「ハルヒ様、勝っても負けても恨みっこなしチカ!!」


「望む所だエンジェ!!来い!!レオ!!」


闘志を宿すレオとハルヒ。


「チビエマじゃんけん……」


「じゃんけんぽん!!」


レオはグー。


ハルヒはパー。


「負けた……負けちまった……」


真っ白になるレオ。


「勝ったエンジェ!!わーい!!わーい!!」


全力で喜びを現すハルヒだった。


「では、ハルヒ殿。此方を……」


「ありがとうエンジェ!!」


トゥーリから指輪を貰ってハルヒは小さな手で受け取った。


その瞬間、ハルヒの身体は白い光に包まれ、その姿は人間の姿へと変わる。


銀色の髪で後ろ髪が腰まで長く、程好く鍛えた体つき、端正な顔立ちの青年に変わった。


「うきゃー!?」


「騒ぐほどメツ?女は面倒メツな?」


びっくりしてアーシャが叫び、リーゼロッテがアーシャの目を隠す。


「おっと失礼。レディも居るならはしたないな」


苦笑して青年は異空間から自分の服を取り出して着る。


白い袖の無い聖衣を着ると、そそくさと下着と白いズボンを着て茶色のブーツを履く。


邪魔な髪をゴムで一つに結わえ、両耳に金色の輪の大きなイヤリングを付けると、両手に聖魔力を込めたガントレットをはめた。


ハルヒ・ネティブ・エンジェビト。

回復専門の聖魔術士。闘術の達人でもあり、大聖女サイラス付き侍従長。


きちんと指輪を右手の中指に填めて外れないか確認した。


「ハルヒー!!その魔導具調べさせろエンジェ!!」


大ジャンプしてミルフィーユがハルヒの右肩に飛び乗る。


「解析しますダテン」


クロードはハルヒの右手全体に魔法陣を展開する。


「負けても研究は惜しまないチカ!!」


レオは錬成魔法で指輪全体を読み取って行く。


「魔導具の素材から調べるニャ!!」


ニケもハルヒの右腕に飛び付くと、虫眼鏡でじっーと見る。


「別に良いけど壊すなよ?」 


思わずハルヒは苦笑した。


「……ダテン!!」


「エンジェ!!」


いじけたカインとロイスが小石を蹴る。


「……キシ……」


「ケビ……」


クラノスとエリスはトゥーリを見詰めていた。


「貴方達の言いたいことは分かります。ですが、今は貴方達の敵ではありません」


トゥーリは二人と同じ目線になって中腰になると苦笑した。


「……それでも僕達の因縁は変わらないキシ!!」


ビシッとクラノスはトゥーリを指差す。


「……貴様達が我が父達や私達の十二の国々に戦争を仕掛け、多くの血と命が流れ失った事は事実ケビ!!決して情に現を抜かすことなどない!!」


エリスも目を細めてトゥーリに言い切った。


「そうですね。……それは決して消えることの無い私達魔獣王国の罪、貴方達に恨まれるのは当然ですよ」


二人に言われ、トゥーリは悲し気な表情で答える。


……それなのに何故キシ?


……悲しそうな顔をするケビか?


訳が分からず、クラノスとエリスは思わず顔を見合わせるのだった。


「…………」


ラーティスは三人の話を心配した顔をして聞いていると


「いでっ!!」


後頭部に凄まじい衝撃が走り目を丸くする。


「なっ……!?」  


痛みと怒りで涙目になりながら振り返ると、後ろにはシェレスティアナを結界に包んだまま片手で抱っこするハルヒの姿があった。


「何辛気臭い顔をしてんだよ?バァカ。俺達の間にもお前や俺達の母校との因縁があるんだからな?」


呆れた顔をするとハルヒは目を細める。


「……分かっているぜ。そんなこと……」


今でも消えない罪の記憶にラーティスは眉を寄せると、ハルヒから顔を背けた。


「……お前達や、俺達の母国に何があったか何て分からない。だけど、きっと何かがあったんだと俺は思って居る。……だから、母国に着いたらきっちり教えろよ?」


「……ハルヒ……」


ハルヒの言葉を聞いて、ラーティスは目を潤ませる。


ハルヒとは元々親しかったから、友としてもラーティスは嬉しかった。


例え罪を犯していたとしても、その真実を話せるなら、これ以上の事を求めないとラーティスは心に誓う。


それぞれの想いを胸に馬車を待っていると、やがて馬車は大きな音を立ててやって来た。


「……なんじゃこりゃダテン!?」


「でかいカメエンジェ!!」


思わず叫ぶカインとロイス。


「このくらい僕達の時代では普通キシ」


「ケビケビ。高級馬車はカメ馬車ケビ」


クラノスとエリスは頷く。


果たしてその馬車とは!?

「何あれ?」


「私達の時代にはありませんわ?」


「珍妙だが面白いな?ふむふむ……」


三人が異空間から見詰める先には……



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