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あれ? 俺……詰んでね?  作者: Aion
天に唾吐く愚か者……編
9/41

人生って予想外の連続だよなっていう話。 ②

次は10/6の午後五時です。


 移動しているうちに、気分がよくなってきた。


 とりあえず、起きてしまったことは、どうしようもないから放課後の自分へ丸投げしよう!

 頑張れ! 未来の俺!


 


 生徒会室の前に着く。

コンコン「今朝呼ばれた、一年十組の来栖明人です。若宮生徒会長はいらっしゃいますか?」

「入っていいぞ」


 若宮会長の声らしき、ハスキーボイスが聞こえてくる。


「失礼します。若宮会長! 遅れて、すみません!」


 室内に入ると同時にそう叫び、頭を下げる。


「いや、香奈に呼ばれてたんだろう。気にしなくていい。私も時間は指定していなかったしな」


 許されたのに、この頭越しに感じる圧はなんなのだろうか?


 そうはいっても、いつまでも頭を下げておくわけにもいかないので頭を上げる。


 すると、生徒会室という言葉を聞いて思い浮かべそうな格式高い感じの部屋が見えた。

 左側にはタンスなどが並び、その中や上には様々なトロフィーや賞状が見える。


 歴代の生徒会役員関連だけでこの量だから、学校全体だとどれだけあるんだろう?


 右側には窓があり、そこから少し離れてソファと机が並んでいる。


 中央にはドラマなどの社長が座ってそうな、立派な黒塗りの執務机があった。

 机の上には、これも同じくドラマで見たことあるような三角形の机上札がある。 


 うわっ、高そう。

 これを買った代の生徒会、よく予算下りたな。


 若宮会長は、その執務机の向こうで椅子に座っていた。

 なぜか、俺のことをにらんでいる。


「単刀直入に聞くが、君はあの事をどこで知った!」


 あのこと?


「あの、何の話ですか? 心当たりがないんですけど……」

「そんなはずはない! もしや、私にあの事を自分で言わせて辱めるつもりか……! 何と卑劣な!」


 ぼろくそに言うじゃん……。

 これに関しては本当に心当たりないのだが。


「いいだろう。君の思惑に乗ってやろうじゃないか……。あ、あの事とはだな……そのう……私が可愛いものが大好きで! 密かに収集していることだ! お爺様にも隠し通していたのに……君はどこで知ったんだ!」


 ええ……。

 うそのつもりで言った告白の話また本当だったのか!?

 どうしよう?

 この剣幕だし『わざと振られるために適当なこと言ったら、偶然当たってました』なんて言っても信じてもらえなそうなんだが。

 でもまあ、いうだけ言ってみるか……。


「実はですね、その告白は嘘だったんですよ。罰ゲームで、告白することになったんですけど振られるために、わざと適当なことを言ったら偶々当たってたんです」

「そんなウソを言って! 高校生にもなって、そんなくだらない遊びをするやつがいるか!」


 目の前にいるんですけど……。

 しかも、提案したの俺なんですけど……。


「分かったぞ! 君は私と付き合うだけでなく、私に弁当を作って来いと、そういうんだな?」


 いえ、一言も言ってませんけど。


「くっ、仕方ない。念のために君に渡す分を作っておいてよかった……」


 そういうと、若宮生徒会長は水色の布で包まれた弁当を渡してくる。

 

 こいつ、人の話聞かないタイプか?

 しかも、何で準備してきてるんだよ。


「あのですね……。さっきの話は本当なんですけど……」

「私は騙されないぞ! ここでその話を信じたら、それを盾にもっと凄い要求をするつもりなんだろう!」


 もういいや。

 この思い込みをどうにかしてまで、誤解を解くのはめんどくさい。

 ちゃんと真実は言ったし、信じなかった方が悪いということで、ありがたく弁当はもらいましょう。

 男子高校生の胃袋は弁当2つまでなら余裕で入るしな。


 目の前に差し出されていた弁当を受け取る。

 教室を出るとき、なんとなく鞄を持ってきておいてよかった。

 さすがに、男が持ってるにはいささか可愛すぎる見た目の弁当が2つもあったら、怪しいからな。

 ……どうせだし、さっき言われたことの意趣返しでもするか。


「分かりました。ありがとうございます、詩織先輩」

「な、な………そ、それを受け取ったら早く出て行ってくれ! く、くれぐれも、あの事は内密にな! 後輩君!」


 怒っているのか、顔が赤くなった詩織先輩に生徒会室から追い出される。

 背後で、音が鳴るほど強く扉が閉められる。

 

 よし! 仕返し成功。

 怒らせてやったぜ。

 脅して、付き合うように仕向けた相手に、名前を呼ばれるなんて屈辱だろうからな。

 用事も終わったし、教室に戻るか。


 時計を確認すると十二時四十五分だった。


 やべっ、あと十五分しかない!


 急いで、教室まで走る。

 

「君、廊下は歩きなさい!」


 その途中、女性の先生とすれ違った際に、そう注意されたので早歩きで教室に向かう。


 くっ、時間大丈夫か?




 大丈夫でした。


 教室に戻ると、龍次たちは俺の机の近くに集まってはいるが、まだ弁当を食べていない様子だった。

 

 ん? なんで月島はあそこにいるんだ?


 月島は、いつも通りといった様子だが、龍次たち、特に国男が居心地悪そうにしていた。

 俺が席に着くと、鞄から何かを取り出す様子を見せる。


 いやな予感がする……。

 もしかして、月島も弁当を作ってきたのか……?

 自分の分も入れると四つ、さすがに食い切れるか大分不安だぞ……。


「はい、これ。秋人くんのためにつくったの」

 

 案の定、月島が取り出したのはピンク色の布に包まれた弁当だった。

 

 全員、布の色違うのな。


 そんなどうでもいいことを考えながら、弁当を受け取る。

 時間は大丈夫かと時計を見ると、あと十五分はある。


 どうせだし、龍次たちに事情を話すのもいいかもな。

 今の状況をどうすればいいか、いい意見が出るかもしれない。

  

「なあ、ちょっとさ。弁当、屋上で食わないか?」

「ん? ああ、俺は別に構わないが……」

「吾輩も大丈夫ですぞ」

「屋上……ってことは、僕の出番だね」


 屋上の鍵は四つあり、職員室にある一つ以外は各学年の主席が管理することになっている。

 これもまた、過去の生徒会が決めた謎の校則だ。




 屋上について、弁当を広げると龍次が口を開く。


「いつもは、教室で食ってるのに今日は何で屋上で食おうなんて言い出したんだ? ……何かあったのか?」


 俺は、鞄から詩織先輩と香奈先輩に貰った弁当を取り出す。

 さらに、自分で作った弁当も取り出す。

 これで、俺の前には計四つもの弁当が並ぶことになった。


「これは……さすがに多いんじゃねえの?」

「来栖氏! デュフフ、意外とかわいい弁当包みを使っているのですな」

「いや……これは? ……今朝の話を鑑みると……まさか!」


 文人はどういうことか分かったみたいだ。

 すごいな………。

 俺が同じ立場なら、絶対にわからないぞ。


「文人、お前わかったのか?」

「わかったなら、吾輩たちにも教えてほしいですぞ!」


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