牙の爪と雷の光
リオの挑発に、深緋は先程までの余裕が嘘のように動揺した。彼にとっての御空は、それほどまでに強い感情を持つ相手らしい。
「あんたと御空、何か関係あるんだ?」
「うるさい……。黙れっ!」
ぶぉんと大きな音をたてて、大太刀が空を斬り裂く。深緋は動揺しているにも関わらず、その精度も攻撃力もほとんど落ちていない。
かなりの訓練を積んでいる証拠だ。
気がつけばリオは、木の多い場所に追い詰められている。ここでは翼が使いにくい。どこまで意識しているのかはわからないが、これでは深緋が有利だ。
「おくのて……だっけ。使うなら今だよね」
誰にともなく呟き、リオはナイフで手首を切った。真っ赤な血がこぼれる。
そのことを意識すれば、赤は重力に逆らい、両手の先で鋭い牙にも似た爪に形を変えた。
「やられてばっかりじゃない……よ!」
前方へ大きく飛び、右の爪が深緋を狙う。それがかわされれば、その勢いと遠心力を使って回し蹴りを繰り出す。
リオの攻撃は、まったく深緋には当たらない。それどころか、かすりもしなかった。しかも、深緋はそれを最低限の動作でやってのけた。
リオでは、深緋を倒せない。
「つ……っ!」
体格差もあり、深緋の攻撃が当たればリオはなすすべなく弾き飛ばされた。リオの身体は切り傷ばかりでなく、擦り傷なども数多くできていた。
「……う」
力が入らない。早くも立ち上がることすらできなくなっていた。
これが、鬼一族精鋭部隊の大将の実力だ。
「ここまでか?」
「そうなんじゃない。……弱くないつもりだったんだけどなぁ」
「お前は強かった。それなりにだがな。私はさらに強い。それだけだ」
「そうだね。わたし一人じゃ、あんたには勝てない」
リオは不敵に笑い、深緋を見上げた。
「一人、だったらね」
まるでその言葉が合図だったかのように、バチンと激しい光がリオたちの後方で生まれた。
「紫電雷撃波!」




