1–8:いい人そうだ
1月5日:改稿
話が終わったのだろう、扉が開き、中からガウェインが出てきた。
「すまないな、話が長くなってしまった。すぐに見張りを寄越すから、もう少し待っててくれ」
先ほどは話がどんどんと進んでいって、話についていこうと必死で気付くことがなく、彼のことは鎧を身に纏っているというイメージしかなかったが、目の前まで来られると背丈がとても高い。頭一つ分も違い、上からの威圧感がすごい。
「ああ、は、はい!全然大丈夫です」
威圧感に緊張してか、語尾が上擦ってしまった。そのことに気づくが時すでに遅し。
「どうしたのよ、拓真。もしかしてガウェインにビビってるの!」
笑いを堪えるようにしてこちらを見るや、とても楽しそうにしている。
(そこまで笑わなくてもいいだろ〜)
恥ずかしい。確かに僕はビビっている。体格に加え、鎧まで着ているのだから、より大きく見える。さらに、その厳つい顔と額に剣で付けられたであろう傷があるせいで余計に怖い。その傷は目の辺りまできている。
「そうなのか、少年? 俺が怖いか? 男のくせして、もっと強くなれ〜」
僕の頭をゴツゴツした手で撫で、笑っている。
これも全部マリーのせいだ、マリーが余計なことを言うから。普段だとこんな事で言い返したりはしないのだが、マリーがいるせいだろうか、それにバカにされるのが嫌だった。
「う、うるさい。ビビってねえし。む、武者震いだし!」
漫画だろうか、どこかで聞いたことのあるセリフを言ってみた。もちろん、意味はよく知らない。だが、こんな場面で使われていたような気がした。
「いや、ここで使う言葉じゃないし。そもそも体、震えてないじゃない。もしかして拓真って、バカなんじゃないの?」
バカという言葉にガウェインもそうなのかと理解したかのように頷いている。
言い返すのは失敗だったか……それより余計にバカにされる事になってしまった。
確かに長い間眠っていたので、学校に行っていないから知らないことばかりだ。しかし、それは仕方のないことだと思う。この事態は避けようがなかった。これから勉強すればいいことだ。それに物覚えは悪くないと自負している。これから頑張ればいい。
僕は彼女の問いを上手い具合にかわして、話題を変えることにした。
「いや、そんなことより早く見張りを寄越してくださいよ。じゃないとここから動けないんですから」
お世話になる身として上からの物言いだったが、二人揃って馬鹿にしたお返しだ、そう思うことにした。
「おおっと、すまんすまん。そうだったな。すっかり忘れて、談笑してしまった。それでは、また後ほどに」
そうして、鎧の擦れる音を響かせながら足早に階段を降りて行ってしまった。
先ほどまで僕がここでお世話になるのに反対している様子だったのにどこか掴めない人だ。しかし、なんだかんだでガウェインさんと少しだがだが話してみて、見た目とは裏腹に良い人そうな印象を持った。人は見かけにはよらないものだと、一人椅子に座り納得していた。
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