1–18:様々な理由
「ここにしよう」
広い食堂で僕たちは隅っこの方で落ち着くことにした。
今日の朝食はトーストにベーコンエッグ、サラダという一般的な朝食だ。厨房から皿にのって出てくる料理を自分の持つトレーにのせて、席まで持っていく。まあ、バイキングみたいな形式だ。
良い具合に焦げ目の付いたトーストにちょうど良い感じにとろけそうな目玉焼き、いい匂いを放つベーコン。どれもとても美味しそうで、僕の空腹の胃袋は鳴いていた。
「じゃあ、食べようか、熱々のうちに……いただきます!」
「い、いただきます!」
僕はナイフとフォークを使い、食べ始めた。
(うーん、美味しい〜)
見た目通り、とても美味しく、僕の胃袋はその味に満足したのか、静かに鳴り止んだ。
「美味しいだろ。ここの料理人は最高に腕が良いからな…………ふぁ〜うまい……」
彼は僕とは違い、ナイフとフォークを使わず、トーストにベーコンエッグを上手い具合にのせて、豪快に口へと運んでいる。今にもこぼれ落ちそうだ。
それを見て、僕も真似しようと思ったが、何しろお腹が減っており、ものすごい早さで食べていた為、ほとんど食べ終えていたのでまたの機会にすることにした。
「ところで、さっきの続きだけど国王様に下僕として働けって言われたんだろう……それが条件だって。なりたくてなったわけじゃないなら嫌じゃないのか?」
「まあ、この選択しかなかったっていうのもあるけど……実際、この仕事は楽しみでもあります。色んなことを知るキッカケにもなると思うし…………だから、これから色々と教えてくださいね、カルファさん!」
「ああ、任せとけ。教えるのは得意なんだ。ただ、優しくするとは限らんがな」
「はい! お願いします! それで……僕のことは大体話したんで次はカルファさんのこと聞いてもいいですか?」
食堂にいた大勢の人達は少しずつではあるが朝食を食べ終え、外へと散っている。僕とカルファさんも食べ終わっているのだが、少しゆっくりしてから行くことになった。
「いいぞ。なんでも聞いてもらって構わん」
「じゃあ……カルファさんはどうしてここで働いているんですか?」
「そうだな……、昔からこの城の下僕に憧れてて、18歳の時に採用試験を受けて、無事合格して下僕に。まあ、そんな感じだ。ざっくりしすぎてるか……」
憧れて、試験まで受けて、やっとのことでこの城で働いている。そんなことを聞いて、こんな自分が同じ下僕として働いていいのだろうか? それに僕は試験とやらは受けていない。それで下僕として働いていいのだろうか。そのぶん、なりたかった人を採用した方がいいのではないか、そんな考えが頭に浮かぶ。
「僕はその試験っていうのは受けてないけど大丈夫なんでしょうか?」
国王から下僕として働け、そう言われたのだが、心配になって確かめていた。
「まあ、大丈夫だろ。お前みたいなのはたまにいるんだ。急に使用人として働くことになる奴が……だから気にすることないって。試験って言っても俺みたいになりたい奴だけとは限らない、賃金が良いからって奴もいるからな。それに家系的にこの城で働くのが決まってる奴だっている。色々な奴がこの城で働いてるってことだ、使用人に限らずな……」
カルファさんはどこか哀しみを浮かべた表情をしている気がした。どこか遠くを見るように。
しかし、それは一瞬のことで、気持ちを切り替えるようにして、彼は食べ終えた食器がのったトレーを手に持ち、立ち上がった。僕はその一瞬を見逃さなかったが、見なかったことにして、その事には触れなかった。
食べ終えた食器をカウンターに返し、近くにあった時計を見ると、時間は七時四十五分を過ぎたあたりだった。僕たちはもう一度カルファさんの部屋に戻る事になった。そこで少し説明してから仕事を始めるとのことだった。
食堂の時のこともあり、帰りの道中は特に会話は無かった。
そういえば、ヒルデは朝食を食べていたのだろうか、僕が食べている間は近くにいなかったような気がするけど。まあ、食べるのに集中し過ぎていただけかもしれないけど……。
それでも、気づくとヒルデは後ろにいたので特に気にすることなくカルファさんと会話していたのだが……。
気になってヒルデに聞いたところ、「大丈夫です」その一言だけが返ってきた。
(本当、いつ食べてるんだろう? まさか食べてないなんてことはないよな・・・?)
まあ、ありえない話だが、ほんと不思議なことだ。
お読み頂き、ありがとうございました。




