番外編:memory
昔のことを思い出した。
「ねぇたま?ぼく、大きくなったらねぇたまと結婚する!!」
「まあ本当?嬉しいわ。でも、私でいいの?パレット姉さんじゃなくて?」
「パレットねぇたまよりもマリィねぇたまの方がいい!!可愛いし、ぼくを怒らないもん。」
「フフフ…まあ。」
俺、ゼリルはマリィ姉さんのことが大好きだった。
勿論、姉弟の意味を超えて。
マリィ姉さんが俺に気がないことなんて、最初から分かっていた。
だから俺は、せめてマリィ姉さんが幸せになるまでは守ろうと心に決めていた。
マリィ姉さんがいなくなって、俺は本当に生きる意味を失った。
毎日ただ息を吸って吐いての虚ろに生きている日々、そんなときに励ましてくれたのがパレット姉さんだった。
俺は何とか気を持ち直して、マリィ姉さんのいない虚ろな日々を怠惰に生きることをやめ、普通の王族として生き始めた。
そんな矢先に父から王として国を任せると言われた。
「父上、お言葉ですが俺にはできません。何故ならば俺は…」
父は最後まで言わなくとも全てわかっていたように頷いた。
確認だったのだと思う。
多分マリィ姉さん以外のすべての人々は分かっていたのだと思う。
俺がマリィ姉さんを今も思っていて、姉さん以外を愛せない、ということを。
それはつまり、妻を取ったとしても愛せないということ。
父はパレット姉さんの夫に国を任せて第一線から退いた。
それから俺はただ仕事をして寝るだけの生活をした。
こんな俺に構ってくるのはパレット夫妻くらいだった。
パレット姉さんと姉さんの夫と俺はマリィ姉さんが居なくなった後も仲が良かった。
姉さんと義兄さんの性格が明るいのもあって、なんやかんやで面白かった。
マリィ姉さんが居なくなってから60年が経ち、俺はジジイになり仕事もやめ、パレット姉さんもババアになったある日、綺麗なままのマリィ姉さんが俺たちに会いに来た。
一瞬夢かと疑った。
けれど夢じゃないと分かると年甲斐もなく心臓が高鳴った。
それから何度も俺たちを訪ねに来てくれた。
その時にいつも一緒に現れる男と笑いながら入ってくるところを見て、俺の役目は終わったのだと思った。
俺の役目は終わり、俺の恋も終わったのだと感じた。
それから4年後、マリィ姉さんは結婚した。
マリィ姉さんの幸せそうな顔を見ると俺も幸せな気分になった。
俺の人生が悲しいモノだったとは思わない。
姉さん二人は優しかったし、パレット姉さん夫妻にもよく笑わせてもらった。
それに、マリィ姉さんが幸せになるまでを見届けられたのだから。
俺は満足だ。
「ゼリル!!どこ行ってたのよ!!こっちよ!!」
遠くで美しいパレット姉さんが呼んでいる。
その隣にはカッコいいパレット姉さんの夫も居る。
うん、直ぐに行くよ。
そう呟いたゼリルは小川を軽々飛び越え、パレットたちの元へ駆け寄る。
国には弔いの鐘が鳴り響いた。




