――――の出来事
※前提事項※
この肉体は自分が生きている限りずっと一緒に過ごす相棒のようなもの。欠けることがあっても、失うことがあっても、その在り方が変わるなんてあるわけない。
その考えは間違っていない。否定する要素がないから。事実しか言っていないから。
でも、この世界では違う。宇宙にある銀河系の、太陽系の、水と空気が豊富な地球という惑星。
性別が変わることが「無」ではない世界。そんな世界で過ごす一人の日本人の物語。
「明日、皆で一緒に学校に来ようぜ!!」
修了式を終え、通知表を受け取り帰ろうとしていたときのこと。同じ学年のムードメーカー的存在の五十嵐颯真が教室の扉を勢いよく開けながらこう言い放つ。
彼は人を驚かせるのが好きで、教師から睨まれている要注意人物である。しかし、彼は実害は出しておらず、近所の人の迷惑になるようなことは過去一回もない。ただ単に教師の心臓に悪いだけである。
「明日学校行って先輩たちを驚かせそうぜ!!」
例年、この学校では修了式の二週間前に卒業した生徒が修了式後日に集まって最後の交流を行う。別々の道を歩む友との最後の別れ、好きだった人への告白、因縁の相手とのけじめなど。
「先生に怒られそうだからやめとくー」「三年生の先生怖いからなー」
彼の提案に乗る人はあまりいなかった。それもそのはず。大体の提案は彼の独断のもとに行われている。だから、教師はそれを防ぐすべを持たない。
「それに関しては大丈夫!校長先生にも許可は取ったし、三年生の先生たちには事前に話を通しておいたから!」
その言葉に教室内はざわつく。先も言った通り、彼は完全独断で、ドッキリの対象には教師も入っている。つまり、彼は対象から教師を外して、三年生だけにするということである。前代未聞の事態。
「三年生には、一年間だけだったけどお世話になったから、先生の協力も得られれば規模の大きいことも出来ると思ったんだよ。それに―――」
「それなら俺、協力するぜ!三年生にお世話になったのは俺もおんなじだから!」
「私も!」「一緒にやろうぜ!」
珍しく落ち着いた様子で自分の思いを語る彼に、「協力する」という主旨の様々な言葉が降りかかる。そして、教室の生徒が一斉にこちらを向く。
「委員長、いいよね!?先生たちの許可も珍しくもらってるし!」
「なんだよ珍しくとは!」
それはクラスの委員長である自分に良いかを問うというものだった。教師の方に話が通っている時点で断る必要も無い。
「別にいいけど、一つ聞きたいことがある。いい?」
「いいぞ。答えれることならなんでも」
「お前、さっき言いかけてたけど、何言おうとしてたか、きいていい?」
それを問うと、うっ、と言葉を詰まらせた。教室中の視線が今度は颯真に向く。
「―――軽く流してもらいたかったんだけどさ。まぁいいや。俺、実は来年度からこの学校から転校するんだよ」
淡々と質問に返す。聞いた生徒たちはその口から聞こえた言葉を口の中で転がし、反芻する。刹那の硬直の後、意識を取り戻す。
『えええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!』
一同その言葉に驚愕した。そんな素振りは全く無く、聞いたことは愚か、考えたことすらなかった。
「なるほど、わかった。言いたくなかったならごめん」
「おう、気にすんな!明日来てくれればそれでいいんだ」
全員が呆けている中、颯真は教室から出ていき、稜は下校の準備をする。結局すぐ後に動き出したが最初から最後まで全員一言も喋らずその日の学校は終わった。




