2話 人とのキョリ
久しぶりに、家に人が訪ねてきた。
うまく会話できていただろうか。わからない。
もうずっと会話なんてしていない。
「人と話すのは、緊張するものだな」
決して人と話したくない訳では無い。
むしろ話したいし、人に会いたい。
「……できないなんて、わかってるよ。そんな事」
彼——シャロウは、人との関わりを極力避けていた。
シャロウの周りには、シャロウを狙う魔物が沢山出てくるのだ。
その為、周りに人がいると魔物に襲われてしまう可能性がある。
魔物達が何故シャロウを襲おうとするのかはわかっていない。
「これ以上、被害を出したくない」
自分が対応すればいいのだ。自分に魔物達を引きつけて、倒す。
それでいい。自分は人と関わってはいけないんだ。
うとうとと書斎でまどろんでいると、開けていた窓から箒が入ってきた。
「箒……?」
自分のものではない。誰かの忘れ物だろうか?と思っていると、外に人の気配が。
「あいつ、まだいたのか。……もしかして、この箒を探しているのか?」
箒を持って外に行き、女性に渡した。
「これ、お前のか。窓から入ってきたんだが」
「え、あ、うん」
「ほら。じゃあな」
きっとこれで帰るだろう。
彼女の返事を背中で聞きつつ、シャロウは玄関の扉を閉めた。
玄関に入って直ぐの棚に置いてある写真立て。
そこには、眩しい笑顔で写っている2人の姿。
「……レイヴン」
亡くなった親友の名前を呼ぶ。
戻ってこないなんて、そんな事分かっているのに。
「俺の、せいで」
シャロウはある日から突然、魔物に襲われるようになった。
以前は襲われることなどなかったのに、何の前触れもなく突然。
ずっと、後悔していた。自分が魔物に襲われるようになってからは1人でいればよかった、と。
親友の『俺はお前と居ても大丈夫だ』と言う言葉に甘えていたのだろう。
その結果、親友は亡くなってしまった。
そんな事を考えていると、また外が騒がしくなる。
またあの女性だろうかと思いつつドアを開けると、そこには先程の女性……ではなく魔物の姿が。
「……ッ、またか」
誰もいないのを確認してから、魔法を使って倒す。
面倒だが、自分が魔法を使えると言う事がバレるのはもっと面倒だ。
「はぁ……どうして……こんな」
『わぁ……!やっぱり森の奥にある凄腕の魔法使いさんって、貴方だったんですね!』
目の前から聞こえた元気なその声に、思わず固まる。
周りに誰もいないと確認したはずなのに、どうして。
どうして、さっきの女性がいるんだ。




