第256話 とりあえず赤の群集へ
とりあえず赤の群集の森林エリアにいるフラムの杉の木の所へ行く事が決まった。あいつの場所なら前に行ったし、その部分までのマップは埋まってるから迷う心配もない。さて、そうなると空から移動する方が楽だな。
「アル、今回は俺が運ぶのでも良いか?」
「……そうだな。一応は戦闘の警戒はしておくか」
「空からの強襲だー!」
「ハーレ、まだ戦う可能性があるって決まった訳じゃないからね」
「何となく戦う気がしております!」
「あはは、私もかな。何となくそんな気がするよ」
「サヤまでなの?」
どうにもハーレさんもサヤも戦闘になる気がしているらしい。……俺もなんとなくだけど、地味にそんな予感がしてるんだよな。まぁそれは行ってみてからでないとはっきりはしないけど、一度森林深部まで戻ってから赤の群集の森林に行きますか。
「で、どっちから行くんだ?」
「え、どっちって?」
「おいおい、ミズキの森林は赤の群集の森林エリアにも繋がってるんだぞ?」
「あ、そういやそうだった」
つい忘れてしまってたけど、そういやそうだったな。うーん、どうせ目的地は一緒だし初期エリアなら未成体ならそれほど時間はかからないし、ミズキの森林から直接乗り込むか……?
「サヤ、水月さんに確認取ってくれ!」
「えっと、ミズキの森林から直接乗り込んでも良いかだよね?」
「あ、ついでに襲ってくる奴がいそうかどうか聞いといてくれ」
「うん、分かったかな」
ここはサヤに任せておこう。何だかんだでサヤと水月さんは結構仲は良いみたいだし、こういうやりとりはやりやすいだろうしね。サヤが水月さんにフレンドコールをし始めたので、話し終わるのを待ってから問題がなさそうなら出発だね。
「あ、水月さん? さっきの今ですみません。えっと、今ミズキの森林にいるのでそっちから行こうかと思ってるんですけど、あ、はい。それは問題ないんですね」
とりあえずサヤの発言だけからでも、ミズキの森林から行くのは問題なさそうだ。
「それでなんですけど、赤の群集って……。あ、やっぱり少数でもいるんですか。……え、あ、そういう人達? それなら倒して問題ないんですね? あ、はい。それじゃそうします。それじゃまた後で」
そして水月さん宛のフレンドコールは終了した。この感じだとやっぱり戦闘がありそうな予感がするね。
「ケイ、出番かな」
「……ん? なんで俺?」
「ルアーさんを倒した相手って事で戦いを挑みたがる人が少数だけどいるんだってさ。特にこの前の騒動の後から表に出てきた人達がそうらしいよ。手間になって申し訳ないけど、その人達にルアーさんを倒した力量を見せつけて欲しいって要望かな」
「……え、そういう理由?」
もっと別の、それこそ変な難癖をつけてくるような連中かと思ったらただ戦いたいだけの人って事か!? これは結構な強者が相手の予感がする。……いや別に戦う必要もないような気が……?
「それとは別口なんだけど、純粋に灰の群集の戦闘を見たいって人も多いらしくてね。戦いになったらそれを見せてあげてって。パーッと盛り上げて雰囲気変えてほしいみたいかな?」
「アルさん、これはあれだね! 実況だね!」
「……赤の群集の隠れていた奴の力量を見るチャンスではあるが……ケイ、良いか?」
「あんまりこっちにメリットもない気もするけど、俺も今まで表に出てきていなかった人ってのは気になるな……。それにこれで変な雰囲気が払拭出来るならそれもありか。……よし、今回は良いぞ」
結構前とはいえ、ルアーを倒した実績があるのは俺とベスタだしな。赤の群集の隠れていた強者との戦いに興味はあるし、ここらで一度、赤の群集の底力を見てみるのも良いかもね。
そう簡単に負ける気はないけど、これでもし負けたらどうしようか……? ま、そうなったらそうなった時って事にしておこう。やる前から負けた場合の事を考えてどうする!
「で、周りの被害はどの程度までなら問題なし?」
「……破壊する気満々かよ」
「それは状況次第だな」
「その辺は任せるって言ってたかな?」
「んじゃ何でもありって事で」
「許可は貰ったし、実況やるよー! アルさんは解説ね!」
「赤の群集の方は解説しきれるかね?」
「多分大丈夫さー!」
もうハーレさんとアルは既に実況する気満々である。まぁ相手の強さ次第ではあるけど、手札は出し過ぎない様に気を付けないとね。出来れば青の群集との総力戦に使った手札までで抑えておきたいところ。
さてとそういう事になったなら、登場からインパクト重視で行こうか。
「アルはクジラの元のサイズでいいか?」
「インパクト重視の登場か。任せとけ」
アルは共生式浮遊滑水移動に必要なスキルを解除して、空中浮遊を発動させただけの巨大なクジラへとなっていく。木も背中の上へと移動だね。この状態で浮いているのが50センチくらいになってきている。高度は低くても浮けているのは間違いないな。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 53/53 → 51/51(上限値使用:2)
そして俺が水のカーペットを生成すれば、その上にスムーズに泳いでいく。これ、平坦な地形ならもう自力で泳げるんじゃないか? そして浮く基準も地上からではなく、俺の水のカーペットの上からのようなので浮いたクジラの下に水の膜がある様な感じになっている。
「おぉ!? 思った以上に進展してないか、これ!?」
「アルもそう思うか。これ、移動のタイミングこそ合わせないといけないけど、もう空飛ぶクジラだよな」
「スクショのチャーンス!」
「はいはい、それじゃ出発しようね」
「……とりあえず、浮かせる前に乗るのを先にして欲しいかな?」
「あ……」
そういやまた先に浮かせてしまっていた。うん、それはサヤの言う事が正しいね。次からは気を付けよう。
「とう! 『上限発動指示:登録1』『共生指示:登録1』!」
「まぁ済んだ事は仕方ないかな」
「何だかんだで手段は違ってもみんな飛べるしね」
そしてハーレさんは傘展開と風魔法で飛び上がっていき、サヤは竜に腰掛け飛んでいき、ヨッシさんは普通に飛んでいく。まぁもうみんな慣れてきたものである。
<行動値1と魔力値4消費して『風魔法Lv1:ウィンドクリエイト』を発動します> 行動値 50/51(上限値使用:2): 魔力値 108/112
<行動値を4消費して『風の操作Lv3』を発動します> 行動値 46/51(上限値使用:2)
さてと体当たりとの併用は跳び過ぎるのは分かっているので、風魔法と風の操作で簡単に行こう。少し軽めに飛び跳ねて、風の推進力で一気に跳び上がる。うん、跳び過ぎずアルの背中にちょうどいい感じで着地になったね。
そしてミズキの森林から、木の上を浮かびながら赤の群集に向けて移動になるけども……前より高さも大丈夫になってきたし、ちょっと移動速度を上げてみるか? えーと、ハーレさん辺りに吹き飛ばし防止の風でも……あ、でも範囲が足らないかも。
仕方ない、俺の水の操作を使うか。昇華になってるから水の量には問題ないだろうし。
「アル、どこまで速度が出るか実験な?」
「お、そりゃいいな。そんじゃ、ケイは水のカーペットの位置がズレない様に気をつけてくれよ」
「散々その手の操作はやってきただろ」
「そりゃそうだ。まぁ高速遊泳も自己強化も呼び出し登録出来てないから、単純に未成体での移動速度にはなるがな」
「それで充分だ!」
「それって、私達が落ちたりしないかな?」
「大丈夫じゃない? ケイさん、何か策はあるんでしょ?」
「まぁな。それじゃいくぞ」
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 45/51(上限値使用:2): 魔力値 105/112
<行動値を3消費して『水の操作Lv6』を発動します> 行動値 42/51(上限値使用:2)
いつかの海中で作った海水ドームの昇華させた魔法産の水バージョンを作り上げる。これで俺達が落ちないようにアルの背中を覆ってしまえば問題なし。というか、こっちの方が水量も精度も海水よりも遥かに上である。
「おー! これなら安全だね!」
「そっか、ケイの水の操作ならこれが出来るのかな」
「空飛ぶクジラの完成度が段々と上がってくるね」
「ま、今はケイの力を借りてるが、最終的には俺のみでやる必要もあるけどな。そうでないと完成とは言えん」
「アルさん、頑張れー!」
とりあえず移動準備は完了だ。サクッと移動してしまおうか。
「それじゃ、目指すは赤の群集の森林エリア! 出発するぞー!」
「「「「おー!」」」
そしてあっという間にエリア切り替え地点まで辿り着く。……うん、流石に未成体ともなれば移動速度が速い。振り落とす可能性と障害物を排除した状態のクジラは速かった。これ、自己強化や高速遊泳を使えばもっと速くなるんだよな。
「速かったねー!」
「うん、これは快適かな」
「楽でいいね」
「……これは俺自身が水の昇華を狙うのもありか?」
「あーありだとは思うけど、アル、今は待たせてるからそれは後でな」
「それもそうだな」
まぁ確かに、アル自身が水の昇華を取って同じ事を自分でやるのはありだろう。というか、空中浮遊との合わせ技は相当良いかもしれない。うん、新たな方向性が見えてきたね。
とりあえずそれは後にするとして、今は赤の群集へ行くのが先決だね。ここのエリア切り替えをした後は即座にボスがいるはずだけど、ボスの対処は赤の群集だとどうなってるんだろ。まぁ行けば分かるか。
<『ミズキの森林』から『始まりの森林・赤の群集エリア1』に移動しました>
そして赤の群集の森林エリアに到着である。……なんか妙に人が多いのは周回PTがいるからだろうか……? うーん、他の群集だと勝手が分からない。
「お、マジで来た!?」
「ほう、この人達がルアー達を倒したって人達か」
「クジラでっか!? っていうか、飛んでるし!?」
「あはは……。こりゃ灰の群集が断トツで強い訳か」
「うお!? ドラゴンを纏ったクマがいるぞ!」
「……ザリガニ? あれ、コケの人って話だったんじゃ……?」
とりあえず赤の群集の人達から注目されているのは何となく分かった。なんというか、特にこれと言って悪感情はしないな。これはただの興味本位っぽい? 見てみたいと言っていたのはこの人達って事なのだろうか。
こっちから行くと伝えておいたから、興味ある人達が集まってきている感じに見えるね。
「あー、すまんな、ケイ。灰の群集から使者が来るって通達したらこの有様でな」
「お、ルアー! 久しぶり! ……って、俺らって使者なの?」
「違うのか?」
赤の群集から見たら灰の群集の方針は分かってないからそう見えるのか。代表者も決まってなければ、群集からの指示で動いている訳でもないんだけどね。まぁ本人が認めるかどうかは別として、満場一致でリーダーについてはベスタだろうけど。
「共闘イベントって言っても灰の群集ではPT単位で自由行動だしな。まぁ報告を上げるのも自由だから、伝えときたい事があれば伝えとくぞ?」
「なるほど、灰の群集はそういう感じなのか。……それにしてもそっちは随分と様変わりしたっぽいな。そりゃザリガニか?」
「惜しいけど違う。ロブスターだ!」
「なるほど、ロブスターか。……共生進化か?」
「流石にそこは教えられないな」
「そりゃそうだ」
久しぶりに会ったルアーだけど、とりあえず元気そうなので良かったな。思ったほど険悪な様子でもなさそうだし、これは結構改善に向かっているっぽいね。この感じなら共闘も大丈夫そうかな?
まぁ自由行動で来ているだけだけど、赤の群集からのメッセージがあれば情報共有板で報告するのは別に引き受けても問題ないだろう。……あれ、これを使者って言うような気がしなくもない。
「お、コケのアニキー! カッコよくなってる!?」
「アーサーか。……お前、2枠目をコケにしたな?」
「あ、速攻バレたかー。コケのアニキには隠せないよなー」
そしてアーサーは背中にコケを纏ったイノシシへと変わっていた。……この感じはベスタと同じような感じっぽい? いや、まだ未成体には辿り着いてなさそうだしこれは共生進化だな。それにしても2枠目にコケを選んだのか、アーサーめ。
そこにタカの人が飛んできた。ん? 首筋に赤いキノコが生えている? なんか妙に貫禄があるし他の赤の群集の人達が場所を開けていた。結構強そうな感じがするけど、この人が戦いたがってると言う人か? これはひょっとするとひょっとするのかもしれない。共生進化か、もしくは……。
「おう、ルアー! このザリガニが言ってたコケの人か?」
「まぁな。……予想以上の進化をしているみたいだから気をつけろよ」
「はっ、そりゃ楽しみだ。水月から聞いてるよな? 1戦、手合わせ願えるか?」
「ま、勝っても負けても文句なしっていう条件ならいいぞ」
「そこを気にするのは確かに尤もだな。……安心しろ、勝ち負けで一喜一憂することはあっても荒らしてた連中の様な真似はしないと約束しよう」
このタカの人は戦闘好きではあるみたいだけど、良識は弁えてる人みたいだね。こういう人は嫌いじゃない。これなら面白い勝負になりそうだな。
「ならいいや。その前に、そこのボスを片付けてもいいか? 倒さないと進めないし」
「あぁ、そういやそうだったな。待ってるから、サクッと殺ってくれや」
「ほいよ。サヤ、ハーレさん、ヨッシさん任せた。アル、今のうちに下りとけ」
「それもそうだな」
ボスの周辺はそれなりの範囲が拓けているみたいだし、アルを降ろしておくには丁度いいだろう。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 46/51 → 46/53
とりあえず思考操作で俺がアルを浮かせているのを悟られないように、解除しておく。そしてさっきから近くで臨戦態勢になっている火キノコだけど、所詮は初期のボスである。黒の瘴気強化種になってるようだけど、まぁ相手じゃないな。
「3人もいらないと思います!」
「ここは私がやろうかな」
「サヤ、頑張ってね」
「サヤ、頑張れー!」
「うん、頑張るね。それじゃ行くよ。『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『強爪撃・土』!」
そして、土属性を付与した強爪撃で火キノコを叩き潰していく。一気にHPの殆どがなくなるが、そこから淡い光を放ち出した火キノコのHPが回復していく。このキノコ、自己回復系のスキルがあるのか。
「『共生指示:登録3』! 『爪刃乱舞・土』!」
そして共生指示から呼び出した電気の拘束魔法で動きを鈍らせ、爪刃乱舞の連撃を全て叩き込んでいった。おー、前は重さに振り回されてた印象があるけど、もうその気配はなくなってるみたいだね。そして竜の電気魔法もうまく扱えるようになってきている。
こうして実際に見てみれば魔法の援護攻撃と強威力のサヤの連撃とは相性が良さそうだ。サヤの応用スキルの取得が楽しみだね。
<ケイが成長体・瘴気強化種を討伐しました>
<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『成長体・瘴気強化種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<ケイ2ndが成長体・瘴気強化種を討伐しました>
<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『成長体・瘴気強化種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
お、瘴気強化種って討伐報酬と討伐称号が貰えるんだ。そういやイベントが始まってそんなアナウンスもあった気はするね。ただしちょっと黒の暴走種よりはポイントは控えめか。……でもこれってもしかして瘴気強化種として復活すれば何度でもポイント取得が可能……?
あー!? でも称号は勿体無いことしたかも!? これ、称号は多分1回限りだよな。わざわざ高原エリアで逃した意味が無くなった……。
「……おい、今の真似できるか? 同じクマだろ」
「いや、無理だから!? 土属性を付与したらかなり重くなるから、単発ならともかく連撃は無理!」
「……目の前に実演があったわけだけど?」
「あれはプレイヤースキルが高過ぎるだけ! 同じ水準を求めるな!?」
何やら赤の群集のクマの人と、ネズミの人がそのように騒いでいた。サヤの動きって同じクマから見るとそんな感じなんだ。……でも水月さん辺りなら普通にやりそうだよな。
「ははっ、そこのサヤさんだっけか? 水月とライバル関係ってのは冗談でもなんでもないな。……このレベルのPTに負けたのなら恥でもなんでもないだろうに、あのバカ共は……」
「……何か問題あったか?」
「いや、こっちの過ぎた話だ。さてまだ名乗ってなかったな。俺はタカのガストだ」
「俺はコケのケイだ。1戦やるってのは1対1で倒されるまででいいんだよな?」
「あぁ、問題ねぇぜ。リスポーンについては、隣接エリアだしどうとでもなるよな?」
「そこは問題ないな」
俺の場合はどうせアルがすぐそこにいるから、すぐに復活出来るけどな。……それにしても、このガストさんは多分相当強いぞ。見込みが間違っていなければ、おそらくキノコが本体の支配進化だな。
これがおそらく今まで表に出てきていなかった赤の群集の強者なのだろう。相手にとって不足無し! 全力で倒すまでだ!
大して気にするほどでもない事ではないけど、一応報告。
今の章は普段目安にしていた1章辺り25〜30話の基準を大幅に超えそうというか、書き溜め段階で超えました。
一応次の章分けもするけど、実質そのまま続くかと思います。
まぁそれほど気にする必要はないけど、共闘イベントは結構長くなると思いますのでその報告をしておきます。




