第255話 共闘方針の決定
晩飯の時間なので一旦ログアウト。とりあえずいつものようにいったんのいるログイン場面にやってきた。いったんの胴体を見てみれば『共闘イベント開催中! 詳細は公式サイトか、いったんまで!』となっている。AIの仕事は多くて大変だね。
「そういやいったん、共闘イベントって終了時間って決まってるんだよな?」
「共闘イベントは次の定期メンテナンス開始までだよ〜。まぁそれより前に今回のイベントのボスを倒す事もあるかもしれないけどね〜」
「え、ボスって出現時間が決まってるんじゃないのか!?」
「イベントの終了時間は討伐の最終猶予時間だね〜。倒せるか倒せないかでイベント終了時の報酬が変化します〜!」
「……マジで?」
「AIは嘘は言いません〜!」
何気なく聞いたけど、結構重要な内容の気がする。これは絶対に倒しておく方が良い報酬が貰えるやつだ。……イベント終了時に報酬が貰えるって事は、報酬は定期メンテ終了後に配布?
「それって言っていい情報?」
「告知内容になるから問題ないよ〜。ちなみに早めに倒した場合でも、イベント終了時間は変わらないからね〜。イベント期間中は敵の出現率が上がっております〜」
「あ、そうなんだ。そういや報酬って何になるんだ?」
「それはイベントが進んでからのお楽しみ〜。報酬の内容は後半が始まってから公開予定だよ〜。くれぐれも無駄遣いにはご注意を〜」
「……無駄遣いって何を?」
「それはやってれば分かるさ〜」
「やってれば分かる……か。後半になるまで内緒って事なんだな」
「そういう事になるね〜」
なんだ、口を滑らしたとかと思ったけどただの告知内容か。……期待して損した気分だ。まぁ期間内でも早く終わる場合もあるって事は、油断したら最終場面が終わっていたという事もあるかもしれないし、気をつけておこう。
「そうそう、運営からの任意のアンケートがあるんだけど、回答してくれる気はあるかな〜?」
「……内容によるな」
「それもそうだよね〜。まぁまとめ機能に関するアンケートだよ〜。使い勝手はどうですかって感じ〜」
「なるほど、そういうやつか。そうだな……。今のとこはまだ情報がまとまりきってない感じだけど、機能としては便利だと思うぞ」
「はいはい〜。ご協力ありがとうございます〜! スクリーンショットは今のうちに見とくかな〜?」
「あ、見せてもらえるか?」
ハーレさん次第ではあるけど、そろそろ昨日の月夜に浮かぶロブスターのスクショがあるかもしれない。……そういや、ロブスターって知ってる筈なのに何故かザリガニって言ってた気もするけど何でだろう? 後で聞いてみるか。
<システムメッセージ:外部からの呼びかけがあります。接続しますか?>
あ、システムメッセージが出るってことは晴香が急かしているパターンか! そうなると、今日は晴香の特に好物の可能性がありそうだな。っていうか、ちょっとくらい待て。
「すまん、急かされてるからスクショは後にするわ!」
「了解です〜」
晴香の手によって強制ログアウトになる前に、ささっと自発的にログアウトしてしまおう。変な事でデータ破損の可能性は勘弁願いたい。
◇ ◇ ◇
現実に戻ってみれば、待ちかねた様子の晴香が俺の部屋の椅子を占拠して俺の方へと呼びかけてきているようである。……やっぱり自分で部屋の鍵でも設置しようかな?
「兄貴、早くー!」
「……何をそんなに急かしてるんだよ?」
「お父さんがお母さんのご機嫌取りに、お高いお肉を買ってきてるんだよ! なんとデザートのケーキ付き!」
「あー、なるほど。父さんはそうきたか」
「お母さんが気合入れて、ステーキを焼いてるから兄貴も早く!」
「分かったから急かすなっての!」
昨日、母さんを怒らせてたみたいだしね。母さんは料理を作るのが趣味だし、食べるのも大好きだ。……間違いなく晴香の食い気は母さん譲りだろう。ま、お溢れとして美味いものが食べられるのはありがたいけどね。
母さんへ母の日にプレゼントしたマグカップは、何かの機会に新しいのをプレゼントでもしようか。
「話は変わるんだけど、昨日俺のロブスターをザリガニって呼んでたのは何でだ?」
「ロブスターって思ってるとよだれがね!? 最近食べたばっかだしね!?」
「……つまりザリガニという事にして自己暗示をかけてる訳か」
「そういう事さー!」
「……ザリガニはザリガニでちゃんと処理すれば食えるらしいぞ?」
「え、ホントに!? ……今度取ってきたら、お母さん料理してくれるかな?」
「おーい、それは止めとけよ」
「はっ!? それもそうだね! とりあえずお肉だ! ステーキだ!」
危ない危ない。危うくホントにザリガニを捕りに行きかねないからな。……庭に池があるから、晴香だと食べる為に育て始めてもおかしくないし。迂闊なことを言わないように気をつけないとな。
そんなこんなで、本日の晩飯は豪勢なステーキとなりましたとさ。母さんの機嫌も直ったみたいだし、流石に今日は晴香も自分の分だけで満足していた。……いや、経緯が経緯だから俺のを狙うのを自重しただけかもしれないけど。
最近の夕食はヨッシさんからカニが送られてきたり、ロブスターが福引で当たったり、今日のステーキだったりと良い物が続いてるもんだ。ま、ありがたいけどね。
「それじゃ先に行ってるねー!」
「おうよ。あ、そうだ。先に方針の案を出してくれてると助かる!」
「了解です!」
そして食後は晴香はサッサと先にゲームへと戻っていった。ま、先に行ってる間に情報をまとめて相談してくれておいてくれれば助かるね。あ、そうだ。ログインしたら2人での発動の水の昇華魔法の記載もしとかないとな。
とりあえず俺の当番の食器洗いを済ませてしまおう。あ、母さんが隣にやってきた。
「晴ちゃんは、元気がかなり戻ってきたわね」
「元気と言えば元気だけど、ちょっと元気あり過ぎるくらいだぞ」
「まぁ数ヶ月は落ち込んでたから、その反動かもしれないわね」
「まー、それもそうか。あ、そうだ。晴香は高校の方でも友達出来たらしいよ」
「あら、それは良かった! 雫ちゃんが引っ越してから色々と心配だったけど、もう大丈夫かしらね?」
「どうだろな? そういや晴香、送るもののリクエストは聞いてた?」
「それはばっちり昼間のうちにね! 帰ってくる前に買ってきて、もう発送済みよ!」
「え、もう送ったの!? ちなみに何になった?」
「うどんね!」
「あ、やっぱりか」
「もちろん、雫ちゃんの向こうでの友達の分もね」
「早いなー」
いつの間にやらもう既に色々と終わっていたらしい。ちゃんとサヤの分まで用意してくれたようだし、予想以上に行動が早かった。まぁ終わったなら別にいいか。
その後に聞いた話だと割れたマグカップは父さんが修理を頼んでみる事になったらしい。そういや、3Dプリンタを利用した破損物の修復サービスってのもあったっけ。普段はそういうのは使わない父さんだけど、今回は相当怒らせたのを不味いと思っていたようである。
◇ ◇ ◇
片付けも終わったので、色々とやっておくべき事も済ませてログインである。さて今後の行動方針を決めてから動き出さないと、折角のイベントが楽しめないからな。
とりあえずいったんからの追加情報は特に無かったので、スクショだけ確認しておいた。月夜のロブスターはまだみたいだったけどね。……ハーレさんは結構な枚数撮ってたから、まだ整理が終わってないのかもしれないな。
そして再びゲームの中へと移っていく。ログインすれば、ミズキから少し離れた場所から開始である。まぁ移動の手間を省く為に先に移動しておいて正解か。さてと、みんなは今どこだろうか?
えーと、みんなログインしてるみたいだし、フレンド一覧から位置確認っと。お、みんなミズキの森林か。しかも割と近くである。……アルのクジラはどうなってるんだろうか?
「お、ケイ来たか」
「……ん? アルのクジラ、また小さくなったか?」
「おう、小型化のLvが上がったからな。まぁ通る場所さえ慎重に選べばなんとかここまでは来れるようにはなったぜ」
「アル、大進歩だな!」
「おうよ! これで道順に制限はまだあるが、基本的に障害物の関係で行けないエリアは無くなっただろうよ」
アルのクジラの大きさは既に元の大きさの半分くらいの5メートルくらいにはなっているし、浮ける高さも明確に高くなっている。クジラも大きさに合わせて細くなっているので、真っ直ぐ進めるルートさえ選べば森林深部でも通れるようになってそうだ。
そしてミズキの森林まで来れたという事は、実際に通れたという事になる。これはかなりの進歩だろう!
「あ、そうだ。ハーレさんに頼んでおいたけど、行動方針はどうする?」
「あぁ、それなら聞いてるぜ。とりあえず群集としては制限をかけずに好き勝手に動いていいって話らしいな」
「ま、そうなるな」
「それなんだけど、ルアーさんやフラムさんに会いに行ってみるのはどうかなって案が出てるよ。ケイはどうかな?」
「あー、赤の群集に行くんだな。ルアーやフラムも知らない相手じゃないし別にいいと思うぞ」
それに水月さんやアーサーもいるだろうしね。今の赤の群集で、俺らが信頼しても良いと判断出来る相手なのは間違いない。少なくとも他の見知らぬ人よりは、何とか荒れていた赤の群集を立て直そうとしていた相手の方が共闘する相手としては良い。
「それじゃ決定だねー!」
「向こうには連絡ついてるのか?」
「それはこれからかな? まだ方針として確定してないのに声もかけられないもん」
「まぁケイさんのログインを待ってたんだよね」
「あー待たせてたのか」
「それじゃ私から水月さんに連絡してみるね?」
「おー、サヤに任せた」
となると、とりあえず向こうの返事待ちか。よし、今のうちに水の昇華魔法の検証情報を上げとこう。……ん? なんか進化の項目で未確定情報の提供場所に気になる記載があるな。ここは匿名投稿が可能みたいで、投稿者記名はなし。サッと昇華魔法の情報を上げてからちょっと見てみようか。よし、情報記載完了!
えーと、支配進化のその先の情報……だと!? え、支配進化って先があるの!? これは未確定情報とはいえ、無視出来ない情報だ。内容としては……強制進化させた傀儡種の変異進化による支配進化の解除!? 傀儡種のログイン制限の撤廃と、『支配共有』が『同調共有』へと変化する……?
あ、でも全スキルの使用可能な支配共有が、共生指示よりは自由度の高い登録性の同調共有とやらに切り替わるのか。……ふむ、これは支配進化にしたもののログイン出来ないデメリットが厳しく感じたらするといいのかもしれないけど、登録不要の支配進化からは性能は落ちる感じかな。
えーと進化条件は支配進化状態で一定Lvに達する事。ただし強制進化時のレベルにより条件Lvの変動の可能性ありか。こりゃ地味に再現が厳しいかもね。
うーむ、これはもしかしたら俺も進化先として出る可能性ありか? でも今の状態で特に不満もないし、そもそもまだ未確定情報だしね。もし進化先に出た時に考えてみようかな。出ていない状況で考えても仕方ないし。
「話はついたよー! 可能ならフラムさんの不動種の場所に来てほしいって言ってるかな!」
「おー! それならまた赤の群集エリアに遠征だー!」
「ま、それほど遠い位置でもないから別にいいか」
「……襲いかかったりはしてこないよね?」
「その場合は容赦なく叩き潰す。……ケイが」
「おい!? やるなら、全員でだぞ!」
「ケイさん、そういう問題?」
「そういう問題!」
「気にし過ぎても仕方ないさー! 共闘するなら話し合いも必要だしねー!」
「ま、そりゃそうだ」
そもそも知ってる相手だしね。そこまで疑ってたら赤の群集との共闘なんて不可能になってしまう。それこそ、赤の群集を蚊帳の外にして青の群集と灰の群集だけでクリアする事すら考える必要が出てくるし。
まぁ、荒らしの連中に楽しみを奪われてキレた人たちが今の赤の群集のメイン層だろうから、多分大丈夫だとは思うけどね。こればっかりは実際に会ってみて確かめるしかないだろう。
「それじゃ、赤の群集の森林エリアまで行きますか!」
「「「「おー!」」」」
場合によっては実力行使も視野に入れて、赤の群集へと行ってみようじゃないか。……ちょっと情報を伏せたい気もするけど、あえて実力差を示すために水のカーペット利用の空飛ぶクジラではったりもかけてみようかな。




