プロローグ
本当に、退屈な高校生活だった。
朝起きて、制服に着替える。電車に揺られて学校へ行き、そんなに仲の良くない友達に挨拶をする。眠気をこらえながら授業を受けて、昼休みには適当に笑って、放課後になれば部活へ向かう。
毎日が、その繰り返しだった。
もちろん、楽しいことがなかったわけじゃない。
友達とくだらないことで笑う日もあったし、部活でうまくいけば、それなりに嬉しかった。帰り道にコンビニへ寄って、特に必要でもないものを買うことだってあった。
それでも、何かが足りなかった。
何が足りないのかは、自分でもわからなかった。
ただ、毎日が少しずつ過ぎていくのを、どこか他人事みたいに眺めていた。
高校生活なんて、こんなものなのだろう。
卒業すれば、今の友達とも会わなくなる。部活も終わる。教室で過ごす時間も、いつか思い出になる。
そう考えると、寂しいというより、早く終わってほしいと思った。
そんな僕の日常に、彼女は突然、色を差し込んできた。
鉛筆だけで描かれた風景に、誰かが勝手にクレヨンを走らせたみたいに。
初めてちゃんと話した日のこと。
名前を呼ばれたときの声。
何でもないメッセージを、何度も読み返した夜。
あの夏の花火。
思い返せば、世界が変わった瞬間なんて、どこにもなかったのかもしれない。
ただ、気づいたときには、僕は彼女のことばかり考えていた。
これは、そんな恋の話。
始まりから終わりまでを、ちゃんと見つめて。
最後に、その恋に名前をつけるための物語。




