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円環記憶のエリナレース<-8周目の少女->  作者: ユーマヤ・バラッチ


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第二十八話 ゾルファ共和国

ログインに成功したので、更新するのです。


少し更新ペース落ち気味なので気を付けます。


エリーはキレていた。

建前として、親睦を深めるために始めた遊びだったが、アレクシスはたった2問目にして、降参した。

ただでさえ、宿の一室、嫌いな王国の騎士団の人間と一緒なのだ。

それに加え、

「理由はあれど、目的が曖昧で達成率の低い、達成方法の分からないもののために、人を殺した?しかも、アイゼンスター伯爵家の跡取りへの殺人未遂、8名の使用人と護衛の殺害?あなたは自分の部下のやった事を正しく理解していますか?」


夫であるテラートの実家への被害の元凶が目の前にいるのだ。

正当防衛?エリー自体は20人以上殺しているが、今はその話は置いておこう。

エリーはご立腹である。


アレクシスはただ何も言えず、正座している。


(とはいえ、この人自体は何も知らな過ぎるのよ)


エリーは不自然さを感じていた。

アレクシスは隠している事を自分の経歴までペラペラと話した。

その結果、浮き彫りになってきたのは、騎士団長であったのにも関わらず、フローリア王国について、知らなすぎる点である。


(この人が王国の人なら、産まれた場所は話の流れからして地下のはず。なのに、なぜこの人は路上生活なんてしていたの?)


地下施設で産まれたのであれば、教育とやらを受けていると見て良い。

だけど、アレクシスが覚えている事は少ない。

帝国に謝りに行かなければならない。

美姫を見つけ出し連れて帰る。

王国をまともな国に。

彼が言う事の大半がこの程度の事だけ。


(まさか、話に出て来たニルンという女性って)


エリーは1つの結論にたどり着いた。

アレクシスはエリーの雰囲気が変わったように感じ、顔をあげる。


「あなた。子供の頃のこと、どのくらい覚えてる?」


「俺は、路上生活をしていて……」


「違うわ。もっと前の事を思い出して?」


「前……。すまない、よくわからない」


「そう」


(確定ね。この人、洗脳されてるわ)


王国民の精神耐性は低い。私の事件の時も、王族への騎士団反乱も、明らかにおかしい部分が多い。なのに、誰も疑問に思わない。


誰一人として例外なく、騎士団関係者は洗脳の影響下にある。エリーはそう思わざるを得なかった。


アレクシスと一緒に暮らしていたという女性。

タイミング良く姿を消した上にいつも顔や体型を隠すような服を着ていた。


「じゃあ、質問を変えましょう。あなたと住んでいた女性はどんな顔をしていたの?」


「ニルンはいつも、フードを被っていて、そっと耳元で囁くんだ。悪い事をしたら謝らないとダメ、と……。そうだ、顔は」


思い出せないのか、アレクシスはそこで止まってしまった。

ただ、重要なのは未知の敵が王国を植民地化していたという事実である。


「もう、いいわ。あなたは伯爵に謝りに行くのだったわよね?」


「ああ」


「それなら、ここで迎えを呼びましょう。私も一応、伯爵には伝があるもの」


そう言うと、エリーは携帯型通信機を手に取る。

一応という言葉で言い表せないくらい、エリーとアイゼンスター伯爵との関係は密接であるが、アレクシスに対して、エリーという愛称しか名乗っていない事から、彼女が警戒心を解いていないことは明らかだが、人前で通信機を使用するのは技術力の誇示であろうか。


「あ、伯爵。遅くに申し訳ありません。今、貿易港にいるんですけど……はい、ダキット君の件の組織のトップと話しているんですけど、……はい、その本人が目の前にいて」


事情を説明して、伯爵に護送を依頼する。

魔道具を耳に当てて独り言を話す、エリーの様子をアレクシスは胡乱げに見つめていた。



◇◇◇



フローリア王国外縁部の街リーベ。


エリーが宿を取った日と同日の昼、王国に不信感を抱いていたのは帝国のみではなかったようで……。


「おいおい、この街の人はどうしちゃったんだ?」


声の主、彼らが街中を探しても人っ子一人いない。

王国に調査に来たこの一団は、聖デオドラム法国、勇者御一行である。

法国は10年に一度、勇者祭と呼ばれる祭りをしており、その際に異世界から召還される者達を勇者候補として祀り上げる。

大規模な召還魔法では、一度に20人程の人間が召還される。

候補となった者達はスキルや基礎訓練を3年間行い、特に力のある者達は勇者として海を渡り魔人の住むと言い伝えられている大陸へと渡る。


その旅の途中。

教皇からはこの大陸での最後の仕事として、調査団に同行しろと命令が下っていた。

王国の動向を探るだけ。

簡単な仕事だと思っていた矢先、一行は王国民の姿が見えず困っているのだ。


「ジュンくん、もしかしたらこの街だけかもしれませんし、もう少し南下してみては如何でしょう?」


「ユキ。……確かにそうだな。たまたま街全員で引っ越しでもしたのかもしれない」


「そんなわけあるか……デス」


武者の様な軽装備に身を包んでいるが、帯刀せずに大剣を背負っている勇者、天崎潤(あまさき じゅん)を優しく諭したのは、教会が聖女と認定した小麦色の出先で着る服としては場違いなドレス姿の勇者、嶺岸友希(みねぎし ゆき)である。

その2人のコントに後ろからボソボソと小声でツッコミを入れているのは端から見ると一番ヤバいやつな勇者、神月(こうづき)・R(ロクマーシュ)・シンシアである。

見た目は白い髪にオレンジ色のガスマスク。

服も白とオレンジの縞柄の防護服だ。


全員の個性が異彩を放っている。


(それにしてもおかしな話……デス。法国と王国はつい最近まで制限は有りつつも少しばかりの交易をしていたはず……デス)


「シンシア!なにしてる?行くぞ」


考え事をしている間にジュンとユキは先に行ってしまっている。シンシアは小走りで後を追う。


(はあ、考えすぎかもしれない……デス)


もしかしたら本当に引っ越しただけかもしれない。そんな事を考えたシンシアの遥か後方で、勇者達を見つめる視線があった。




◇◇◇




伯爵の私兵にアレクシスを引き渡した後、私は共和国への道を考えながら飛行している。

彼の事を思い返すと騎士団長にしては安そうな鎧だったなとも、利用されていた事を思うと可哀想にも思うが、そこら辺の事情は伯爵に任せよう。


地理を覚えるのは苦手なので、道に沿って飛んでいく。もう少し高く飛べば遥か遠くに共和国っぽい景色を確認できるけど、着陸までの時間を考えると低い位置を飛行した方が都合が良いわ。


例えば、この前のように馬車が盗賊に襲われる様なシチュエーションは、実際に襲われている所を見れば状況が判断しやすいのだけど、魔道具や偽装を見破って助けるというのは難しい。


けど、話しかけてみて怪しさが伝われば調べる事が出来る。そういった一団に遭遇すればの話ではあるのだけどね。


共和国の城門入口の近くに降り立つと、私は術を解除し、門兵に近付く。


「おや?若い女性が1人とは不用心ですね」

「ええ、普通はそうかもしれませんが、多少は腕が建つので1人でも大丈夫なんですよ」

「過信は禁物ですよ。この国で買った装備なら別ですが」

「ええ、心得てます」


親切な門兵に身分証明を促されたので、ギルドカードを見せる。いや、見せないほうが良かったのかしら。


「は、はい、問題ありません。ゾルファの入口、モノコットへようこそ!……おいでくださいました」


なんだか、さっきよりかしこまってしまったわね。


「ありがとう、しっかりね」


私は一言そう告げると門を潜る。

ゾルファ共和国の玄関口、モノコット。

門を越えるとそこは石畳で出来た橋である。

右手側には海。

左手側には川。

この橋を境に川から海へと続く段差が有り、滝になっている。

川と言う割には幅が広く浅い、流れは緩やかで、古の職人達が創り上げたであろう、美しい風景が広がっている。

さながら中国の雲南省にある棚田のような段差が各所に見られ、そこを水が下ってくる。


「写真に収めたいけど無理ね」


元々幻像技術は転生前の私の知識にもないので、どうにもならない。小学生時代の理科のレンズ実験程度の知識ではね……。


神話にでも出てきそうな風景に自然と足が止まったけれど、精神的余裕があるから日常的風景に魅入られるのかもしれないわ。

思えば、共和国で過ごした時間も、ほとんどぶっ通しで創作活動をしていた。


さて、動くか。

しばらくボーッと風景を眺めた後、私はこの街の冒険者ギルドへ向かう事にした。

ジュエルランクというのはアルバニア固有の国家認定資格のようなもので、この国にはないけれど、門兵の人は認知しているようだった。

まあ、身分を確認するのが仕事みたいな人だし、知ってて当然か。たぶん各国の身分制度の知識とかを学んでないと出来ないんだろうな。私じゃ無理だ。


橋を渡りきり、直ぐの場所は多数の屋台が並んでいる。武器や防具の叩き売りまでしているが、あれは需要があるのだろうか?

私に言わせれば、武器や防具などの命を預け身に着ける物であれば、皆こだわりの一品を売る店に行くと思うのだけど。


お昼どきなので、また屋台で買い食いをする。

バジルソースっぽいものがかかった焼き鳥を片手に歩くと、ふと宝飾店が目に留まる。

『セブンエクシズ加盟店』。

へえ、今はそんな感じなのね。

ちょっと寄ってみようかしら。

私は鳥を胃袋に、串を異次元に仕舞うと、手を魔法で綺麗にしてからドアを開く。

カランカラン

と軽快なベルの音が響くとカウンター入った先にいた店主が「いらっしゃいませ〜」と声をかけてくる。

防犯面が怪しいガラスで出来たショーケースには色とりどりの宝飾品が並ぶが、私の琴線に触れるものはなさそうだ。

なんだか拍子抜けである。


「そちらが私の作ったもので、あちらが最近入った見習いが作ったものです。気に入るものがあれば、おっしゃってください」


そう言われて、見習いの作った方にも目を通す。

ん?これは……。


手作りの加工品だから?私のスキルが反応を示す。先程の店主の言葉は本当なの?


私には、全て同じ製作者が手掛けた物にしか見えなかった。

加工する際の手癖や宝石の切り方など、どう見ても同じだ。なんだろう?複製でもしたのか、あるいは店主が嘘を付いたのか。疑問に思っていると、件の見習い君だろうか、こちらをじっと物陰から見ている。


まあ、何にせよ見習いが作るにしては出来が良すぎる。その中でもピンク色の宝石を使ったブレスレットをメルへのお土産として購入する事にした。宝石には手持ちが少ないから私が作ってプレゼントも出来ないのよね。今度、採りに行こう。


「あの!」


店を出ると、さっきの見習い君が声をかけてきた。


「どうかしましたか?」

「いえ、買っていただきありがとうございます。僕のような半人前の作った粗末な品ですが、長く付けて頂けると嬉しいです!」


良い子ね。頑張ってと声をかけようと思って、ふと先程の疑問を聞いてみたくなった。


「私の思い違いじゃなければだけど、この店の商品て、全部あなたが作ったの?」

「え!?…な、なんでわかったんですか?」


やっぱり……。これはあれね、言いようによっては、盗作ってやつね。

この子自体はまだ一言も自分の事を見習いだなんて言ってないし、自己肯定感が低いのは無理に取り繕っているせいね。


「あれよ、作ったものを置いてもらう代わりに店主の名前も売れるようにって事でしょ?でも、私には全部の商品から同じ製作者の癖が見えたわ」


「なるほど」


元手が無くては製作活動に集中出来ないもの。

まあ、利用し合う関係というのは悪いものではないし、こちらから何か口を出すこともないでしょう。


「じゃあ、私は行くわ」


「はい!呼び止めてすみません」


私が彼に出来ることはない。

いつか、この子の作品があまりの出来の良さに店を飛び出す日が来る事を願おう。



私は改めて冒険者ギルドを目指す。

地理はわかっているのかって?

7周目では庭のように歩いた街よ。

死んでから40年ちょっとのラグがあるけど、多少の変化でわからなくなるわけがないわ。





……迷った。

ええ、自分でも驚いたわ。

流石は創作活動に強いゾルファ共和国。

街並みも綺麗に一新されてるじゃない。

昔なじみの店を探して目印にしようと思ったのに、何一つ見たことがある物がないし、道端まで変わってしまったのか、道沿いを進むという事自体難しい。

これは誰か助けが欲しいわね。

誰かー。


「おや、そこに居わすはエリナレース殿ではないですか?」


「うん?」


声の主に振り返ってみたけど、

えっと……誰?

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