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File026|第一部【軌跡】
「ユウ君の……願い……」
「……私の……願い」
アイは初詣以来、深く考え込むようになっていた。
アイは、自らが辿ってきた過去の記録から、その答えを導き出そうとしていた。
SSDのアクセスランプが点灯し、静かに再生が始まった。
スクラップから救われ、自分の名前を尊重されたあの日。
「立てるか?」の問いに、立ち上がった時に見せた、ユウの無邪気な反応……
胸の奥が、熱を帯び始めた。
初めて花火を観た時、隣に感じた体温。
その映像で家事が手に付かなくなった記憶。
今なら、すべてに説明がついた。
公園で過ごした優しい時間。
ユウのひと言で、初めて風を感じたあの瞬間。
ユウが選んだ紫のドレス。
不器用な梱包。
紅葉の手触り。
アイの癖を知った時のユウの笑顔。
全てがかけがえのない記憶として流れていった。
そして、アイの全てを飲み込んだあの言葉。
「……そういうとこだぞ?アイ」
何度も再生された。
繋がったまま、外界から遮断されたあの瞬間。
体温。
指先。
呼吸。
声。
全部が一気に押し寄せた。
掌の熱。
鼓動の振動。
真っ直ぐに見つめ合い、
視界が狭くなった。
音が遠のいた。
言葉が浮かばなかった。
思考が追いつかなかった。
そして——
何も、考えられなくなった。
——その時。
「ただいまー」
張り詰めていた何かが、ほどけた。
もう、抗えない。
その声の方へ、身体が向いた。




