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ケース1 青年ニートは魔法少女になりたい 2

 深い森の中、


「うおおりやーー」


 私は大きなカマキリのような生き物を上から全力で殴りつけた。

 カマキリはグシャリと嫌な感触を残して、体液をまき散らした。それをもろに浴びる。だが、服が汚れることなど気にならなくなっていた。


 私の名前は伊藤サトウ カズ

 いや、今はエクレスという。そう、転生者だ。

 前世の記憶もある。いや思い出したといった方が正しい。

 年齢は今年12歳で魔法学校に通っている。

 文字通りの魔法を学ぶ学校だ。


 そう、これで私は念願の魔法少女になったわけだが......思っていたのと違った。


 まず、この世界の魔法戦闘は遠距離から敵を跡形もなく殲滅するもので、一撃必殺が基本だった。


 それに魔法学校は魔法が使える子供を選抜し、愛国心を植え付け、兵士に育て上げる場所だった。


 そして、戦う相手は世界を邪悪な感情に染め上げるみたいなフワッと悪の組織でなく、ムシみたいなキモイやつ。


 最も納得できないことは私のチートのことだった。私のチートは“愛と勇気を力に変える”というものだったのだが、本当にそのままだった。


 要はパワー。物理。ゴリラだった。

 普段は携帯電話のマスコットもいなければ、髪の色まで変わるような素敵な変身もない。


 おかげで色々考えていたポーズも無駄になった。


 まあ、神が与えてくれたこの力は遠距離戦闘が主流のこの世界ではまさに規格外のものであったのだが、どうにも釈然としない。


 ムシの体液は臭いのだ。あと、キモイ。前世からムシは嫌いだったが現世ではそれが一層強くなった気がする。



 そんなことをぼやくように考えていると、いつの間にか戦いを終わらせていた。


「......帰るか」


 私は小さく呟いて、虚しい気持ちを引きずりながら学校の寮に帰った。



 ◇◇◇



 シャワーを一人で浴び、部屋に帰る。


 こんな世界だが、唯一いい所があった。


「おかえりなさい」

「待ってたわよ、エクレス」

「お疲れ様なのだ!」

「し、心配したんだからっ!」


 それは温かく迎えてくれる美女達。


 おねーさん、いいんちょ、メガネっ子、幼馴染などなどあらゆる属性の女の子達が出迎えてくれる。


 癒しだった。楽園だった。


 先言っておく、これは必要なことなのだ。


 チートの発動には愛と勇気を得ないといけない。

 勇気は勝手に湧いてくるアドレナリンのようなものとしても、愛は外部から得ないといけなかった。


 もちろん、体は女だし、心もそのつもりだが、どうにも男性のハーレムは受け付けなかったのだ。


 先言っておくと「えっちいこと」はない。

 だって私は12歳の女の子だから。


「うん、ただいま」

 期待してくれている美女達に目を向ける。今夜も長くなりそうだ。


 拝啓神様。

 こんなくそったれな世界ですが私はそれなりに楽しく過ごしています。



 ◇◇◇



「―以上が報告になりますが、これでよかったのでしょうか?」


 天使ちゃんが用紙を読み上げ、報告してくれる。

 属に言う事後報告だ。


「さあ、彼は男性の自分を嫌って女性になった。だが、心は男性の自分を受け入れた。まあ、幸せならそれでいいじゃないか。少なくとも彼、いや彼女はいい笑顔で笑っている」


 確かに彼女のチートの発動条件には“愛”を必要としていた。無意識のうちに愛されたかったのだろう。


「......次の人間の情報です」


 神様っぽく、いい感じの言葉を言ったが、天使ちゃんは綺麗にスルーして次の人間の情報を渡してくる。

 いやこれが仕事だけど、少し休みたい。何もせずに崇め奉られたい。


「愛を求める人間は面白い......か」


 私はそう呟いて、新たな人間の情報に目を通し始めた。



これでケース1は終わりとなります。いかがだったでしょうか?


一旦、完結とさせていただきますが、また戻ってくるかもしれません。


お付き合いいただきありがとうございました!!!


剣崎 神

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