【イメージチェンジ】
【リアル】の世界は半年たった。
僕とルナさんは毎日毎日タマゴオオトカゲを倒し続けた。だけど、AIのタマゴが1段階に成長することはなかった。それはルナさんも同じだった。
ルナさんのタマゴは双子シリーズで僕よりも前に手に入れてて、流石にこの狩りで1段階になるだろうと思ってたらしいけど結局ならなくてルナさんは狩りをあきらめた。
半年間、狩りだけじゃなくて練習試合も毎日欠かさずやって戦いの経験的なものが積まれた気がした。
今までは目を瞑らないと勝てなかったけど、目をあけてても集中して魔力補給することができるようになった、これで敵の攻撃をかわしながらでもできるからウォールへの負担が減って魔力消費もちょっと減る。咲みたいに…補給しながら連携攻撃みたいなことはまだできないけど…女性に負けてるのは男としてちょっと癪に障るというか…情けないというか…もっと練習して行かないといけないと思った。
そして僕にとっては二回目の終業式がやってきた。
前回は予期せぬ時間変更で短い式だったみたいだけど、今回はまるまる1日かけて今後の方針だとか色んな報告をしあっていた。
今回、ドルガバからの被害が少なかったけど、連合のギルドが被害を受けている事、それから僕を探しまわっている事。
このゲーム、ちゃんと名前表示して名前表示の下に表示されるIDまで見ないと見た目が変わってる場合町を歩いていてもバレないからなぁ。
IDが丁度顔のとこに被るからみんな非表示や、数秒間表示にしてあるらしくて、僕も5秒間表示にしてるし、5秒でID見れない事もないけど、結構あっという間すぎて名前見てたら消えてる事が多い。
イメチェンは正解だった気がする。
それに、りきって名前結構いるっぽいし。
「長かったぁ。」と咲が大広間の机に突っ伏していた。
「そうだね。でも色々聞けて楽しかった。」
「思ったんだけどさぁ。」
「ん?」
「りきって友達少ないよね。」
「なっ!?」
「だって、一番仲良さそうな人AIだし。」
シンさんの事かな。そういえば、シンさんとは暇があれば持ってきたリアルの写真についてあれこれ喋ってたっけ。
「あ、シュガーさんとかとも仲良いと思うけど。」
「それは同じ班だからでしょう?友達ーって感じしないし。」
「AIって心は人間と同じわけだし、例えプログラムで作られたものだったとしても僕はそれでも友達と呼ぶし、それに…AIを友達としてみない僕は咲を好きになってなかっただろうし。そう考えると今の僕でいい気がする。」
「なっ…///」
咲の顔面が赤くなった。こういう照れたりしたときって簡単に隠せないのがこのゲームの辛いとこというか…。感情に嘘がつけない。あ、でも千翠さんはコントロールできるんだっけ。どのくらいできるかは把握してないけど。
「さて、僕らもそろそろ落ちようか。寝ないと。明日学校あるし。」
「うん。」
僕らのところにジャンさんが「あー…陽…いや、咲さん少し時間いいですか?」と尋ねてきた。
さらにそこへ「りき、時間ある?」とシンさんがきた。
「クスッ…じゃあ、りき、話が終わったら部屋で合流してから落ちよう?」
「うん、わかった。」
咲はジャンさんとどこかへ行ってしまった。
「シンさん、どうしたんですか?」
「その…さっきの話ちょっと聞こえてて…さ。」
さっきの話ってなんだろう?友達がいない話かな?
「うん?」
「僕に対して、もう敬語とか使わないでほしい。」
「えぇ!?むっ無理ですよ!そんなの!ギル長のAIにそんな。」
「確かにルナのAIだけど、僕はりきの友達でいたいから。」
シンさんの気持ちを大事にしたいけど、ルナさんのAIに馴れ馴れしくするのもなぁ。
でも、やっぱり僕はシンさんの気持ちを大事にしたくて。
「わかった。じゃあ、そうする。」
「うん、ありがとう。」
「また数年たっちゃうけどね。」
「そうだね。待ってるよ。」
「お前らは恋人か。」とシンカさんが僕とシンさんの間にわって入った。
「うわぁっ!!ちょっと、いきなり入ってこないでよ。びっくりするじゃん。」
「ルナが今からダンジョン攻略するそうなんで、回復職でついて行ってください。自分は残って後片付けとかギルド管理するんで。」
「あ、うん。わかった。じゃあね。りき。」
「うん。また。」
シンさんは小走りでルナさんの元へ行った。
「りきさん。ヒルコには気を付けてください。現実世界でのりきさんバレてるっぽいんで。」
「あ!!…そうでした。すっかり忘れてました。」
「変装するなりなんなり工夫して下さいね。」
「はい…。」
「では、お元気で。」
「ありがとうございます。」
シンカさんは終業式の後片付けに向かった。
部屋に戻ると既に咲がいた。
「あれ?早かったんだ。」
「うん。このあと現実世界で伯父様に電話しないとだけどね。」
「じゃあ、落ちるよ。」
「うん。」
ログアウトして目を覚ました。
「あー…やっぱり、戻った後ってなんか違和感しかないっていうか。」
「そうだね。じゃあ、部屋戻るね。」
「うん。おやすみ。」
「おやすみ!」
ベッドで横になっていた陽子は起き上がって自分の部屋へ戻っていった。
僕はベッドに寝る。
まだ、陽子の温もりが残っていて変な感じがする。
余計な事考えずに早く寝よう、学校あるし。
夢の中で眠っても寝た気がしないように、【リアル】で眠っても現実世界で眠いままっていいうのがちょっとゲームをして無駄な時間を過ごした感があったりする。
でも、無駄じゃない気がする。精神面が凄い鍛えられたっていうか。
僕は色々考えながら眠った。
「おっはよう!」と僕の上にダイブしてくる陽子。
「ぐはっ!!…陽子さん、何歳ですか。」
「もぉ!陽子って呼ぶんじゃなかったの?」
「それ考えてたんだけど、絶対姉さんに変な目でみられるから陽子さんにする。」
「えー!!」
僕は上に乗った陽子にお構いなく起き上がった。すると陽子はコテンと倒れる。
「着替えてから朝食作るから先にリビングで待ってて。」
陽子は「はーい。」と不服そうな声を出しながら起き上がって僕の部屋を出た。
制服に着替えた後、リビングにいくとむすーっとした顔をした陽子が頬杖をついて座っていた。
「陽子はオムレツとか好き?」
「っ!!好き!!」
「わかった。」
途端に機嫌が直ったようで、ニコニコと朝食を待つ陽子。
「おはよー。」と姉が起きてきた。
「姉さん、おはよう。」
「おはようございます。」
「はっ!!!うちに美少女がいる事すっかり忘れてたわ。」
しばらくして三人分の朝食ができたのでテーブルに運んだ。
「わっ!何これ、ちょっと豪華じゃない?」
姉の言う通り
「陽子が良く食べるからね。」
「え。陽子って…一晩で随分関係進んでない?」
「あー…もともと仲良かったけど、昨日は姉さんと初対面でなんか恥ずかしくって。」
「ふーん。」
姉は凄い不審な目で僕を見てきて冷や汗がでてきた。
でも陽子はそんなのお構いなしに「食べていい?」と聞き、きょとんとした顔で此方をみる。
「あ、うん。」
「そうよね!お腹空いてるわよね!食べよ!」
姉はどうやら陽子に弱いようだ。
朝食が終わって、姉が先に家を出て僕が次に家を出た。
陽子は僕が学校へ行ってる間AIとしてお金を稼いでくれるみたいだけど「でも、バトルふっかけられて負けたらごめんね!」と言われた。
まぁ、負けても咲が一人寂しい思いをしながら過ごす事はないからペナルティくらいいいけど。
とりあえず今日はマスクだけはしてるけど、イメチェンを兼ねて散髪して帰ろう。
学校の門の前で数人たってる人がいて、うちと違う制服だしヒルコさんの仲間かな。
「よっ!力。何してんだよ。」と背後から声をかけられてビクっとして振り返る。
背後にいたのはクラスメイトで良く喋る武井 豊。
いつ見てもオシャレというか…同じ制服着てるはずなのにオシャレに見える不思議な奴。
「あ!そうだ豊!」
「ん?どした?」
「髪の毛につけてるソレ!ワックスとか持ってない?」
「ワックス?持ってるけど?」
「貸してくれ!」
「は?いいけど。力お前どこにつけるんだよ。」
豊はカバンからワックスを取り出して僕に渡してくれた。
僕は蓋をあけてワックスを手にとって、べっとりつけて髪の毛をオールバックにした。
「お、おい!お前何してんの!?使いすぎだろ!」
「悪い!新しいの買って返す!」
「てか…オールバックってまじか。お前。」
「今日はこれで一日過ごす。」
「ぶはっ!(笑)お前最高だよ。どうしたんだ?昨日は休むし。なんか雰囲気ちがうし。」
「まぁ。色々あって。とりあえず教室行こう。」
僕は豊の手を引いて門を通過した。特に誰に止められることもなく通過できてホッとした。
「どうしたんだ。お前のそんな顔初めて見るわ。」
「え?どんな顔してた?」
「そうだなぁ。いつもは、優しそうな観葉植物みたいな感じ。」
「どんな顔だよ。」
教室につくと何人かに笑われた。でも、こっちはそんな事に構ってる場合じゃなかった。
携帯の電源を切ってるとはいえ、ヒルコさんが何をしてくるか分からない。
とりあえず、集団の中にいる間は安全って考えていいのかな。
休み時間ごとに髪型イジられるし、昼休みはいつも豊と二人で食べてるのに5、6人は人が集まってしまって内心穏やかではなかった。
学校が終わって豊と一緒に帰る事にした。
「珍しいな。一緒に帰ろうなんて。」
普段はいつも一人で帰って花屋さんに直行だった。
「あー、実はイメチェンしようと思ってて。良い美容院とかしらないかな?」
「ぷっはははっ!イメチェンって(笑)お前本当どうしたんだよ。いいぜ、俺の行ってるとこでよかったらな。」
「うん!」
そして僕は豊の行きつけの美容室へ行って、見事イメチェンに成功して家に帰った。
玄関を開けながら「ただいま。」と言うと陽子さんが玄関まで走ってきて「おっかえりー!って!!?え!?どうしたの!?」と酷く驚いていた。
僕の髪型は【リアル】と全く同じにしてある。
つまり、金髪にして帰りに買ったピンで前髪を止めてある。その時ついでに豊にもワックスを買って返した。
「んー。門の前に別の学校の人立ってて、僕だってバレるの嫌だったから。」
「ごめんね。そこまでさせちゃって。」
「ううん。いいんだ。気にしなくていいから。僕が好きでやってるんだし。」
「いっぱいお金稼いでおいたから!」
「あ、うん。電子マネーで支払おうとした時とんでもない額入っててビックリしたよ。」
「えへへ!頑張ったんだから。」
僕は陽子の頭をポンポンと撫でた。
「あー!子供扱いしてるでしょ!お姉さんなんだからね?」
中学生にしか見えない。
「とりあえず、着替えたら夕食の用意しようかな。」
「あ、じゃあお風呂洗っとこうか?」
「うん、お願い。」
しばらくして姉が帰ってきた。
「ただいまー!あぁぁ!!天使がいるぅぅ!!」
姉は帰ってくるなり陽子を抱きしめていた。なんか、すっかり気に入られてるな。
「おかえりなさい!今丁度お風呂沸いたとこで。」
「えっ!?じゃあ、先にお風呂入っちゃおうかな。」
「姉ーさん、そろそろ離してあげなよ。」
「え…。」
「…?」
「えぇぇぇー!!!!!!!誰っ!?力!?力なの!?」
姉が酷く驚いていて、僕は姉のこんな顔生まれて初めて見た。
「どうし…あぁ。そういえばイメチェンしたんだった。」
「なっ!?イメチェンってアンタ…え?」
「ごめん。ちょっと色々変えたくて。」
「学校とか大丈夫なの?」
「うん、多分。うちは校則緩いから。ほら、豊も茶髪だし。」
「でも金髪って…。」
「それより、もうちょっとで夕飯できるから早く風呂入ってきなよ。」
「それよりって…。ショックがでかすぎるわ。」
姉は陽子を離してとぼとぼ部屋へ入っていった。
「お姉さん、大丈夫かな?」
「うん、気にしなくていいよ。」
そして夕食と風呂を終えて21時。
僕と陽子は【リアル】にログインした。




