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RealSocialGame  作者: 無月公主
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【ひとつ屋根の下】

携帯の電源をいれて姉に電話をしたけど、繋がらなかった。…仕事中だろうし…今すぐには…無理かな。


「あの…もう少しここで居候するっていうのは…。」


「酷い!あんなに咲咲咲咲って言っておいて、私を見捨てるの!?私と喋りたいんじゃなかったの!?」

……うっ!!…咲の声でそんな事言われると…


「いえ…あの…善処します。」


「…ちなみに…、私が【リアル】にログインしないと咲は一生心の無い人形よ!」


「うっ!!!!」

絶対に住んでもらわないと…。


「わかったならいいの。…でも本当に困った…。まさか記憶喪失になるなんて…春風のタクトの使い方戦い方は覚えてるのに…なんでヒルコとの闘いに敗れて私が……リアルを辞めたのか…どうしてGMだったのか…それとGMアカウントの入り方も忘れてるし…もー!めちゃくちゃ!!」


………あれ…この感じ誰かに…似てる気が…。


ピロピロリンと着信が鳴った。


「あ。姉です!」と僕はすぐに電話に出た。


『アンタが電話なんて珍しいわね。どうしたの?』


「あー…それが…どうしても助けたい女の人がいて…家に匿ってもいいかな?」


『は?どういう事?女の人?誰?』


「えー…っと…。」


背後からひょいっと電話をとられた。

後ろをみると…花屋のおばさんだった。


「こんにちわぁ!花屋フラワンスの江藤(エトウ)と申します。突然で申し訳ないんですけど、うちの家が酷い雨漏りとついでに床が抜けちゃって、人が住むには厳しくなっちゃってねぇ…ご迷惑かと思いますが、訳あってうちに住まわせてる姪を預かってもらえませんでしょうか?りき君から部屋が余ってると聞いてましてね…ええ…ええ…はい。よろしくお願いします。」


と言って電話を返された。


「という事です。」


『という事ですじゃないわよ!!!ちゃんと説明しなさいよ!女の人じゃなくて、ご近所さんの姪っ子さんじゃない!!もぉー。あと、勢いでOKしちゃったけど、父さんには私の友達って事にしておいてね!部屋は空き部屋使ってもらって!父さんにも連絡しとくから!』


ブツッと電話を切られた。


「良かったぁ~…あの!ありがとうございます!」


「陽子には居候だからってタダで働いてもらってたんだ。これくらいの事させてもらうよ。」


「おばさん!!ありがとお!!!」


「でも、陽子…ほんとに大丈夫かい?記憶喪失治ってないんだろう?」


「あー、うん。でも、目的はりきと一緒にいる事だから!そのうち思い出すかもしれないし…。」


「何かあったらうちに来なよ。」


「うん!ありがとう!!荷物まとめてくる!」


陽子さんは自室であろう部屋に入っていった。


「陽子に変な事したらタダじゃおかないからね!」


「は…はい。肝に銘じます…。…あの、陽子さんっていつからここに?」


「2、3年前かねぇ…靴も履かないで…ドロドロでうちにやってきて…匿ってくれって…。なんでもするからってね。それでうちでアルバイトしてもらってたのさ。」


「毎日通ってましたけど…気づきませんでした。」


「あぁ、アンタはAIと話すのに夢中だったからねぇ。」


「……すみませんでした。」


「陽子の助けにもなったみたいだからいいんだけどねぇ。」


カランカランと花屋の玄関が開く音が聞こえて、おばさんは下へ降りていった。


しばらくして……


「お待たせー!…って、携帯の電源切っといてね!」


「はい…。」


「シャキっとせんかーい!!」と陽子さんに背中をバシンと叩かれた。


「イ゛っ!?」


「あれ?今日学校いかないの?」


「学校いけるわけないじゃないですか!!こんな状況で…。」


「ねね!じゃあ家に帰るの?」


「今日は…そうしようと思います。また勝負を挑まれてもアレですし…」


「そうだね。私もタクト以外の武器買わないとなぁ。」


「え…でも…。」


「ウォールが…こっちにこなかったから…りきを認めてるって事だと思って…。」


「でも…バトル前に…咲の姿を見て…みんな抱き着いて顔を埋めてました。」


「ね!その敬語…やめにしない?」


「え?…。」


「だって、いつも私に話かけてた時、敬語じゃなかったじゃん!私いつも横からじーってみてたんだよ?」


咲に夢中で全然気づかなかった。


「…えー…と。がんばります…。」


「え?なんて?」


「………頑張る…よ。」


「よろしい!!じゃ、家行こ!ヒルコにここ見つかっちゃってるし。」

陽子さんはそういうとフードを深くかぶって、髪の毛はフードの中にいれた。


「……陽子さん、何かに追われてるんですか?」


「え?…てかまた敬語ー!!」


「あっ!ごめん!…その…変装っぽいから…見た目が。」


「ああ。…うん。追われてるっぽいんだ。それも覚えてないんだけどね。」


陽子さんと一緒に花屋を出て、自分の家へ向かう。


「凄く大事な事だったのに…どうして忘れちゃったんだろう…。」


「どうしてって…GMアカウントに入ろうとしたからじゃ…。」


「人の記憶消せちゃうゲームって問題じゃない!?」


「問題…ですね…じゃなくて…問題だと思う。」

一瞬陽子さんに睨まれた。


「だよねー!あーあー。どーして自由に遊びまわれないんだろう?」


「自由に遊びまわりたい……のか?」


「はははっ!!喋りにくそー!!」


「年上だし…なんかルナさんっぽいし…。」

…あ…そうか…陽子さんって…ルナさんっぽいんだ。


「……ルナ?………ルナ……」


「陽子さん、最後はミルフィオレにいたって…ルナさんの事知ってるんじゃないのか?」


「……私、ルナって子知ってるの?」


「多分…。」


「次ログインしたら紹介してよ!」


「はい。」


「ていうか1日でバトルポイント集めるなんて凄いよねぇ!」


「………陽子さんが僕に贈った花びらと…アトランティスに飛ばしてくれてたおかげ…だよ。」

なんだか…ジャンさんの気持ちが急に理解できた気がする。


「……あの時は必至だったなぁ…限られた時間と激痛に耐えながら…必死にりきのID探してさ…。もうコードも何もかも思い出せないけど。どうしても…【リアル】で何かやる事があったはずなんだけど…。」


「僕にどうしてそこまでして…。」


「あー…この子なら…絶対に私を悪用しないって…大切にしてくれるって確信を持てたから…君にしたんだよ。」


「……。」

僕は…顔がカァーっと熱くなった。


家について、空き部屋に案内した。


「りきの家ひろーい!!」


「……掃除しないと…。陽子さん、これ持ってて。」

と何気なく陽子さんに床に落ちてた2キロのダンベルを左手に渡すと…そのままストンと落とされた。


「あ…ごめん。」

落としたダンベルを拾おうとするが手に力が入らないようで…右手はカバンを持ってるから大丈夫そうだけど…


「……陽子さん、もしかして…左手…調子悪い?」


「…ははっ!もぉ何よ調子悪いって!言い方が変ー。左手ね、記憶喪失になった日…全身痺れて動けなくって…次の日にはほとんど回復したんだけど…左手だけちょっとまだ痺れてて。」


【リアル】は直接脳に何らかの光とか周波数を送って接続してる感じだから…その関係もあるのかな。

GMじゃないのにGMアカウントに入ろうとして…それで運営がはじこうとして…そのショックでって考えていいのかな。


「わかった。とりあえず、カバン置いて、できる事だけやっていこう。」


「うん。」


掃除を済ませるとお昼になっていた。


「疲れたー!!空き部屋なのにベッド置いてあるんだね。」


「あー…うん、空き部屋っていうか…あ!!!…そうだった。陽子さん、陽子さんは姉さんの友達って事にしててほしいんだ。父さんが刑事やってるから色々面倒で。前までこの部屋も張り込み帰りの同僚泊めたりするのに使ってたんだ。」


「へぇー。そうなんだ。」


ぐーっと陽子さんのお腹が鳴って…陽子さんの顔が真っ赤になった。


「お昼作るよ。」


お昼ごはんを作りに台所へいく…陽子さんも後ろからついてくる。


「今日はいつログインするのー?」


「姉さんに色々話してからかな。」


「陽子さんGMだった時って何してたの?」


「んー………ところどころしか覚えてないんだけど…小人達と景色を楽しんだり、イベント開催の司会したり…春風のタクトってね、GM権限で作った超強い武器なんだけど、もう知ってるかもしれないけど使う事ができるのは一人だけ。小人達の気分次第だし…イベントで超難しいクエストをクリアした人に配ってたんだけど。あー…タクトがりきの手に渡るように仕向けたのも私…なんだろうね。」


「何か覚えてる事ある?」


「…うん、誰かに手紙を送った気がする…誰かは覚えてないけど…あーもう全然思い出せないー!!」


「あはは…(汗)」


「ねぇ、りきの中の咲って…どんな感じだった?」


「…儚げ…だったかな。ほっとけない感じの…。」


「中身が私でショック受けた?」


「……あの時…バトルの最中…咲に表情が宿って…感動した。涙がでるほど…待ち望んでたから…なんか自由になりたそうな気だけはずっと伝わってたから…。」


「おーなーかーすいたー!」


「はいはい…。」


僕は黙って調理して…陽子さんはそれを嬉しそうな顔でみていて…


「わぁ!定番って感じだね!」


僕は陽子さんにオムライスを作った。


「…これしか無難なの思いつかなかった…。」


「りきってさぁ。ちょっと影あるよね。何か辛い事でもあるの?」


「…なんですかいきなり…。」


「敬語!!」と陽子さんがスプーンで僕を指した。


「…母さんが仕事へ行ったっきり帰ってこなくて…仕事はしてるままみたいなんだけど…一度も顔みせないから…寂しかった…のかも。」


「ふーん…。いっただきまーす!!おいしーーー!!!何これ何これ!!」


「喜んでもらえて良かった。」


しばらくして…昨日の【リアル】での体験を全部話して…夜になって…


「ただいま!!!」と姉さんが帰ってきた。


「あ。お邪魔してます。神崎陽子です。」


「え……えー!!!!外人!?中学生!?金髪!?碧眼!?」


「違います!!21歳です!!ハーフです!」


「えー!!!!見えない!!見えない!!!えー!!!」


「…陽子さん、姉の吉田(よしだ)美智子(みちこ)。」


「美智子さん、お世話になります!」


「ちょっと(りき)!!こんな可愛い子なら大歓迎よ!!もっと早く言いなさいよ!!」


「姉さん仕事中だったじゃん。」


「って…そういえばどういう関係なの?二人。」


「えー…っと。」


「お付き合いしてます!!!」


「なっ!?ちょっ!?」と僕は空いた口がふさがらない。


「えぇ!?ちょっ!!!アンタ…こんないたいけな子に手をだして!!捕まるわよ!?」


「待って!?姉さん!!陽子さんの方が年上で、陽子さんの方が捕まるから!!僕は手を出されたほうだよ!!」


「えー、でもりき、私にいつか結婚しようって言ってたじゃん!」


「話をややこしくするなよ!!えっと花屋に毎日通ってて…それで…」


「やっぱりアンタが手だしたんじゃん!!」


「もー……それでいいです。」


「家で変な事するなら上手くやりなさいよ?」と耳打ちされ…


「しないから!!!」


「家が賑やかになっていいわねぇ!力って寂しがりやだからよろしくね?陽子ちゃん。」


「はい!お世話になります!」


こうして…僕と陽子さんは一つ屋根の下で一緒に暮らす事になった。













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