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RealSocialGame  作者: 無月公主
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【失われたモノ】

大広間では宴会をしつつも、大きなホロ画面でそれぞれの戦闘シーンが移されていてそれを干渉しながら、あぁだこうだと議論もされていた。宴会と称しながらの反省会でもあるようだった。

驚いたのは、ルナさんもリオさんもお互い熱っぽい視線を送りあっていたのに、全くそれがみられなくなったことだ。ルナさんは確かにシンカさんしか見ないと言ったが、そんな簡単に切り替わるものなのか?


俺は幹部席に戻った。隣にはリオさんが座って、座るなりリオさんに「りき、話しておきたい事がある。少し良いか?あそこの小部屋で。」と言われて、幹部席側の隅にある小さな扉をさす。

「わかりました。」と返事をして指定された部屋へとはいった。


小部屋の中には椅子が4つと木でできたテーブルが1つあるだけだった。とりあえず椅子に座った。

「俺は今、一応幹部として席についてるが、もしかすると交代させられる可能性がある。」

「え?どういう事ですか?」

「俺は…意識を失って目を覚ました瞬間から…心が空っぽに感じる。普段なら怒っているところでは怒りを感じる動作ができる、実際は空っぽな感じがする。こういう行動をとられたから怒るエモートをする…そんな感じにな。」

「ルナさんに対して、ルナさんを見てあげないのはそのせいですか?」

「気づいてたのか。鋭いな。ルナに対して前にあったような熱い気持ちが全くなくなったような気がする。一応、あるが…これは、ダンジョンの魅惑や精神攻撃に似たような類のものだ。つまり感情は【リアル】内だけで生成されたものだ。俺は今この世界に存在するAI以下かもしれない。」

体が無い…移された記憶…たしかに今のリオさんは本当のAIだ。

「リオさん…。」

「でも、俺には今、ここに囚われている何も知らない子供達がいて、その世話をしていこうと思ってる。本当に心から思いやるという事は前みたいにできないかもしれない。そこをフォローしてほしい。なんでも気づいた事があったら教えてくれ。幹部を降ろされたとしてもこれだけはやって行こうと思ってる。班のトップはりきだ。だから…頼む。生前の俺が一番力をいれていた分野なんだ。」

「リオさんの気持ち、わかりました。でも、俺はこれから忙しくなる事も多いんで、咲にも相談してどうにかしてみます。俺がいない時、誰かをつけてリオをさんのフォローができる状態にもっていきます。」

「すまん…。」

「いえ、そもそも俺の班なのにほとんどリオさんにまかせっきりだったんで、これくらいはさせてください。」

「あと、ルナは…何かあったのか?前と少し違う気がする。」

「えっと…ヴァルプルギスでシンカさんと色々あって、今の感じになったような気がします。」

「そうか。前から一番謎が多いAIだ。」

「そうですね。」


リオさんとの話を終えて大広間に戻ると、今度はシンが駆け寄ってきて再び小部屋に入った。

「どうしたんだ?」

「戻ってからルナの様子がおかしいんだ。」

「…さっきリオさんからも相談されたよ。」

「え?」

「えっと、ルナさんはヴァルプルギスでみんなを守るためにシンカさんと色々契約しないといけなくて、そのせいで多分…。俺も詳しい事はちゃんとわかってないんだ!ごめん。」

「なんかごめん。そっか、じゃあシンカは本当の意味でルナを…。」

シンはめちゃくちゃ落ち込んでいた。

「ルナさんの本心はわからない。あの時は…俺らを勝ちに導くためにリーダーとしてやるべきことをするみたいな事言ってたし…。」

「ルナ…。」

コンコンと部屋をノックする音が聞こえた。

今度は誰だと思いながら扉をあけにいくと、ルナさんが立っていた。

「ルナ?どうしたの?」とシンが少し嬉しそうに席を立った。でもルナさんはシンを見ずに真っすぐ俺を見ていた。

「りき、護と咲を借りたいの。」

「わかりました。」

AI招集コマンドで護と咲を招集した。

ルナさんが小部屋に入ってシンの隣に座った。すぐに護と咲が来てくれた。

「珍しいですね。りきが招集を使うなんて。」と護。

「で?私を呼ぶなんて珍しいじゃない。」

「あー…うん。ちょっと急ぎの…ルナさんからの用事でね。」

「なるほど。で、何か?」と護。

「護、陽子、貴方にしかお願いできない事なの。難しい事を言うわ。」

「なに?」と咲。

「私の旧アカウントに私の並列思考と意識を詰めてほしいの。」とルナさん。

「並列思考と意識?」

「待って、並列思考だけじゃなくて意識までも?」

「ええ。これから本格的にギルド長として…王として、全てを捧げるわ。でも、それにしては外側とのコネと頭がなくて…これをしないと私が今まで愛してきた人たちを傷つける事になってしまう…。お願い…。」

「ちょっと時間がいるわ。月子のそれはどれくらい待てるものなの?」と咲。

「できるだけ早めに…1日経つごとに悲しみを背負う人が増えていくわ。シンのように。」

「ルナ…。」

「ごめんね。前のように気持ちを前に出す事ができなくて、今はシンの目を見れないの。」とルナさんは目を閉じながら言った。

「わかった。急ぐわ。久しぶりのプログラムで少しワクワクするしね。」と咲。

「また先輩にこき使われるわけですね。」と笑顔で言う護。


その後、大広間での宴会が終わってから、自室に帰ってリビングに入ると咲と護はホログラム画面を出して色々と意見交換をしていた。俺は邪魔しないように、風呂に入ってから寝室に移動した。

久しぶりの風呂で凄く気持ちよかった。ヴァルプルギスの中でも一応水浴びはしたけども、体臭度が消えるだけで、気持ちよさ適なものは一切なかった。

それにフカフカな良い匂いのするベッドだ。

俺はすぐに眠りに落ちた。


夢…でも今日は…俺?


「だからさ、君も早く僕と喋れるようになるといいね。」俺は花屋さんの前におかれたAIホログラムに話しかけていた。



ジジジとノイズが入って視界がざらつく…


目を開くと花吹雪が舞っていて、凄く心地よい匂いがして、青空が広がっていた。

そして…俺はAI咲に膝枕されていた。


「疲れたでしょう?」と咲。

「うん…凄く…疲れた。」

「ゆっくり休まれてください。」と咲。


咲は本来こんな喋り方をしない…いったいこれは?


でも心が本当の意味で癒される。これはきっと頑張ったご褒美的な夢なのかな。

みたいものが見れられるような。


「僕、これで本当に良いのかなって思うんだ。友達や…大事な人にも嘘や隠し事してさ…。生きる為なのはわかるけど…。」

「でも、未来を見てる…そうですよね。」

「うん。僕は…みんなが幸せになればいいって思ってるんだ。」


【人は醜いぞ…】


頭の中に声が響いた。今まであまりその声の主は自分だと思ってた、でも今違うって思った。

誰の声だ?


【誰もが自分が一番幸せになれればいいと思って生きている。】


そうだ…けれども、それを正せばいいんだ。


【正す、それも良いだろう。果たしてムーンバミューダ社がやっている事は悪か?本当にやる気がなく、人の足しか引っ張らない奴共を焼却処分。一生懸命働く者達の為になっただろう?無能な奴の為にどうして我々が…苦労して守らねばならん。】


それは…自分も明日、事故か病気かになって誰かの力を借りないといけなくなるかもしれない、その為の保険じゃないか。


【事故にあって何かを失ったわけでもなく、病気を患っている者の事じゃない。私が言っているのは…娯楽に身を投じている健康な健常者を言っている。】


それは…………


「りきさん。それは悪い悪魔の声です。」と咲が俺の頭を優しく撫でて「今は眠ってください。……おやすみなさいませ。」と言ってくれた。途端に声が聞こえなくなった。

あぁ…久しぶりに咲の「おやすみなさいませ。」を聞いた気がする。

一瞬…俺の中でムーンバミューダは正しいのではないかと思ってしまって恐かった。

でも…咲の優しい言葉と…優しく頭を撫でられて心が凄く癒された。

本当の眠りに俺は落ちた。

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