虐殺 第四話
今度は華やかで明るい声に変わった。再び夜となり、鍋に水を張り火を起こし、行商から買いたての魚などを入れて食する。死体を除けた後の境内で、大浦兵でも特に不埒な者どもが騒ぎはじめていた。……その声は隣の明行寺まで響き、未だ縄で繋がれたままの妙誓にも聞こえる。
歯を食いしばりつつ、もちろんすべてが終わったことをわかるが、本当の意味で理解をしたくはない。ただし実際にその悲惨な現場を目にしていないこそすれ、十分に想像できてしまう。戦の最中に届いた悲鳴、刀や鎧がぶつかり合う音、果ては女が手籠めに遭う声……。
妙誓は無駄に "じょっぱり" を張り、手前に出された夕餉を嫌でも取ろうとはせず、水さえ受け付けぬ。周りの僧侶らは困り果て、師匠である頼英を呼ぼうとするが……彼もまた避けているようで。すると興味本位で再びやってきた男が一人……生玉角兵衛だ。
とことんいたぶってやろうという顔つきで、妙誓の座る高さまでしゃがみこみ、彼女の目の前で大いににやつくのだ。
「これはこれは尼の妙誓様。まだご健在でございましたか。それは良きことでございまする。」
妙誓は思わず舌打ちをし、横へ目をそらす。そこを無理やり角兵衛は片方の手で妙誓の顎をつかみ、自らを直視させた。
「もうご存知でしょうが、戦のすべては終わり申した。我らも褒賞にありつけまするし、他の者もたいそう喜んでおります。……もし戦が起こらなければ、こうはなりますまい。戦ってこその褒美でござろう。その点は油川の者らに感謝せねばなりませぬな。」
そして大いに笑い焦げる。周りにいる僧侶らは引きつるように笑い、一方で妙誓の辛酸をなめる表情も窺いながら、複雑なことこの上ない。
角兵衛は再び言い放つ。
「それで妙誓様はどんな悪きことをされたがために、未だお縄にかかっておいでなのでしょうな。」




