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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第八章 奥瀬善九郎、田名部へ去る 天正十三年(1585)三月二日未明
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油川入城 第二話


 油川はどんよりと曇っていて、しかも肌寒い。まともに海風が当たるせいなのだが、決してそれだけではない。なんとも町が静まり返っており、活気はまったくもってない。しかも行きかう人へ顔を向ければ……避けられるか、もしくは睨まれるか。子供らが大浦の兵に近寄ろうとすれば、親が慌てて連れ戻しに来る。……このままで油川を治めることができるのか。



 城へ入ると奥瀬の兵らが(たむろ)こそすれど、大浦兵が城内を把握し終えると、各々家へ帰っていった。……城は湿地帯から引き入れられた簡単な水堀で囲まれており、その中に小高い丘陵に建っている。三つある郭の上にそれぞれ館があり、そこには奥瀬の将兵や侍女らが仕えていただろうが、彼らは全て外へ去った。後に残るは閑散とした建物だけ……。


 そこへ三千の大浦兵が我が物顔で入り、畳の上を土足で踏み荒らす。身なり行いの立派な者はいれど、あぶれ者だったり身寄りのない他国者が多いので、銭はないか着物はないかなど容赦ない。……先に侍女らが退いてよかったと言えよう。




 為信は油川本館の上座に胡坐(あぐら)し、幾人かの心ある者よりこのような現状をきく。しかし彼は止めなかった。これをとめると……跳ね返りが己へ向かう。ここに至る経緯を考えると……下々の者ほど丁寧に扱わねばならぬ。それに今のとことは油川の民衆へ被害が向かっているわけではない。城の中で済むならば……幸いなこと。




 そして忠言が終るなり為信は立ち上がり、近くにある木の小窓を開けようとする。……少し上へ開けただけなのに、その隙間からは冷たい風が音を立てて吹き付けてくる。次にすべてを開け放つと、音こそなくなったが顔めがけて強い風が直接当たる。……城内に入った時より、風の勢いが増したのだろうか。それともここはある程度高い場所だからか。



 ただし本当はそんなことを考えてる暇はない。さてと気を入れなおして、次への一手を考え始めるのだ。

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