人の道 第一話
闇夜となり……晴れてこそいるが、月は一切見えぬ。代わりに星々が大いに輝き、すべてのものを照らし出さんとしていた。鳥は鳴かぬし、獣も寝静まる。そんな中で山を駆ける僧侶ら。彼らの背中には太い木の棒の束。しかも上の方には油で湿っている布が巻きつけてある。これに火をつけると……光り輝く松明と化す。ただしまだそうする必要はないので、今は嫌なにおいを放つ “でくのぼう” でしかない。適切なタイミングがあるのだ。
……どうやら数人の大浦兵が向こう側より来るようだ。そのことに一瞬驚きはしたが……申し合わせの通り話せばいいのだ。姿こそいまだ見えないが鎧兜で藪を進むので、草木とこすれる音で十分わかる。そしてこの時間に歩いてくる人は己ら僧侶を除いて、大浦兵しか考えられぬ……。
やっとで姿形が見えると、互いに目を確かめ合って敵でないことを確認し合う。そうしてからもう少しだけ近づき、伝えるべき言葉を口にした。
「私ども明行寺より参りました。住職である妙誓尼を縄にかけ申した。あとは指示を待つのみでございます。」
大浦兵はしきりに頷き、僧侶に対してこう応えた。
「わかった。これで……明行寺で意を異にする者はおらぬということだな。結構なこと。」
次に目が行くのは、当然背中の太い木の束。大浦兵は眉間に皺を寄せたが……答えを聞くなり納得したようで、次の句へ移る。
「先導も承る話、まことにあっぱれな話かと存ずる。しかも兵らのために松明まで用意したとは……しかしその必要はない。灯を付けると油川にバレるでの。気持ちだけ受け取っておく。」
大浦兵はそういうと、元来た方へ引き返していく。僧侶らは彼らの後姿を見て、音も聞こえなくなったところで……やっと胸をなでおろした。故を問い詰められずに済んだことへの安堵。この松明がすべてを成しえる上でのカギとなるのだから……。




