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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第六章 堤弾正、暗殺 天正十二年(1584)秋
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始まりの合図 第三話

 うな垂れて、御所号は久慈信勝の右手をつかみつつ……哀願する。


「もう白取の近くにいるのが嫌なのじゃ。なぜわしは御所号であらねばらなぬ。」


 信勝は……“またいつものか” と諦めつつ、御所号を慰めるのだ。


「もう少しで白取殿は浪岡を引き上げるでしょう。そうなれば晴れて御所号は、誰にも縛られることはない……。」



 御所号は強めに首を振る。


「わしは喜んでこの役目に就いたわけではなし、誰かにくれてやりたいくらいだ。老いぼれらしく静かに、村の子供たちに囲まれながら余生を過ごしたかった……。」


 それもそうだろう。彼は意図せぬ形で、浪岡北畠氏と遠縁ということだけで表舞台に引きずり出されたに過ぎない。


「もしの、もしの……白取が横内と争いごとでも起こせば、わしは嫌じゃ。死にとうはないし、わしはただの農民でいいのじゃ。戦に巻き込まれたくはない。」



 御所号の話をひたすら聞く信勝。信勝はというと……


「御所号。武士と申しても、戦好きばかりではございません。私などは大浦家と南部氏の間で再び争い事が起きぬよう、嫌なことがあれど我慢して浪岡に詰めております。なんと言われようが……養女とはいえ白取と大浦を姻戚にさせたのも、再び戦を起こさせぬため。(わたくし)信勝でよろしければ、横内と浪岡で争い事が起きぬよう動きまする。」


 御所号は……泣きそうな顔のまま、信勝に問う。


「ならばどうするつもりじゃ。」



 信勝は……手段がないわけではないと思っている。ただしそれを成し得るかどうかは……わからぬが、やるしかない。



「横内の堤氏は養子が継いだとはいえ、実際は油川の手の内でしょう。ならば油川の奥瀬(おくせ)と大浦氏を結び付けて、白取を動けぬようにさせましょう。」


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