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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第六章 堤弾正、暗殺 天正十二年(1584)秋
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始まりの合図 第二話

 浪岡城にて……



 上座には御所号の山崎(やまざき)政顕(まさあき)がおり、すぐ手前の横には代官の白取(しらとり)伊右衛門(いえもん)。下座では奉行衆や家来らが神妙にしている。白取は……荒い字の書かれた長い文書(もんじょ)を持って憤慨していた。もちろん白取が直接仕えている殿である堤氏を殺してはいない。ただし状況からして白取の疑いが強く、横内(よこうち)(=堤氏)との関係が悪化。疑心暗鬼の至る所……。


 堤氏は養子が四代目を継いだが、彼は白取氏をいったん原別(はらべつ)へ戻せと主張しているという。もし白取氏が関わっていなくとも、警戒を怠ったのは浪岡の責任。その浪岡を束ねるのは白取なのだから、浪岡には替わりの者を派遣する……。


 いまさら替えられてしまっては堪ったものではない。肥沃な土地である浪岡から離れたくないのはもちろんのこと、疑いをかけられたまま終わらせたくはない。もしやこの場にいる誰かが関わってはいまいか……と、奉行の一人である久慈(くじ)信勝(のぶかつ)を睨んでみる。


 信勝は……一番疑いやすい立場ともいえる。為信の弟だし、あまり白取と気が合うことはない。しかもここ最近は飾り物の御所号との仲がよろしいようで、少しばかり気になるところ。


 ただし己の後ろで黙ったままの御所号……このジジイが何かできるはずもないし。元は村長(むらおさ)だったのを連れてきたのだから、実力があってそこにいるわけじゃない。心配は無用。



 イライラして、何もかもムカついてくる。家来に八つ当たりをし、罵声を浴びせ、肘掛を投げる。当たれば障子は破れるし、(ふすま)にも裂け目が入る。まあまあと周りの者はなだめるも、収まることをしらず。いら立ったまま白取がその場を立ち去ると……家来衆は狼狽(うろた)えつつも、これ以上ここにいる必要はないと各々帰っていく。




 最後に残ったのは二人。上座にいる御所号と下座の久慈信勝……。他に誰もいなくなったのを確かめると、困惑しつつ……自然と互いに近づいていく。


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