始まりの合図 第二話
浪岡城にて……
上座には御所号の山崎政顕がおり、すぐ手前の横には代官の白取伊右衛門。下座では奉行衆や家来らが神妙にしている。白取は……荒い字の書かれた長い文書を持って憤慨していた。もちろん白取が直接仕えている殿である堤氏を殺してはいない。ただし状況からして白取の疑いが強く、横内(=堤氏)との関係が悪化。疑心暗鬼の至る所……。
堤氏は養子が四代目を継いだが、彼は白取氏をいったん原別へ戻せと主張しているという。もし白取氏が関わっていなくとも、警戒を怠ったのは浪岡の責任。その浪岡を束ねるのは白取なのだから、浪岡には替わりの者を派遣する……。
いまさら替えられてしまっては堪ったものではない。肥沃な土地である浪岡から離れたくないのはもちろんのこと、疑いをかけられたまま終わらせたくはない。もしやこの場にいる誰かが関わってはいまいか……と、奉行の一人である久慈信勝を睨んでみる。
信勝は……一番疑いやすい立場ともいえる。為信の弟だし、あまり白取と気が合うことはない。しかもここ最近は飾り物の御所号との仲がよろしいようで、少しばかり気になるところ。
ただし己の後ろで黙ったままの御所号……このジジイが何かできるはずもないし。元は村長だったのを連れてきたのだから、実力があってそこにいるわけじゃない。心配は無用。
イライラして、何もかもムカついてくる。家来に八つ当たりをし、罵声を浴びせ、肘掛を投げる。当たれば障子は破れるし、襖にも裂け目が入る。まあまあと周りの者はなだめるも、収まることをしらず。いら立ったまま白取がその場を立ち去ると……家来衆は狼狽えつつも、これ以上ここにいる必要はないと各々帰っていく。
最後に残ったのは二人。上座にいる御所号と下座の久慈信勝……。他に誰もいなくなったのを確かめると、困惑しつつ……自然と互いに近づいていく。




